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出典:

2019/04/26
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映画『怒り』 ~怒りとは何か~

「怒り」とは何か。そしてそれは何に、もしくは誰に向けられたものなのか。信じた目の前の人間が殺人犯かもしれない時、あなたはどうしますか?

目次

映画『怒り』~『悪人』からの系譜として~

映画『怒り』は様々な側面から注目された映画です。
まず、2010年に公開され話題となった映画『悪人』と同じく、原作:吉田修一、監督:李相日という2人により製作されたことで注目を浴びました。

映画『悪人』は、「本当の悪人は誰か」ということを問うような映画でしたが、今回の『怒り』も、「怒りとは何であり、もしくはどんなものであり、そして誰に向けられたものなのか」を問うてくる様な映画であると言えるでしょう。

愛した人は殺人犯なのか

『怒り』は、まず、凄惨な殺人現場から始まります。壁に血で残された「怒り」の文字。

犯人は「山神一也」という人物だろうということはわかったのですが、この山神は整形をし、全国に指名手配されながらも逃げ延びています。

話は3人を主軸に回っていきます。

「愛子」の場合

まず、宮崎あおい演じる「愛子」。
彼女が演じたのは家出をしながらも傷つき、連れ戻された女性です。

彼女の父親は渡辺謙演じる「洋平」です。
愛子の父親は漁港で働いているのですが、父親にお弁当を届けにきた愛子は、突然この漁港にやってきた松山ケンイチ演じる「田代」と仲良くなり、段々と惹かれていきます。
そうしていくうちに、田代がここに来る前、一体どんなところで何をしていた人なのか、わからない部分が明らかになってきます。

「藤田」の場合

2人目は妻夫木聡演じる「藤田」。
『悪人』に引き続きの出演ということでも注目されました。
彼は大手広告代理店で働いており、仕事も順調、週末は遊びに繰り出し人と関わると一見充実する日々を送りながら、どこか何か物足りなさを持って生きています。

そこに現れたのが綾野剛演じる「大西」です。
藤田はゲイであり、所謂ハッテン場で大西と出会います。大西は自分のことを何も語りません。
しかし、藤田は大西といることで安らぎを感じていきます。
藤田は大西の過去を知らないまま、大西に心を開いていくのです。

「泉」と「辰哉」の場合

最後は広瀬すず演じる「泉」と佐久本宝演じる「辰哉」。

泉は母親のせいで、離島で生活することを余儀なくされます。
何か処理できないような思いを抱いている泉は辰哉に頼み、誰もいないはずの美しい島に舟で連れて行ってくれるよう頼みます。
気を使って泉を一人にする辰哉。泉は島に夢中です。
沖縄の綺麗な海と自然の中で、どこか不思議な廃墟を見つけます。
そこで泉はサバイバル生活を送っている森山未來演じる「田中」と出会い、心を開いていきます。

泉を好きな辰哉は、泉に元気になってもらおうと沖縄本島に泉を誘います。遊びに来た本島で偶然田中と出会う二人。
そこである事件が起こり、辰哉の暮らす民宿で働いていた田中を彼は頼りにするようになります。


誰の場合においても、目の前にいる自分が心を開いた人間が実は殺人犯ではないのかという疑問を持つような作りになっています。

そのため、観客も「愛子」「藤田」「辰哉」の視点に立ちながら、目の前にいる人間に惹かれながらも、どこか犯人ではないかと葛藤を抱くことになります。
「目の前にいる人間を信じたい、しかしもしこの人が犯人だったら?」
「信頼」と「疑い」が交錯していく……それがこの映画の1つの見どころです。

「怒り」

この映画のもう一つの見どころは「怒り」の扱い方です。

まず1つ目の怒りは犯人の怒りです。犯人が抱く怒りの正体がしっかりと映画では描かれています。

2つ目は自分が愛した人間を疑ってしまった自分自身への怒りです。
心を開いた目の前の人を最後まで信じられるのか。犯人であったとしても、愛し切れるのか。自分を愛しているのか。相手の存在そのものを愛しているのか。
この部分は「悪人」を思い出させる描き方でした。

最後が、「信頼」を裏切られたことによる怒り。
作中では、その怒りが最後にどういう形で表れていくのかを丁寧に描かれています。

「悪人」同様、もし、自分が「愛子」「藤田」「辰哉」だったらどうするのか。
そう考えることで自分の本質を模索できる映画となっています。

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