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人類史上初、不老不死の身体となった女性の、壮大な人生を追ったSF映画『Arc アーク』。ケン・リュウの短編SF小説を、クールでスタイリッシュな映像で具現化したのは『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督だ。
携帯電話やパソコンなどのガジェットに頼らない未来表現、建築家・丹下健三の作品である香川県庁舎や小豆島の風景を上手く切り取ったロケーションの撮影など、独特の映像センスが光る。
17歳で子どもを産んだリナ(芳根京子)は、その子を育てることから逃げ、放浪生活をしていた。遺体をアート作品のような美しい姿で保存する仕事をしているエマ(寺島しのぶ)は、自分の会社にリナを誘う。
遺体をあやつり人形のようにポージングさせる、“プラスティネーション”のアーティストとして成長したリナは、社を追われたエマの代わりにエタニティ社の顔となっていく。
不老不死の薬と技術を完成させたエマの弟・天音(岡田将生)は、リナと結婚し彼女に不老不死の施術をおこなう。夫妻は若き美男美女のまま年齢を重ねるが、ある日天音はとあるものを発見し、重大な事実に気づく…。
キャスト:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン、小林薫
原作:ケン・リュウ『円弧(アーク)』(ハヤカワ文庫刊 『もののあはれ ケン・リュウ短編傑作集2』より)
脚本:石川慶 澤井香織
音楽:世武裕子
監督・編集:石川慶
製作:2021 映画『Arc』製作委員会
製作プロダクション:バンダイナムコアーツ
配給:ワーナー・ブラザース映画
17歳で男の子を出産するが、怖くなり逃げ出してしまう。彼女のダンスを見たエマに誘われ、エタニティ社にボディーワークス担当として入社する。後継者へと育っていったリナは、エマが解任されたあと、アーティスト・リナとしてエタニティ社の顔になっていく。天音に望まれて結婚したリナは、不老不死の施術を受けた。
エタニティ社の理事。ボディーワークスの業務を統括している彼女の、最も重要な仕事は“プラスティネーション”である。たくさんの糸を操り、現代舞踊のように舞いながら遺体のポーズを決める。
エマの弟。ボディーワークスの技術は評価しているが、姉とは違って死や老いからの解放を目標にしている。それを完成させた天音はリナと結婚する。施術しない、命に限りのある人々のための「天音の庭」を作りたいと話す。
エマ直属の部下としていつも近くにいる。突然現れたリナの世話係を命じられる。結婚し、子どもができたタイミングで退社した。
天音の下で働く、不老不死関連の研究者。天音の体調が悪くなってからは、彼に代わって記者会見の会場に登壇した。
エマのもとで働き始めた、リナの前に現れた少年。エマの弟で、姉とは違うやり方で「死」を克服したいと考えている。
リナと天音の娘。50歳になった。リナにそっくりの娘・セリと「天音の庭」で暮らしている。
リナの孫でハルの娘。リナと容姿がそっくり。ハルとともに暮らす。
末期がんの妻・芙美とともに「天音の庭」にやってきた初老の男性。リナの娘・ハルと仲良くなり、おもちゃをあげたり一緒に絵を描いたりして遊んでくれる。芙美のことを、とても大切に思っている。
利仁の妻。末期がんを患っている。人生最後のときを過ごすため、夫の利仁とともに「天音の庭」へとやってきた。穏やかな性格で、利仁との夫婦仲は非常に良い。
ハルとその娘・セリとともに、「天音の庭」のビーチにいる老婦人。
タイトルにある「arc」とは、円弧のことです。円周上の2点によって区切られた円周を表すこの言葉は、何を意味しているのでしょうか? それは始まりと終わり、そして生きるものの誕生と死を意味しています。
今作では、不老不死を手に入れたリナの人生が描かれますが、彼女たちは死があるからこそ生に価値が生まれる、ということを否定しているのです。リナは不老不死となった自分の生き方でそれを証明するといいつつ、その言葉に自ら縛られていきます。
また劇中では多くの人の死や誕生が描かれ、観る者に「生死」を印象づける演出が施されており、そういった点にも注目してみてください。
主演の芳根京子は、17歳から100歳以上までを繊細に演じ分けました。10代では無鉄砲で攻撃的なダンス、30歳ではたくさんの糸を操る流麗な舞を披露し、後半パートでは外見は若いままで老齢の雰囲気を醸し出しています。
前半ではほかに、カリスマ性のある師を演じる寺島しのぶがミステリアスな雰囲気を盛り上げ、岡田将生は人類の未来のために研究を続ける天才科学者を絶妙なさじ加減で演じました。
一方で後半は小林薫、風吹ジュン、倍賞千恵子らベテラン勢が穏やかに脇を固めています。
この映画の原作は、現代を代表するSF作家・ケン・リュウの短編小説『円弧(アーク)』です。
もともと『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』に収められていた作品ですが、映画の公開に合わせ、『円弧(アーク)』を表題作とする新たな作品集『Arc アーク ベスト・オブ・ケン・リュウ』が発売されました。
今作でエグゼクティブプロデューサーも務めているケン・リュウは、弁護士・プログラマー・翻訳者など、その活動は多岐にわたっています。原作と今作を両方楽しむのもおすすめです。
ネタバレを含むレビューです。
寺島しのぶさん素晴らしい
100才の足音 5才の足音
ゼンマイ仕掛けのネズミ 踊る 宿無し『驕るな天音』
2023年4月1日(土)ABEMA
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2018月9月25日~2020月10月19日
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