あの人が最期に見たものは何だったのか。死者の脳が物語る真実とは。死者の脳から映像を取り出し、真実を解き明かす……。
あらすじ
21世紀後半の日本では、死者の脳をMRIスキャナーにかけることで「生前と同じ状態に保ち、一定の電気刺激を与え脳を120%働かせ」、死者の見ていた映像を脳に損傷がなければ、「最大5年前までスクリーンに映し出す」ことができる技術が実用化されていました。
MRIスキャナーを使った捜査を取り仕切っているのが科学警察研究所法医第九研究室──通称「第九」です。
普通の捜査方法では解決の難しい難事件を、MRIスキャナーを使用することで解き明かしていきます。
地獄からの使者
出典:皇室のロイヤルウエディングに日本中が湧いている時、ある一週間、同じ少年院の同じ棟にいた未成年の少年9人が1月17日に次々と自殺します。
連続する自殺が不可思議であったため、この事件は第九が担当することとなります。
新米捜査官の青木一行(あおきいっこう)は、この第九に配属されます。
そこで、発足当時から第九に在籍し、第九の室長である薪剛(まきつよし)から、会ってすぐに「君、『第九』には合わないんじゃないかな」と言われてしまいます。
そうしている内に、自殺した少年の内の1人である山口のMRIスキャナーの映像が第九に届けられます。
山口は、何度も後ろを振り返り、何かが追いかけてきているような素振りをみせます。
よく見ると、山口の視界の端々には同じ「少年」が映っており、最期にはその「少年」に突き落とされているのです。
青木は「自殺じゃないじゃないですかコレ」と叫びますが、映像を観ていて何か変なことはなかったかと薪に尋ねられます。
山口の見た「少年」は、一昨年の夏に山口のいじめを苦に自殺した「少年」で、この時の恐喝・暴行行為によって山口は少年院送りになっていたのでした。
MRIスキャナーの映像は、確かに脳を所有していた本人が経験した映像ですが、外の世界のありのままを反映したものではありません。
その人の心や、もしくはドラッグといった要因によって、人はそこにあるはずのないものを見てしまうことがあります。
薪は青木に、「君の様に見たものや聴いた物を『そのまんま』まともに信じて受け止めてしまうような単純(ストレート)な人間は簡単に引きずり込まれるんだよ。狂った脳に、あっち側に」と言います。
ヒトのモノの見方
ヒトはあるがままにモノを見ることはできません。
同じ雪を見ても、昼と夜とでは実際に目に映る色味は違います。
例えば、夜の雪は目に映る色は「灰色」ですが、私たちはそれが「白」であると認識します。
そのため、雪の色そのものが変わったと思うことはありません。
近年では、青と黒のワンピースの色が人によって違って見えるという写真がTwitterで流行しましたが、これも私たちの目がそこにあるもの「そのもの」を捉えるのではないために起こってくる現象です。
実際のワンピースの色は青と黒なのですが、見る人や見る場所、画面の種類などによって色が違って見えてくるのです。
明るさの対比という観点から考えると、背景と比較してワンピースそのものが明るいと捉えれば、ワンピースは白と金に、反対にワンピースそのものを暗いと判断すれば、黒と金に見えていると考えられます。
また、私たちは自分の経験や価値観によって、見る物を変えています。
目の前に、「SRING SEASON」と書かれたポスターがあったとします。
そうすると、多くの人は「SPRING SEASON」と文章を読むそうです。
それは、後ろにある「季節」という単語から、「その前にあるのは『春』である」と経験的に判断し、ないはずの「P」を補って文章を読むからです。
このような経験や知覚の不思議は、我々の普段のモノの見方にも大きな影響を及ぼしています。
そのような脳のあり方は、『秘密』のMRIスキャナーの映像にも大きな影響を与えています。
実際、漫画の中でも、美しい生き方をしていた人の世界は美しく、清らかに映っているのです。
その反対に、第九に来るような凶悪犯の脳の多くは、「終わりのない地獄のような世界」であり、「狂った画」を映すものです。
第九の捜査官は毎日、そういった脳を見続け、そこにわずかにある真実を見つけ出すことであるため、青木の様なタイプには無理だと薪は言ったのです。
その後、薪が青木に特別厳しかったのは、貝沼(かいぬま)という男が起こした「28人連続殺人事件」で亡くなった、同僚で親友の鈴木に青木が似ていたからでした。
全ての始まりの事件
「28人連続殺人事件」は、日本史上稀にみる凶悪犯罪であったため、当然のようにその脳が第九に送られてきました。
その脳から得られた映像があまりに強烈なものであったため、それを観た捜査員5人のうち3人は死亡し、1人は精神に異常をきたして入院してしまいます。
脳を見て今「生きて」いる人間は薪ただ一人です。
薪と親しかった鈴木は、薪がとある理由から心に深いダメージを負っていることに気がつきます。
そのため、薪の負担を取り除こうと、一人で貝沼の脳を全て見るのですが……。
この事件から始まる、様々な事件とは?
人間の尊厳とは?
薪の守りたかったものとは?
物語は徐々にスケールの大きなものになっていきます。
コミックスは完結済み。映画も!!
秘密 THE TOP SECRETは全12巻完結済みです。
次々と巻き起こる事件と深まる謎に、ページを捲る手が止まりません。
また、2016年には生田斗真さんが薪役、岡田将生さんが青木役で映画化もされています。
こちらもその映像技術とイケメンが沢山出ているということで話題になりました。
あわせてご覧になられてはいかがでしょうか?
参考元
- ・参照リンク:秘密 THE TOP SECRET|白泉社
- ・清水玲子 秘密 THE TOP SEACRET白泉社
- ・感覚知覚心理学朝倉書店
当社は、本記事に起因して利用者に生じたあらゆる行動・損害について一切の責任を負うものではありません。 本記事を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者本人の責任において行っていただきますようお願いいたします。
合わせて読みたい