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戦前、カナダの日本人野球チーム。人種差別にも体格差にも、頭脳で勝つ。
監督は、『舟を編む』でアカデミー賞外国語映画部門日本代表作品に選出された、石井裕也。日本での大規模なセットやカナダでの撮影、亀梨和也や上地雄輔、勝地涼といった野球経験のある俳優の起用など、リアリティにこだわった作品となっている。
戦前、バンクーバーには、多くの日本人出稼ぎ労働者がいた。長時間低賃金の過酷な労働環境や、白人による差別に苦しむ彼ら。労働後のささやかな楽しみとして、日本人野球チーム「バンクーバー朝日」が結成されていた。
しかし、カナダ人チームとは体格差が大きすぎて、連敗の日々。カナダ人にも日本人にも「どうせ負ける」と思われ、チームの士気は下がる一方だった。
そんななか、ショートでプレーする日系二世のレジー笠原(妻夫木聡)が、新キャプテンに任命される。今年も連敗の日々かと思われたが、レジーが相手守備の穴を見つけ、的確にバントを打ったことで、久しぶりの得点に成功。
それ以降、“Brain Ball”つまり「頭を使って勝つ」方法で、バンクーバー朝日は勝利をつかんでいく。
バンクーバー朝日でプレーする日系二世の青年。ショートをつとめており、新キャプテンとなる。普段は製材所で働いている。父親の清二が出稼ぎに行っては日本の親戚にすべて送金してしまうため、家族の生活費や妹の学費を稼ぐ責任を負っている。争いごとを好まず、どちらかといえば気弱な性格。
バンクーバー朝日でプレーする日系二世の青年。ピッチャーをつとめる。普段は漁業に従事する。病気がちな母を抱え、働きづめである。父親は第一次世界大戦でカナダ軍として戦い、死亡。そのためカナダ人に対する反感が人一倍強く、差別的な発言に対し、すぐに突っかかっていく。
レジーの妹。学校に通いながら、裕福なカナダ人の家で家事手伝いとして働いている。頭がよく、学校から奨学金をもらえる予定。カナダ人とも友好的に接していきたいと考えており、カナダ人への文句を口にする父親の清二を見て、不満に思っている。
レジーの父親。カナダに移住してきた世代で、日本人街を作り上げたことを誇りに思っている。カナダ人に対し強い反感を持っており、英語を話そうとせず、カナダ人とも関わらない。数か月間出稼ぎに行ったまま帰宅しないこともざら。
バンクーバー朝日でプレーする日系二世の青年。サードを守る。普段はホテルのボーイとして働く。おだやかな性格。
バンクーバー朝日でプレーする日系二世の青年。セカンドを守る。普段はレジーとともに、製材所で働いている。口数が多い。
バンクーバー朝日でプレーする日系二世の青年。キャッチャーをつとめる。妻と父親と一緒に豆腐屋を営む。息子がひとりいる。
「ニューピアカフェ」の店主。店はバンクーバー朝日の練習後や試合後のたまり場となっている。新聞の切り抜きを店内に飾り、チームのメンバーを心強く応援している。
レジーの母親。夫の清二は「自分が稼いだ金は自分の好きに使わせろ」といって、出稼ぎの金をすべて日本の親戚に送ってしまうため、家計のやりくりに苦労している。
バンクーバー朝日の監督。選手の考えや仕事の都合を受け入れ、選手の成長を温かく見守っている。
前原写真館の店主。関西出身のようで、早口の関西弁でよくしゃべり、バンクーバー朝日を叱咤激励する。
カナダ日本人会の会長。日本人の誇りを貫くかカナダ人に同化するかという大きな問題に直面し、日本人とカナダ人の関係維持に苦心している。
1900年代初頭、多くの日本人労働者がカナダに出稼ぎに行きました。その地で生まれた日系二世たちが結成した野球チームが、「バンクーバー朝日」です。
ピッチャーのロイやセカンドのケイ、キャッチャーのトムらとともに、ショートのレジー笠原は、日々の過酷な仕事が終わると、懸命に練習していました。しかし、カナダ人との体格差に苦戦し、連敗の日々。
カナダ人からは「ジャップ(差別用語)」と、日系一世には「カナダ人と交わるな」とバカにされます。なんとか試合に勝ち、カナダと日本の架け橋となるため、レジーたちはバントや盗塁を多用した、頭脳戦を繰り広げるのでした。
バンクーバー朝日を題材にした作品は映画以外にもあり、『バンクーバーの朝日軍』という小説が存在します。朝日軍の初代エースだったテディ・フルモトの息子である、テッド・Y・フルモトが小説を手がけました。
テッド・Y・フルモトは1990年代、カナダにいる高齢になった選手たちに、朝日軍の奮闘が風化してしまわないよう本を書くことを頼まれ、執筆したそうです。
少ない資料をかき集めて書いた彼のノンフィクション作品は、映画プロデューサーの目にとまり、今作の映画化につながりました。また、啓林館による高校生用の英語の教科所にも、実話として掲載されています。
今作のキーポイントは、妻夫木聡演じるレジー笠原は日系二世であって、渡航してきた日本人でも、肌の白いカナダ人でもない、ということです。
佐藤浩市や大杉漣が演じる、日本で生まれ育った親世代は、日本人としての誇りを保つために、日本語を話して日本人とのみ接することを望みます。一方、日本の血が流れてはいても、レジーや高畑充希演じる妹のエミーはカナダで生まれ育っており、カナダ人とも尊敬しあって接することを望んでいるのです。
そうした水面下での考え方のずれが、彼らの生きにくさの原因でした。そんなときレジーは、野球で面白いプレーをすれば、日本人もカナダ人も関係なく魅了することができるのだと気づくのです。
実在のカナダの日本人野球チームのお話。派手さはなく淡々と進むストーリーだけど観て良かった。
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2018月9月25日~2020月10月19日
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