漫画家を目指す妹と飄々としながらニートをしている兄が織り成すコメディ。「ゆうきまさみ」の得意技がすべて詰まった意欲作「でぃす×こみ」。 「BL」という新たなジャンルに挑戦する女子高生漫画家の姿を通して、原点回帰と新たな挑戦を試みる「ゆうきまさみ」。 そんな作品に隠されている魅力をご紹介します。
●あらすじ
女子高生「渡瀬かおる」は、作品を投稿しながら漫画家を目指していた。
そんなある日、大手出版社が主催する「奨楽社新人コミック大賞」を受賞して漫画家デビューが決まった。
大喜びで授賞式典へ参加する「渡瀬かおる」だったが、式典で見た「作品」は自分の書いたマンガではなかった!!
しかも、その受賞作品は自分の描いているジャンルとは違う「BL」がテーマ。
自分では無いと言い出せずにいた彼女の窮地を救ったのは、ニートの兄「渡瀬弦太郎」だった。
そして実は、その漫画を執筆して彼女名義で提出していたのも、その兄の仕業だった。
●BLって何?
「BL」とは、「ボーイズ・ラブ(Boy'sLove)」の略称です。
簡単に言うと、男性同士の恋愛「ホモセクシャル」の描写やテーマとした作品を指します。
ちなみにこの「BL」、女性のオタクである「腐女子」特有のジャンルと思われがちです。
しかし、実際は「壁ドン」的なソフト描写から、ハードな性的描写まで、普通の少女漫画雑誌にも登場するジャンルです。
「腐女子」でもないし、オタクでもないが「BL」は抵抗無い、または好きですという女性も存在します。
●作者「ゆうきまさみ」が投影された主人公像
本作品の主人公「渡瀬かおる」は、性別や年齢は違いますが、作者「ゆうきまさみ」自身の投影した姿に感じます。
本作品の由来は、次回作の構想を担当と打ち合わせた際に出た、半ば冗談まじりの話題が元となっています。
当然、作者の「ゆうきまさみ」自身にもBLに関する知識もなく。それまで興味も無かったそうです。
作中に、主人公が描いたBLマンガが1~4ページ程登場します。
それは、マンガとすら呼べないモノですが、「ゆうきまさみ」は単行本巻末で「大変でネタが無い」と告白しています。
その四苦八苦する作者自身の姿は、主人公「渡瀬かおる」と同じです。
そんな本作品を執筆する作者自体の苦悩が、「でぃす×こみ」の作中へそのまま投影されています。
●作品の魅力<楽しい仲間達>
不定期連載なので、進行スピードは遅いのですが、単行本2巻になってから渡瀬兄妹以外のキャラクターが増えて来ました。
「ゆうきまさみ」作品の魅力は、 ナンセンスなリアクションや、非常識な言動によって笑いを誘うギャグではなく、小気味な会話と漫才の様な「掛け合い」です。
「鉄腕バーディー」や「パトレイバー」などのシリアスなSF作品でも、エッセンスとして作中に見受けられます。
本作品では漫画家「渡瀬かおる」と担当との丁々発止のやりとり。
冷静沈着な兄「渡瀬弦太郎」と多感な女子高生「渡瀬かおる」
更には、渡瀬かおるをライバル視する新人漫画家「蘭丸」との激突など、「ゆうきまさみ」の持ち味が遺憾なく発揮されている作品です。
●30年ぶりの原点回帰
「ゆうきまさみ」は、30年程前は当時人気だった「ガンダム」なとのパロディ漫画を執筆していました。
その時のあらすじは、「ガンダム」という実写映画を撮影している「現場」という設定。
そこでの俳優達がやり取りする様子をコミカルに描いた作品でした。
主人公「アムロ・レイ」や敵役である「赤い彗星のシャア」などが、楽屋や撮影の休憩中にドタバタを繰り広げるパロディ漫画です。
本作品も漫画を描く人々の心情などが交差する事でストーリーが進行して行きます。
そんな「ゆうきまさみ」の原点であるアニメパロディ作品や、デビュー作品「究極超人あ~る」にも似た30数年ぶりの「原点回帰」だといえます。
●最後に
物語は始まったばかりでこれからが楽しみな作品です。
別に連載している作品「白暮のクロニクル」もクライマックスを向かえて、完結間近です。
それが終了次第、本作品「でぃす×こみ」へ注力する筈ですから、グッと物語は進むことでしょう。
参考元
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