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出典:

2019/04/26
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静かに流れる曲の様な大人の恋愛を表現した『初恋の世界』

『娚の一生』(おとこのいっしょう)で、大人の恋愛物語を描いた「西炯子」。 不倫愛や燃える様な純愛物語ではなく、淡々とした淡白な恋愛模様を描くマンガ家です。 その最新作が『初恋の世界』。40歳を過ぎた女性が、年下の男性に公私ともに振り回される人間ドラマです。

目次

【あらすじ】

チェーン店のカフェで女性店長を務めていた小松薫は、売り上げが悪い店舗である故郷・角島にある店舗へ転勤を命じられる。

本店からの派遣として、店舗の立て直しを命じられて転勤した彼女だったが、店舗はアルバイトの小鳥遊によって乗っ取られていた。

チェーン店としてのコンセプトから、大きく外れた形で運営されている店舗の改善を始める薫だったが、店舗の主力となっている小鳥遊の言動や行動に振り回される。

更には、何故か男性として、彼の存在が気になり始め、彼女の混乱はその度合いを深めていくことになる。

【初恋の世界の魅力】

作者が嫌いなキャラクターが「主人公」

決して見た目は悪くないのにしっかり者で自活できる女性。
それが本作品の主人公「小松薫」です。
年齢も40歳で、少女マンガの主人公としては高齢です(笑)

物語中でもテキパキと仕事もこなし、今回の転勤もその能力を見込まれての仕事です。
恋愛や結婚に対しても、望んでいない訳ではないが、縁がなくて今の年齢になってしまった。
現代社会には、こんな女性が多くなってきているのではないでしょうか?

作者「西炯子」は、こうした恋愛作品を描く上で、主人公は「自分に似た人物で嫌い」なのだそうです。

主人公を自分に置き換え、私の嫌いな自分がどうなったら救われるのか。
こんなしょうもない私がどうやったら救われるのか。
そうした自問自答で物語を描き続けています。

等身大の自分でマンガを描く

実は筆者が知る「西炯子」の作品は、もう少し明るいコメディタッチな作品が多かった気がします。
『娚の一生』からその作風を変え、しっとりとした静かな音楽の様な恋物語を描く様になったと思います。

そんな変化に関して、本人は“80歳まで漫画家で居ること”を実現する為、今の自分が描ける物語を描く事にしているそうです。

現在の高校生や20代の恋愛は、作者自身が年上であるために描く事は出来ない。
でも、今の自分と同年代の恋愛ならば描くことが出来る。

そういう考えで恋愛物語を描き続けているそうです。
ですから今は40代、次は50代と、各年齢に合った恋愛の形を嘘偽りなく描き続ける。
「西炯子」というマンガ家としての生涯のテーマのひとつとして考えているそうです。

ただし、そうした年相応な物語と共に「幅広い層に読まれる」作品も描きたいと模索しているそうです。

現在、別雑誌に連載中の「たーたん」などは、義理の娘と父親の関係を描き、「初恋の世界」とはまったく違うジャンルのマンガです。
それは、「幅広い層に読まれる」事を目指した作品といえます。

初恋の世界では

主人公「小松薫」は、異性として「小鳥遊」を意識しつつも、どこか冷めた視点で自分自身と物事を見つめています。
気になる異性が現れて、人生が180度変わるという少女マンガ的で、盛り上がる恋愛感情ではなく、ドライな視点で物事を見る、熟年層の心情をうまく表現しています。

そして、故郷に帰ってくる事で古い友人たちと再会し、今までの人生を見つめ直させられる主人公。
これもまた、同世代には身に詰まされます。

そして、生活に「謎」を持ち、彼女と対立しつつも共同で仕事をする「小鳥遊」。

そんなリアルな40代の生活の中でストーリーは進みつつ、イレギュラーな存在である異性との関係に対して、「ときめき」ではなく「戸惑う」主人公の姿を描きます。

【まとめ】

出典:

今後の展開としては、現状の叙情的な雰囲気のままで物語は進むのか、はたまた曲が転調する様に、180度転回して熱い恋愛物語へと発展するのかは、未知数です。

現在のところは、淡々としたドライな大人の恋愛模様を描く本作品。
普通の恋愛漫画とは違う、静かな落ち着いた作品です。

参考元

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