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出典:amazon

2019/05/10
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ヴァレンタイン・デイの夜に泊まると……【異形コレクション グランドホテル】

いわくつきの宿泊施設は数多いですが、こちらのグランドホテルはその中でも飛び切りの一軒です。泊まれば幸せになれるらしいけれど、場所も名前もわからない。そんなホテルで繰り広げられる、様々な物語を集めた短編集。

目次

不思議なホテルの短編集

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ヴァレンタイン・デイの夜に泊まると幸せになれるホテルがある。

しかし、そのホテルの所在地はおろか、名前さえ、ただ「グランドホテル」と呼ばれるばかりで定かではない……。

そんな不思議なホテルを舞台にした、短編集がこちらです。
 

ただし、幸せになれるとはいっても、本当にそうとは限りません。

なにせこの本は井上雅彦氏の編む「ホラー」アンソロジー、異形コレクションシリーズの一冊なのですから。

グランドホテルという形

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この短編集は「グランドホテル形式」と呼ばれる形をとっています。

名前の由来はそのものずばり「グランドホテル」というタイトルの古い映画です。

多くの宿泊客やスタッフたちが登場し、先ほどのシーンで端役だった人物が、場面が変わると主役を張る。

くるくるとその場の「主人公」が変化していくのが特徴です。

日本の作品でいうと「有頂天ホテル」が有名どころでしょうか。


グランドホテルの設定に合わせて、様々な作家が様々な人物の人生の断片を描きます。

わけありの親子、ミュージシャン、探偵と怪人。

従業員も負けてはいません。ホテルのボーイに、レストランの料理長。

備品や設備すら、時には恐怖の大道具に変身してしまいます。


また、こういった特殊な設定を共有して複数の作家が物語を書いた作品を「モザイクノベル」と呼ぶとのこと。

「グランドホテル形式」の「モザイクノベル」である、複雑怪奇なこの一冊。

読み解く喜びは保証します。

小説以外のお楽しみ

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異形コレクションシリーズでは毎回、著名なイラストレーターが扉絵を手がけています。

それもお楽しみには違いないのですが、本書では純粋な小説ではない作品が、2作収録されています。
 

まず一つは「Strabgers」。

ほかの作品とは紙面の構成自体が異なるので、通して読んでいた方は違和感を感じることでしょう。

はじめに「たまり場」なる西村直子氏の文章が綴られ、その合間合間に村山潤一氏のおぞましくも繊細なアートワークが挟まれます。

文章が終わった後、終盤は村山氏の独壇場。

小さなカットでは表現しきれぬ”妖しさ”爆発のイラストレーションをご覧あれ。


もう一つが「運命の花」。

こちらは散文と写真で構成された作品です。

歴代の異形コレクションには漫画を収録した巻もちらほらありますが、写真というのは珍しいです。

グランドホテルのカジノルームを舞台にしたという一連の作品は、華麗の一言。

暴力的なまでの美しさを誇る少年モデルに、ダメ押しで真っ白い百合の花束。

散文から少年の正体を読み取っても、彼に逢いに行くのをやめられないのは語り部だけではないはず。

なお、この作品には編者の「伯爵」こと井上雅彦氏も、ちらりと映っております。

どこまでが本当?

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多彩な短編小説が一軒のホテルを構成する本書ですが、最後の最後、井上雅彦氏の「チェックアウト」はあとがきでも解説でもありません。

本書に作品を書いた作家たちの名前がたくさん出てきます。

もちろんこれも正真正銘、「グランドホテル」にまつわる奇怪な物語なのです。

「楽屋ネタ」と思しき会話が随所に挟まれるのも楽しみの一つ。

本当に交わされた会話かどうかまでは、残念ながらわかりませんが、想像を掻き立てることは確かでしょう。


結局「グランドホテル」とは何だったのでしょうか。

物語の中にしても、本当に存在するホテルだったのか、それとも……。

それは読者それぞれが、胸の内で答えを出すことでしょう。


まずはヴァレンタイン・デイの奇跡の数々をゆっくりと楽しんでください。

幸せなものも、そうでないものも。

参考元

  • ・異形コレクション グランドホテル廣済堂

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