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出典:amazon

2017/01/12
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少女と男の、不思議な邂逅【天帝妖狐】

杏子という少女へ綴られた手紙と、その少女の日常とで紐解く、得体のしれない放浪者の正体。 収録作「A MASKED BALL」についても紹介。

目次

夜木の手紙


『鈴木杏子様、あなたがこの手紙を読んでいるころには、もう私たちの別れも済んでいることでしょう。』



こんな書き出しで始まる、長い長い手紙。

そこには書き手である「夜木」という男の、少年時代からのことが長々と書き連ねてあります。


一人っ子で身体も弱いゆえに、過剰なまでに甘やかされて育った夜木。

周囲も、そして彼自身もそのことを良くは思っておらず、

こんな身体にどうして生まれてしまったのか、と

普通の子供たちを羨ましく思いながら、鬱屈と日々を過ごしていました。


やはり体を壊し、布団の中で暇を持て余していたある日のこと。

夜木は当時はやっていた「こっくりさん」のことを思い出します。
 
特別興味があったわけではありません。
 
しかしあまりに退屈すぎて、夜木はひとりきりで紙と10円玉を用意し、こっくりさんを始めるのです。

杏子という少女


物語は夜木の手紙と、杏子なる少女の視点とを交互に行き来します。



杏子は口数も少なく、なんとなく周囲に合わせられないでいる女の子でした。

浮いていた、とまでは言いませんが、友人たちの間にうっすらと距離を感じる付き合いだったのです。

そんな杏子はひとりで下校している際に、不審な男を発見します。


髪は伸び放題、着物も汚れていて、なにより瘴気のような、説明できぬおぞましい気配を纏っています。

しかし杏子は気づいてしまったのです。

その男がひどく苦しそうにしていることに。


杏子は勇気を出して声をかけ、「大丈夫、医者もいらない」と言う男を半ば強引に家へ連れていきます。


体中を包帯で覆った、夜木という奇妙な男を。

杏子の生活、夜木の正体


それから夜木は、杏子の家に間借りして生活することとなります。

雰囲気と要望は不気味そのものの夜木でしたが、話を聞けば気の優しい、普通の青年のようでした。


しかしその普通の青年が、なぜ、浮浪者も同然の格好でうろうろしていたのか。

なぜ、体中を包帯で覆っているのか。

なぜ、近寄りがたい雰囲気を発しているのか。


それは杏子にあてた別れの手紙で、少しずつ明らかになっていきます。

落書きから起こる事件



表題先のほかにもう1本、この本には短編が収録されています。

題名は「A MASKED BALL」。



未成年にしてすでにタバコを手放せない体の主人公は、入学した高校でも、まず、安全にタバコが吸える場所を探します。

幸いにもすぐに見つかったそこは、利用者の極端に少ないトイレでした。


トイレでの一服を日課にした主人公は、ある日タイルの落書きに気づきます。

その落書きというのが「ラクガキスルベカラズ」。

落書きで落書きを批判する矛盾と、すべてカタカナで書かれたインパクトに、思わず興味をそそられる主人公。

そう思ったのは主人公だけではないようで、やがて返事をする形で、誰かが「矛盾しているじゃないか」と落書きをします。

こちらはひらがなと漢字の混じったごく普通の文章で、イニシャルと思しきアルファベット付き。

それに呼応するように、さらに数人が落書きをし、主人公もそれに参加。


トイレの落書きを掲示板のように使って、顔も知らない面々の交流が始まります。

お互いに近況報告をしたり、あの女子はかわいいな、なんて言ってみたり、悩みを相談してみたり……。

匿名のまま、微笑ましいとさえいえる交流がしばし続きます。


しかし、発端となったカタカナの書き手が新たな落書きを残し、それが現実の事件とつながりを見せ始め、事態は急展開。


エスカレートしていく落書きの内容と、それに付随する事件。

犯人を突き止めようと動き出す主人公。
 


急激に高まっていく緊迫感は、見物です。

参考元

  • ・天帝妖狐集英社

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