日常の隙間から這い出してくる、「怖」の物語。 これらの怪異は、あなたのすぐ後ろで起きているかもしれません。
・理不尽な恐怖、集めました


ホラー好きで平山夢明氏を知らない方はいないでしょう。
猟奇的な描写と冷めた雰囲気が同居しつつも喧嘩しない、その独特な作風の怪奇小説は絶品ですし、実話怪談「超」怖い話シリーズにも参加しています。
都市伝説系怪談集「いま、殺りにゆきます」はタイトルのインパクトも抜群です。
その平山氏が編んだ、新しい実話怪談集が本書。
幽霊なのか、人間なのか、気のせいなのか、偶然なのか。そのあたりが実に曖昧で、それ故に何とも言い難い不気味さをまとった物語がたっぷり収録されています。
一篇一篇が非常に短いので、そのおぞましい表紙を外せば通勤電車のお共にもよいかと思われます。
ただし帰り道、電車を降りて、街灯も人気もない家路を急ぐ場合はお勧めできません。つい、振り返りたくなってしまいますからね。
・怖いから……


マンションで一人暮らしをしている女性の話。怪談ものでは、実にメジャーなシチュエーションです。
ある日彼女が帰宅すると、人だかりと救急車が。嫌な感じはしましたが、あまり興味のないたちなので、さっさと自宅に戻ります。その時にエレベーターで、はっとするような美女と乗り合わせました。
夜も更けてから訪ねてきたのは、先ほどの美女。なんでも隣の部屋で自殺があったので、怖いから泊めてほしいとのことでした。
見ず知らずの他人ではありますが、自殺と聞いてしまったら自分も怖いし一人でいたくないしで、彼女はそれを了承。肩を寄せ合って話すうちに、二人は打ち解けていきました。
しかし、それで終わったらただのいい話。
もう時間は真夜中なのに、ドアの向こうから人の声。
引き留める美女を振り切って、確認に向かうとそこには……?
・麻酔二題


病院というのも、非常においしいシチュエーション。医療怪談ばかりを集めた本もあるくらいですから、その発生頻度は相当なものなのでしょう。
1本目の局所麻酔の話は、この本に似つかわしくないほのぼのしたいい話なので、割愛。
2本目の全身麻酔の話こそ、この本としては「本番」にあたります。
そもそも全身麻酔をかけると、二十人に一人くらいは覚醒時に「錯乱」するのだそう。老若男女も職業も、その他境遇も関係なく、泣いたり笑ったり、暴れたり暴言を吐いたり……そういったことは、麻酔科のお医者さんには日常茶飯事なのだそう。
ところがある病棟で全身麻酔の手術をすると、偶然では済まされないくらい、けた外れの人数が「錯乱」してしまうことに麻酔医が気付きました。さらにはそれ以外の異常も現れだします。
・予言猿


動物の怪談もあります。
実話怪談では犬、猫あたりがメジャーでしょうが、この話はかなりの変わり種になっております。
八百屋さんが飼っていて、いつも店先につないでいたという猿。
最初は人懐っこく、餌をねだったり軽くちょっかいをかけたりという可愛げのある猿だったのですが、散歩中の犬に顔を噛まれて重傷を負ってから、すっかり変わってしまいます。そういうことを一切しなくなり、じっとあたりを見渡しているだけ。
やがて猿はある「予言」を始めます。もちろんことばが話せるわけもありませんから、行動で示すわけですが……。
何を予言するかは、読んでからのお楽しみ。
・日常に現れ出る、異常


紹介したのはごくわずかですが、このように、日常のすぐ隣から突如襲ってくる話ばかりが収録されています。
無事に解決するものもありますが、言い知れぬ後味の悪さや、新たな怪事件をにおわせるものなど、今後が心配になってくるような結末も多くあります。
読んだらどうぞ、暗いところでは振り返らないでください。
参考元
- ・顳草子 串刺しメディアファクトリー
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