江戸時代の町人が死体を担いで踊って、大騒ぎ。今は亡き名コンビ、勘三郎丈×三津五郎丈が魅せる爆笑必須のドタバタコメディ。
歌舞伎『らくだ』とは?
出典:amazonらくだはそもそも落語の演目で、岡鬼太郎が歌舞伎化したものです。
今回は、2008年に、今は亡き2人、18代目中村勘三郎丈と10代目坂東三津五郎丈によって歌舞伎座で上演された舞台についてご紹介いたします。
「らくだ」と言われると、砂漠にいるまつ毛の長い動物を思い出す方も多いと思いますが、題名のらくだは、人のあだ名です。
このらくだ、大変乱暴者で、手に負えないような男ですが、河豚にあたって死んでしまいます。
このらくだの仲間で兄貴分でもある半次(坂東三津五郎)は、弔いくらいしてやろうと思いましたが、らくだの家には売れる物もありません。
たまたま近くにいた久六(中村勘三郎)を使って、長屋の住人や大家からお金を集めようという話です。
歌舞伎『らくだ』は江戸の人情噺
このらくだは「世話物(せわもの)」に分類されます。
歌舞伎は大きく分けて「世話物」と「時代物(じだいもの)」に演目を分けることができます。
「世話物」とは江戸の町人の義理人情や粋(いき)、恋愛などを描いたものです。一方で、江戸時代以前の支配階級を描いたものを「時代物」と言います。
らくだは落語の「人情噺」を基にしているので、江戸の町人の心の機微、人との関わりをユーモアたっぷりに描いています。
歌舞伎では落語の人情話を原作にしたものも多く、三遊亭円朝の噺を基にした『人情噺 文七元結(にんじょうばなし ぶんしちもっとい)』や『芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)』なども人気の演目となっています。
歌舞伎『らくだ』の見どころ
何と言ってもその見どころは、半次・久六コンビがなんとかしてお金を集めようとするところにあります。
長屋の住人からはお金を集めることはできたのですが、大家が曲者です。お酒やお料理を差し入れて欲しいと頼むのですが、大家は、普段から家賃を払わないやつに出せるかと断ります。
そこで、出してくれないならば、死人に「カンカンノウでも躍らせる」と脅します。ところが、大家は一枚上手で、死人のカンカンノウならば見てみたいと言うのです。
ならばと、半次と久六はらくだの死体を担いできて躍らせようとします。
気風の良い正しく江戸っ子の半次と、気が弱く、半次に振り回される久六のドタバタから目が離せません。
実生活においても、三津五郎丈と勘三郎丈の親交は深く、その中の良さが舞台でも二人の息をぴったりに合わせます。
普段、江戸っ子気質を漂わせている勘三郎さんが、気弱で振り回されているのも可笑しみを倍増させます。
死体が躍る
やはり見せ場は死体を担いで踊るところです。
ところが、この死体、人形ではなく、実際の人間が演じております。
舞台上におりながら、幕が開いた時にはすでに死んでいるのが、演目にもなっている、らくだです。
らくだを演じているのは四代目片岡亀蔵丈。この方は、身体が決して小さい方ではありません。死体として、担がれているように見せながらも実際に動いているのは亀蔵丈です。
力を抜きながらふらふらと動き、勘三郎丈演じる久六に顔をぴたっとつける場面などは客席から大爆笑が起こります。
歌舞伎『らくだ』はどこで観られるのか?
らくだは松竹からDVD・ブルーレイが発売されています。二本立ての収録で、歌舞伎人気の演目連獅子も観ることができます。
また、らくだは連獅子と共に、シネマ歌舞伎でも上演されています。2017年は月イチ歌舞伎として13日(土)から19日(金)まで上映されることが決定しています。
近年は毎年シネマ歌舞伎の演目となっていますが、来年もそうであるという保証はありません。この機会にぜひご覧ください。
歌舞伎の舞台公演をHDカメラで撮影し、映画館の大スクリーンでのデジタル上映で楽しむ、シネマ歌舞伎。まるで劇場の特等席で鑑賞しているかのような迫力で、豪華な俳優陣でお贈りする歌舞伎をご堪能いただけます。
参考元
- ・参照リンク:歌舞伎への誘い ~歌舞伎鑑賞の手引き~
- ・参照リンク:シネマ歌舞伎 | 松竹
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