自分の大切な人達を守りたいと望む主人公。 裏切られすべてに絶望した悪魔。 ふたりが出会い、世界の歯車が動き出す。 相反する思いを見事に描いた作品『7thGARDEN』(セブンスガーデン)をご紹介します。
●あらすじ
地球では無い別の世界。
その世界では「アンティクォリスト教」という宗教が信仰された世界。
地球と違い、文明は未発達で中世から近代への移行期に似た文明を有していた。
そんな世界の片隅で暮らす主人公「アウィン=ガードナー」は、「カルナ」と呼ばれる村にある大きな屋敷で「庭師」をしていた。
彼の親は名門の家系であったが、失脚して亡くなっており、身寄りの無いところを今の屋敷に拾われて「庭師」をしている。
そのため、「アウィン」は屋敷に暮らす人たちを家族同然に思い、庭師としての仕事以外に護衛として武術の訓練も密かに行っていた。
そんなある時、彼は森の中で蔦に埋もれた女性を発見する。
女性は自分を悪魔だと名乗り、名前を「ヴィーデ」と言った。
そして彼女が彼と出会い、目覚めた事で物語は大きく動き始める。
●『7thGARDEN』の此処が良い
作者「泉光(いずみ みつ)」は、2011年『ジャンプスクエア』からデビューしています。
その後に2012年に、同雑誌でアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」のコミカライズで連載デビューしています。
絵柄は端的に表現すると今風であり、それでありながら繊細でデッサンがしっかりとした絵柄です。
人物だけでなく背景やカメラワークなども力量が高く、見やすく美麗な画風です。
多くの場合、女性キャラクターは判子絵的になりがちですが、性格を外見で表して上手く描き分けをしています。
それだけでなく、老若男女を分け隔てなく上手に描き分けられるマンガ家です。
その画力の高さによって、本作品の複雑に人物や設定が入り乱れる物語が見やすくなっています。
・ファンタジーに見せかけた…
主人公「アウィン=ガードナー」と出会う女性「ヴィーデ」は、自分を「悪魔」だと名乗ります。
確かに悪魔的な超常能力を持ち、死んだ人ですら条件に合致すれば復活させる程の力を持っています。
そして、彼女が強く憎悪して敵とみなしている相手は「天使」達です。
「天使」達も彼女同様な能力を有し、更には世界全ての権力闘争や文明の発達を操作しています。
「悪魔ヴィーデ」も天使達も人間を超越した能力と強大な力を持っています。
しかし、その能力に対する描写は魔法的というよりも科学的な表現で描かれます。
さらには、「悪魔ヴィーデ」も天使達も主人公「アウィン」達の事を「人間」ではなく「小人」と呼びます。
「天使」「悪魔」の存在。
さらには「世界」や「時代」に至るまで、謎がひしめき合い読者と主人公「アウィン」を混乱させます。
そして、主人公の生きる「世界」は物語が進むにつれ妖しい世界へと変化して行きます。
・主人公よりも周囲の人達が物語の主役
主人公「アウィン=ガードナー」の視点で物語の大筋は進行して行きます。
しかし、物語の各エピソードでは異なった人物が主役となって展開します。
時には「アウィン」と敵対する相手が主人公となる場合もあり、毎回違った視点で始まり進行する物語によって読者を飽きさせません。
各エピソードの「主人公」は、敵対する者であったり、別の目的があって主人公達と行動を共にするなど多種多様です。
しかし、そのほとんどが物語の大筋からは、少し離れた"立ち位置"にいます。
そのため、各エピソードの結末はバッドエンドとなる場合もあります。
ですから、読者は緊張感を持って物語を楽しむことが出来ます。
もうひとりの主人公は、「悪魔ヴィーデ」です。
彼女は天使たちに対して並々ならぬ憎悪を抱いており、その憎悪が何か解き明かされて行く過程が物語のもうひとつの核になっています。
それは彼女だけの私怨だけに留まらず、主人公が生きる世界そのものに関する秘密へと繋がって行きます。
そして「天使」達も重要な存在です。
彼らの意志や目標は一枚岩ではなく、「悪魔ヴィーデ」と敵対するだけでなく、利害の一致を見て共闘することもあります。
登場人物達が勧善懲悪の枠組みを超えて入り乱れ、『7thGARDEN』全体の物語が複雑に進行して行きます。
・連載休止中…。
現在『7thGARDEN』は、単行本第8巻までが刊行されています。
2014年から『ジャンプスクエア』にて連載されていました。
しかし、2017年4月号での発表を最後とし、掲載場所を『ジャンプスクエア』の公式サイトへ移転する事になります。
その直後に作者が急病のため一時休載となります。
その後、6月2日から連載再開予定となっていました。
しかし、2017年6月現在では、作者の都合で再延期となっています。
やはり画質・ストーリー共に良いマンガ作品の製作は、大変な苦労があるのでしょうか?
何とか復帰していただける事を願うばかりです。
●まとめ
キャラクターと各エピソードが入り乱れる物語、そしてそれに耐えうる画力の高さ。
なじみ深い今風のタッチなので、誰でも抵抗なく読める作品です。
ぜひとも早急に復帰して物語を進めて欲しいものです。
参考元
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