本来いてはならない何かが、誰かの中にいる。 それがいるのは周囲の人かもしれない。それとも、自分の中にいるのかもしれない。
・最も怖いものとは?
出典:毎号様々なテーマで、恐怖短編を届けてくれる文庫シリーズ”異形コレクション”。
この号ではタイトルそのまま、憑りつかれることを主題に据えています。
憑依の何が恐ろしいといえば、やはり人格変化の恐怖でしょう。自分が憑りつかれることそのもののみならず、憑りつかれた間に、自分の意志ではなく何かしてしまう恐怖。
家族や友人が、ある日を境に別人のようになってしまう恐怖(これを突き詰めたものが、「エクソシスト」でしょうか)。
憑りつくものは、日常にもあふれています。狐憑きをはじめとする民間伝承は日本各地にありますし、こっくりさんも10円玉に「憑依」させる遊びです。
もっともこっくりさんについては、ルールを破ったがために、遊んでいたグループの誰かに「憑いてきて」しまうというのが怪談の様式美となっているふしさえありますが……。
・大きすぎた借り
出典:本書にて、憑りつくものは様々です。
種類のみならず、その目的も。
こっくりさんのように、ルールに乗っ取ってさえいれば有益に思える憑き物もいます。無くしたものを見つけてくれたり、会いたい人を探してくれたり、悲劇を防ぐ方法を教えてくれたり……。
一見都合の良い存在に思えますが、甘えすぎは禁物です。
例えば「地蔵憑き」。
地元の子供たちの間で流行る、「地蔵憑き」なる降霊術。一人の子にお地蔵様を降ろし、ほかの子が質問すると降りてきたお地蔵様が答えてくれるというものです。
でも大人がやるときは「閻魔憑き」。
主人公は町内会の集まりで、酔った勢いで閻魔様の依り代にされます。すると本当に、自分の中に自分ではない誰かがやってきて、周りの人々の質問に答えだしました。
その当たること、当たること。
周囲にもありがたがられ、自分が必要とされているつもりになった主人公は「閻魔憑き」にのめりこんでいきますが、閻魔様も慈善事業ではなかったようです。
町内会の面々に、ある日突然突き付けられた恐るべき「代償」。そしてそれは、閻魔様に体を貸している主人公にとっては、一層恐ろしいものでした。
・好奇心につかまって
出典:好奇心猫を殺す、なる有名な言葉がありますが、ちょっとした好奇心から死ぬよりひどい目にあわされるのも、怪奇小説の黄金パターン。
肝試しで、入ってはならない場所に……というのが王道でしょうか。こっくりさんもこれだけ有名になった今では、怖いもの見たさの好奇心へ分類されそうです。
好奇心系で、本書の中の白眉は「ついてくるもの」。
興味本位で立ち寄った廃墟から、あるものを持ち帰ってしまったのを発端に、迫りくる恐怖を描いた一篇です。
夜ごとの悪夢、ペットの怪我と、周囲からじわじわと逃げ道をふさぐような、ホラーの正攻法。主人公が「拾ってきたもの」が原因と気づいて捨てても捨てても、戻ってくる絶望感。
オーソドックスゆえにしっかりした怖さを持つ本編は、ラストシーンまで不気味さたっぷりです。
・理不尽な変容
出典:これらのように、憑りつく者の意思がある程度はっきりしている場合もありますが、そうでない場合はどうしたらよいのでしょう。
狐憑きなら狐憑きの、悪魔憑きなら悪魔憑きの、生霊憑きならまたそれの……と、病気さながらの「症状と対策」が確立されているわけですが、それが全く通用しない相手です。
まるで病原菌のように、それ自体は意思を持たずとも、憑いた相手を狂わせていく憑き物。もし見ることができるなら、それはどんな姿をしているのでしょう。
そんな恐るべき憑き物が身近なものの姿で現れるのが「箸魔」。タイトルでお分かりの通り、お箸です。
もちろん人に憑りつくくらいですから、そんじょそこらのお箸ではありません。目をそむけたくなるような工程を経て作られた、呪いのお箸の物語です。
憑依、ではありますが、このお箸に意思はありません(少なくとも、物語の上では)。魔道具のようなものでしょうか。この箸で食事をした人間は、箸に憑かれてしまうのです。
最初は箸との蜜月でした。この箸で食べたものが、なんであれ、信じられないほどおいしく思えるのです。しかしそれに慣れてしまうと、なまじ味覚が敏感なだけに、激しい落胆から逃れられず、食したことのない珍味を求め、そして行き着く先は――。
ほしいような、ほしくないような……とても怖いお箸です。
・よりどりみどりの憑き物たち
出典:ざっと紹介しただけでも、お地蔵様、閻魔様に拾い物、お箸と様々な憑き物が登場します。でも、この辺りはまだ序の口。
穴、葬列、森、マンション、もっと得体のしれない、何か……想像だにできない恐ろしくも素敵な憑き物たちが、憑りつく隙を窺っています。
あなたはどの憑き物が、一番怖いですか?
参考元
- ・異形コレクション 憑依光文社
当社は、本記事に起因して利用者に生じたあらゆる行動・損害について一切の責任を負うものではありません。 本記事を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者本人の責任において行っていただきますようお願いいたします。
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