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2019/04/26
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幽霊一家と同居生活。【家族狂】

当時、ジュブナイル小説を多数発表していた中村うさぎ氏が、初めて一般向けに書いたというホラー小説。ジュブナイル出身ゆえのコミカルな描写もありますが、その怖さは本物です。

目次

誰かがうちにいる!

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ハードボイルド作家・北村が越してきたマンションは、だいぶ変でした。


越してきてしばらくは何事もなかったのですが、次第におかしな出来事が起こり始めます。

手始めに、留守にしていた間に誰かが荷物を受け取っているという事件が。

北村は一人暮らしですし、勝手に家に上がり込むような知り合いもいません。

しかもサインならともかく、厳重にしまっておいたはずの銀行印が押されています。


さらには机の上に覚えのないメモが。

どうやら留守中に電話があり、それを誰かがとったらしいのです。

出版社から電話があったことと担当者の名前、さらにはまた電話をくれるということまでご丁寧に書かれたメモ。


いったい誰が残したものなのでしょう?

先住者は家族連れ

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異常事態の連発に、不安を募らせる北村ですが、その元凶は間もなく姿を現します。


日常のとるに足らない1コマ――北村が用を足そうと、トイレのドアを開けると「それ」はいたのです。

洋式便座にステテコ姿でどっかりと座り込み、ふてぶてしくも新聞を読んでいる中年男が一人。


怖いより気持ち悪いより、唖然とする北村でしたが、この男が一連の事件(?)の犯人だと白状し、それにとどまらず小言を言い始めると、怒りが頭をもたげ始めました。

思いっきり蹴りを入れるも、貯水タンクにしたたかにぶつけ、自分が痛い目に合う始末。

当の犯人と言えば、天井に張り付いてバカにしたような哄笑を降らせるばかり。

そして哄笑とともに男は告げるのです。

ここには北村が来る前から、4人家族で住んでいた、と。

幽霊の家族構成

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男の幽霊が現れたのを皮切りに、残りの家族も次々と姿を現し始めます。


まずは娘のめぐみ。

高校生ながら度胸が据わっていて、全裸の入浴シーンを北村に見られてしまったにもかかわらず泰然としている女の子。

突然幽霊たちの姿が見えるようになったことについて、めぐみは「あなたが心を開いてくれたからじゃないかってパパは言ってる」と北村に告げますが、北村はこれが面白くない。

なんたって、幽霊に心を開いたつもりがないわけですから。

むしろ相手のほうから、土足で踏み込まれたような気持ちです。

消え際のめぐみの「くそじじい!」に対して、「俺はまだ28だ!」と怒鳴り返す程に、北村は頭にきている様子です。


次に現れた幽霊は妻・小百合。

寝ているところにいきなりまたがられての金縛り……と、こちらは典型的幽霊スタイルでのご登場です。

しかしその様子が、典型的と言っては差し障るありさま。

のっかってきているのが中年女という時点でセオリーから外れている気がしないでもないですが、この幽霊はすぱすぱタバコまで吸う緊張感のなさ。

中年のおばさんによくある、おしゃべり好きを存分に発揮する小百合から、北村はいろいろな情報を聞き出すことに成功します。
 

小百合と北村(なんと幽霊一家は主人公と同じ苗字!)はお互い家庭の有る身でありながら、子連れで駆け落ち同然で結ばれたこと。

そして、無理心中で一家が亡くなったこと。

そのあたりを攻撃の的にしつつ、小百合をなじる北村でしたが、小百合の(おそらくは)あまり深い意味のない質問で、逆に考えさせられてしまうことになります。

「それじゃ、あんたは、どういう親に育てられたの?」

北村の過去

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小百合の言葉がきっかけで、ここで初めて読者にも北村の過去が語られることとなります。


父親は北村が小学生の時に事故死していました。

ほとんど家に帰らず、北村が顔を覚えていなかったほどです。

残された母親も病気がちで、とても子供を育てられるような状態ではなかったために、北村は親戚の家に預けられて育ちました。
 

母親は現在、北村の兄と暮らしているとのことですが、母からはおろか、兄からも一切の連絡はありません。

北村もまた、連絡を取ろうとはしません。

家族なのにどうしてなのか、と小百合が問えば「みんな大人だから、干渉しないんだ」とのこと。

これだけならば、今時いくらでもいるつながりの薄い家族、というだけのことです。

しかし北村の「家族」の正体が明らかになったとき、読者は血の気が引くような恐怖に襲われることでしょう。

家族って、何だろう

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血のつながりはあるけれどばらばらになり、連絡もろくすっぽ取らない北村の「家族」。

駆け落ちゆえに、世間一般の家庭とは異なるけれど、団欒をなによりも大切にして、互いに支えあう幽霊の「家族」。
 
どちらもいびつな形の家族ですが、家族には違いありません。



ラストシーン、北村がたどり着く「家族」の形は、悲しくも暖かいです。

参考元

  • ・家族狂角川書店

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