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2019/04/10
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二人の少女の数奇な運命【砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない】

引きこもりの兄を抱えて、一刻も早い自立を求める現実主義の少女、なぎさ。 父親は歌手で、自称人魚。自分の吐いた嘘の泡に溺れそうな少女、藻屑。 全く対照的な二人はなぜか惹かれ合い、真っ暗な結末へと転げ落ちていく。

目次

・都会からの転校生

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二学期が始まって少しして、転校してきた女の子。彼女の名前は海野藻屑。黒板に書かれた名前を見て「親の顔が見てみたい」などと囁きかわす生徒たちもいました。

その中で訳知り顔の女の子が言うには、海野藻屑の父親は歌手だとのこと。流行ったのは彼ら彼女らの知らないような昔ですが、デビュー曲は今でもCMソングに使われるほど有名でした。

有名人の娘ということもあって注目される藻屑ですが、自己紹介からいきなりの奇行でクラス中をびっくりさせます。

・人魚のお姫様

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藻屑は片手にぶら下げていたペットボトルから猛烈な勢いで水を飲むとどもりながら自分の名前を言い、そのあとは立て板に水の勢いで自己紹介を始めました。

いわく、自分は人魚であると。

クラスメイトのほとんどが藻屑を敬遠し、なぎさもそのようにしたつもりでした。関わり合いにはなりたくないと。

ですが藻屑はやたらなぎさにくっついてきて、人魚の与太話を聞いてもいないのに喋り続けるのです。

脚を引きずって歩くのは、人間の脚に変えてもらったときに魔女にされたイヤガラセのせい。
今年は人魚の繁殖期に当たる年だから、天気予報にない大嵐が来て、世界中の人魚がこの近くの海に集まってくる。
密室に閉じ込められても、泡になって抜け出すことができる。
などなど。

勿論信じる気のないなぎさでしたが、藻屑があまりにも自分の後をついて回るのでそんなに無下にもしなくなり、いつのまにやら彼女と行動を共にする時間が増えていきます。

・好きって、絶望

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藻屑の父、海野雅愛のデビュー曲にして一番メジャーな歌は「人魚の骨」。

海で見かけた美しい人魚を探す、ロマンチックな歌詞とメロディ。しかし、それも2番までです。知る人の少ない3番の歌詞で、主人公の男は人魚をお刺身にして食べてしまうのです。

猟奇殺人のような歌の生みの親であるところの雅愛も、いまいち普通ではない人物です。
ある日スーパーに買い物に来たなぎさは、些細なことで怒鳴り散らすおかしな男を見かけます。おかしな、といっても顔かたちはむしろ綺麗なくらい。

彼の後ろを所在なさげに俯いて歩く少女が藻屑だと、なぎさは気づいてしまいました。
なぎさが自分に気づいたと知って絶望の表情をする藻屑を置いて、父親―雅愛は自分1人だけ、車で帰ってしまいます。娘である藻屑に、歩いて帰れと吐き捨てて。

それ以外にも藻屑と父親のいびつな関係性は、読者となぎさの前に少しずつ開示されていきます。

藻屑の青白い脚に散らばる無数の痣。藻屑が足を引きずっている理由。そもそも、東京を離れて引っ越してきた理由……。

それでも藻屑は父親を慕ってやみません。反対に、母親のことは憎悪剥き出し、悪意たっぷりに語ります。

しかし藻屑は不幸にも気づいてしまっているのでした。自分を虐げる父親を慕うという、心と体の矛盾に。
それはごく短い言葉でもって、なぎさにこぼされました。

「好きって絶望だよね」

・あの子を助けたいのに

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最初は「関わり合いになりたくないやつ」だったはずの藻屑。彼女はいつの間にかなぎさにとって、友人とはちょっと違った、大切な関係性を持つ間柄になっていました。
大事な人が傷つけられるのを、黙って見てはいられません。

思い余って、なぎさは雅愛に食ってかかります。痣のこと、脚のこと。誠心誠意、藻屑のために。中学生の女の子が、大人の男にずばずばと意見するなんて、それも家庭の事情になんて、彼女はどれだけの勇気を奮い立たせたことでしょう。
 
なぎさの「勇気」の前に、雅愛は鼻で笑うだけ。証拠だ、裁判だ、と中学生を脅えさせる単語を並べ、ついでに藻屑を貶めるような言葉まで吐き出してぷいっといなくなってしまいます。

ここでも気丈にふるまうなぎさですが、彼女もわからないままでいたかったことに、気づきはじめているのです。

子供の自分がいくら声を上げても、どうしようもないのじゃないか、ということに。

・残された、もの

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この物語は、予想しうる限り最悪の形でもって終わります。
 
しかしその後日談とでもいうべき部分も組み込まれており、そこからかすかな希望を見出すことができます。
 
2人の少女の出会いと別れの物語。

あなたは、どう感じましたか?

参考元

  • ・砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない富士見書房

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