花沢健吾の大人気コミックを大泉洋主演で実写化した『アイアムアヒーロー』。マンガ実写化のブームが続く中、成功か失敗か、作品によって大きく明暗が別れています。そんな中で本作は興行収入15億円を超えるヒットを飛ばしました。その人気の秘密に迫ります。
コミック実写化にはメリットとデメリットがある
世界に誇るマンガ大国【日本】
「クールジャパン」を掲げ、世界的なヒット作を生み出す日本のマンガ業界。
欧米ではマンガやアニメは子ども向けのエンターティメントであるという既成概念が強かったため、長い間大人からは無視されてきました。
日本に訪れた外国人が電車のなかでマンガ雑誌を読むサラリーマンを見て衝撃を受けた、なんてエピソードもよく聞かれました。
しかし、それも昔の話です。
圧倒的なクオリティを誇る日本のマンガ作品は、世界中で認知されるようになりました。
元々、海外ではマンガのなかで登場人物が”死ぬ”ということがあまりないようで、彼らにとってかなり新鮮だったようです。
そんな世界に誇るマンガ文化を持つ日本ですが、2016年の国内の映画興行収入のランキングではアニメ作品とコミックの実写化作品が上位のほとんどを占めています。
逆にいえば、邦画でヒットを狙うならマンガ関連作品が最も効果的だと考えるのが妥当でしょう。
それほど日本のマンガ作品は質が高く、観客もそれを求めているのです。
マンガ作品実写化の【光と影】
製作側には、「人気のあるマンガを実写化すれば原作ファンを観客動員数に見込める」という思惑があります。
また、キャスト発表の時点でキャラクターのイメージに”合う””合わない”は原作ファンにとって重要な問題だと言えるでしょう。
なぜなら、彼らは原作のファンとして映画を見たいわけですから。
つまり、原作ファンの期待に応えられれば、彼らを映画館まで運ぶことができるのです。
しかし、何でもかんでもヒットコミックを映画化して人気を得られるかといえば、もちろんそうではありません。
どれほど魅力的な原作であろうと、映画そのものの質が悪ければ原作ファンは振り向いてはくれません。
それはもう説明するまでもなく、「ガッカリした」「イメージと違う」なんて声がレビューサイト以外からも聞こえてきます。
大きな製作費をかけながら、目も当てられない結果を残した作品も数多くあるのです。
『アイアムアヒーロー』ヒットの要因は?
作品のイメージに見合った【豪華キャスト】
原作ファンの期待を裏切らないキャスティングは、コミック実写化の最重要ポイントです。
その点で『アイアムアヒーロー』の主演を務める大泉洋はハマり役でした。
35歳でうだつの上がらない漫画家志望の青年・鈴木英雄を見事に演じ切っています。
また、女子高生・早狩比呂美役の有村架純も、物語のキーとして見事に演じきっていました。
英雄と比呂美を手助けする元看護士・小田つぐみに長澤まさみと人気実力ともに評価の高い美女2人が物語を盛り上げます。
また、その他にも実力派キャストが脇を固めています。
アウトレットモールを仕切る冷徹なリーダー伊浦役に吉沢悠、元・引きこもりのサンゴを演じるのは岡田義徳、さらに英雄の恋人役でショッキングなシーンを演じる黒川徹子役の片瀬那奈。
それぞれが個性豊かな登場人物を雄弁に演じています。
目を引きつけて離さない【VFX】
とにかく「ZQN(ゾキュン)」なる感染症患者がビジュアル的に怖いです。
もちろん、グロテスクなシーンも頻発します。
手に汗握る緊迫したシーンは満載です。
ダイナミックなアクションを実現させるVFXのクオリティーが非常に高いからこそ、作品の世界観にのめりこむことができるのです。
街中にZQNが溢れ出しパニックに陥るシーンのロケ地は静岡県浜松市で行われました。
日本映画には珍しい、大がかりなエキストラを使用した街中での撮影は臨場感があって見ごたえ十分です。
さらに登場人物たちの主戦場となるアウトレットモールですが、実はロケ地として使われたのは韓国です。
富士山は違和感なく背景に映りこんでいました。
VFXの技術の高さを感じさせますね。
ちなみにメイプル超合金のお2人もZQN役でどこかに出演しているようです。
気になった方は探してみるのも一興ですね。
練り込まれた【ストーリー】
本作はパニック映画ですが、ストーリーの核となる人間ドラマは丁寧に描かれています。
ある日突然大切な人々が「ZQN(ゾキュン)」と呼ばれるゾンビに変異し、自分たちに襲い掛かってきます。
そんな恐怖の中で、登場人物たちはそれぞれの思いを胸に逃げ惑い、そして時に闘いを挑みます。
特に主人公の英雄がクライマックスで覚醒したかのような闘いを繰り広げるまでの伏線が丁寧に張り巡らされています。
観客の期待感を高めると共に、結末のカタルシスをしっかり準備されているのですね。
周到に作り込まれたシナリオは原作の雰囲気を損なわず、劇場用にアレンジが加えられています。
要点を見極めた監督のすばらしい演出こそが、本作のヒットの最大の要因といえるでしょう。
参考元
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