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2つのアメリカ

ヒップホップ界のスーパースター、ミーク・ミルは、フィラデルフィアの犯罪多発地区のストリートで繰り広げられるラップバトルからキャリアをスタートさせた。 1987年、ロバート・ラミーク・ウィリアムズとして生を受けたミークは、凶悪犯罪とクラックブームが支配する公営住宅地で幼少期を過ごす。犯罪ビジネスで家族を養っていた父はやがて痛ましい死を遂げ、母が生計を立てるために奔走することに。薬物絡みの暴力事件が蔓延し、大量の収監者を出して男性が激減していたコミュニティーにあって、ミークには人生の指針とするべき男性がいなかったという。 シャイで物静かな子供だったミークは、ラップと出会って初めて自分の殻から飛び出す。そして生まれ持った才能を武器に、地元のミュージックシーンで注目を集めるように。17歳の時には、街の反対側にあるヘンバーガー通りのいとこ宅に移り住む。新たな環境はより危険が身近な地域だったが、地下にレコーディングスタジオがあった。 地元の顔なじみが次々と残虐な暴力の犠牲となっていく中、ミークは護身のために銃を購入する。この運命の決断がのちに、警察との激しい衝突をきっかけに始まるフィラデルフィアの刑事司法システムの暗部との戦いを導くこととなる。以降、彼は11年もの間そこから逃れようともがいている。

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  ：33分

罠

激しい暴行の末に逮捕されたミークは、そのまま拘置所で初めての夜を過ごすこととなる。家族は何か月も奔走して保釈金を工面。ようやく釈放されたミークは、レコーディングスタジオにこもって新しい音楽作りに打ちこむ。 公判で担当判事が黒人女性のジェニース・ブリンクリーだと知り、ミークは安堵する。検察側の証人はミークを逮捕した警察官、レジー・グレアムのみ。グレアムは、ヘンバーガー通りの家を薬物絡みで家宅捜索した時、ミークが銃を向けたと証言、ミークはショックを受ける。ブリンクリー判事は銃および薬物関連の罪でミークを有罪とし、懲役11カ月半〜23カ月、保護観察10年の判決を言い渡す。 ミークの収監中、ミックステープ「Flamers 2」がリリースされ、たちまちヒット。釈放されて保護観察期間に入ると、ミークは自由にパフォーマンスできるようになり、キャリアは大躍進を遂げる。そして伝説のプロデューサー、リック・ロスに見出されてメイバック・ミュージックと契約。さらにジェイ・Zのロック・ネイションとマネジメント契約を交わすのだった。 そうして作られた新しいアルバム「Dreams and Nightmares」は大ヒットを期待されたが、ミークはプロモーションツアー中に遵守事項違反でブリンクリー判事のもとに呼び出される。この時の遵守事項違反は、アルバムの宣伝活動に支障を与え、彼を刑務所に舞い戻らせることとなる。 困難を抱えながらもミークは次のアルバム「Dreams Worth More Than Money」を製作、スターへの階段を一気に駆け上がる。そして次にブリンクリー判事に呼び出された時、失う物はかつてないほど大きくなっていた。

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  ：44分

手綱を握る判事

保護観察期間中の遵守事項違反をめぐる審問後、ブリンクリー判事に奇妙な要求をされたという主張を聞き、ミークの支持者らは、判事がミークの案件に異常なほどの個人的な関心を寄せているのではないかとの疑いを強める。判事はミークを自宅拘禁にし、音楽によってカネを稼ぐことを禁じた。ミークはストレスから我を失い、ケンカや薬物依存などの問題を抱え始める。 その後、ミークは薬物依存を克服し、自身が体験した苦しみを創作の糧にして音楽作りを再開。そして最高傑作「Wins and Losses」を生みだす。ミークはニューヨークでアルバムの宣伝活動を始めるが、バイクでのウィリー走行が見つかって逮捕され、再びブリンクリー判事に呼び出される。本件は不起訴だったにもかかわらず、判事は保護観察期間中の違反と見なして審問を開く。 そして、ついに堪忍袋の緒が切れた判事は、２〜４年の懲役刑を言い渡し、ミークは独房に入れられることに。 この一件で米国の刑事司法制度が黒人を虐げていることを多くの人々が認識し始める。たとえ成功や名声、富を手にしても、黒人に対する司法制度の不当な扱いは変わらない。フィラデルフィアでは怒りが爆発し、抗議者たちが街に集結して“フリー・ミーク”運動を起こす。 ミークの支持者らに雇われ、私立探偵がブリンクリー判事を調べ始めると衝撃的な事実が明らかとなり、弁護団は判事をミークの案件から降ろそうと試みる。そして、探偵が事の発端である2007年の逮捕に注目し始めると、より大きな謎が浮き彫りになる。

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  ：37分

腐敗の街

息子のパピが父親を恋しがる中、ブリンクリー判事の権力の前では、より加熱する“フリー・ミーク”運動に加わること以外にミークには成す術がない。フィラデルフィア・イーグルスは、スーパーボールでミークの「Dreams & Nightmares」を流して抗議運動への支持を表明。しかし応援を受けながらも、試合中もミークは独房から出られずにいた。 私立探偵のタイラー・マロニーとルーク・ブリンドル＝カイムは、元々、ブリンクリー判事の身辺調査を依頼されていたが、事の発端である2007年１月のミークの逮捕に目を向け、事件の一部始終を調べ始める。そして、フィラデルフィア警察の精鋭部隊である麻薬捜査課に所属する、ミークを逮捕した警察官、レジー・グレアムが提出した書類に不正を発見。タイラーとルークは、他の警察官たちへの接触を試みるも、ことごとく拒否され、その後ようやく元麻薬捜査官、ジェフリー・ウォーカーに話を聞くことに成功する。ウォーカーは、グレアムの捜査の手口やミークへの暴行などについて、衝撃的な事実を証言する。 2007年にミークが暴行を受けて逮捕された後、姉のナシーマは警察の内務調査課に苦情を申し立てていた。内部調査の結果、事件に関わったすべての警察官は起訴を免れたが、タイラーとルークは、その調査書の中に、ミークの逮捕について、驚きの証言を与えることになる、もう１人の重要人物を発見する。それは元麻薬捜査官のジェロルド･ギブソンだ。彼は事件について、裁判時に語られた内容と大きく異なる供述をする。 タイラーとルークは、後に公開された、不正を行った警官リストを証拠に加え、ミークの解放を確信する。弁護団も最初の逮捕を無効にするために再審を請求し、さらに「ローリングストーン」誌に掲載された衝撃的な記事が彼らの熱意に火をつける。 ついにミークの家族は、まもなく叶うであろう釈放の希望を持ち始める。しかし突破すべき難関が１つ。それを決定するのはブリンクリー判事だ。

• 再生時間

  ：43分

真の自由

ミークの即時再審請求をブリンクリー判事が検討する審問の日、裁判所にはミークの家族や支援者たちが集結。法廷では、ミークに対する判決を撤回して裁判をやり直すべきだと、検察までもが認める。ところが、判事は60日後の審問で証拠を提出することを要求。皆が驚く中、ミークの弁護団は塀の中に追いやられ続ける依頼人を救うべく、新たなプラン構築に奔走することになる。 一方、“フリー・ミーク”運動は、司法制度改革を求める人々を１つに融合。デモの盛り上がりは最高潮に達し、ついにペンシルベニア州最高裁判所の介入で再審請求審中のミークを保釈すべきとの決定が下される。ミークは刑務所からヘリコプターで飛び立ち、バスケットボール・チーム、フィラデルフィア 76ersの試合でヒーローとして出迎えられるが、そこに真の自由はない。ミークの事件の担当は今もブリンクリー判事であり、最終的に彼の運命を決めるのはやはり彼女なのだ。 刑務所生活で心に傷を負ったミークは、以前の暮らしに適応できず苦悩。使い慣れたレコーディングスタジオに戻り、自身の経験を音楽に変換することに力を注ぐ。そうして作品を完成させる中で、彼の音楽は劇的な進化を遂げる。 ブリンクリー判事の要求を受けて、ミークの釈放に関する根拠の説明を行う審問の日、支援者たちが再び裁判所の前に集まる。これで判事と対峙するのも最後かと思われたが、またもや衝撃的な決定が下り、ミークは法的に不安定な立場に置かれることに。 そんな中でもミークはアルバム「Championships」を発表、刑事司法制度に不当に囚われた何百万もの人々の代弁者として、新たな道を突き進み始める。もう運動の顔となることにも迷いはない。そして、そうそうたる面々と共に、刑務所から100万人を救い出すことを目標に掲げてリフォーム・アライアンス財団を設立するのだった。

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  ：34分