2019年9月30日から放送を開始した、NHKの連続テレビ小説『スカーレット』。戦後まもなくの昭和の時代、滋賀県信楽(しがらき)を舞台に、女性陶芸家として時代の先駆者になった「川原喜美子」の波乱万丈な人生を描いた作品です。 この記事では『スカーレット』のあらすじと見どころはもちろん、無料視聴できる動画配信サービスや再放送日程も含めた情報をご紹介します。
『スカーレット』あらすじ最新話
『スカーレット』108話あらすじ
武士がご飯も食べずに出かけてしまい、喜美子は不思議がります。カフェ・サニーにて、「そういえばいつも信作が封筒持ってくるんやけどなあ」と相談する喜美子でしたが、大野夫妻は「思春期や。そっとしとき」と返してきます。
武士が帰ってくると、武士は進路について心を決めたそうでした。「おれ、死に物狂いで勉強して、京都の美術大学に行く。そんで…陶芸家になる」武士は、本当に死の物狂いで勉強をする日々を開始したのでした。
一年がたち、武士の受験結果発表の日がやってきました。結果は…見事合格です。マツも含めた3人で大盛り上がり。その夜、喜美子は武士に質問しました。
「報告したんか?」
「何回か電話もしてたやろ」
どうやら、喜美子は武士がひそかに八郎と会っていたことを見抜いていたようでした。武士は八郎と手紙のやりとりを五年間ずっとしていたこと、八郎と会っても、五年前と同じ感じで話すことができたことを話しました。
「どうして、五年前と同じ感じで話すことができるんや?」
「いつも手紙の最後に、『いつか会いたい』って書いてたんや」
喜美子は、『大事なものを失ったんだ』と実感してしまったのでした。
『スカーレット』放送日程と見逃し配信情報
『スカーレット』は、NHK総合で毎週月曜日から土曜日の朝8時~8時15分に放送されています。再放送は、同日の午後0時45分~1時に放送されています。
ダイジェスト放送の「スカーレット一週間分」は、日曜日の午前11時~11時20分に放送されています。
「5分で『スカーレット』」は、毎週日曜日の午前5時45分~5時50分と、午後5時55分~6時に放送されています。
『スカーレット』はBSプレミアムでも、毎週月曜日から土曜日の朝7時30分~7時45分に放送されています。再放送は、同日の午後11時30分~11時45分に放送されています。土曜日の午前9時30分~11時には、『スカーレット』が1週間分まとめて放送されています。
放送を見逃してしまった方は、『スカーレット』が全話配信されている『U-NEXT』で視聴するのがおすすめです。
『スカーレット』基本情報
『スカーレット』の基本情報として、あらすじと見どころ、登場人物について解説していきます。女性陶芸家が主人公の物語は、どんな内容なのでしょうか。そして魅力的な登場人物を演じるのは?豪華俳優陣たちにも注目です。
『スカーレット』あらすじと見どころ
昭和22年(西暦1947年)、終戦後まもなくの時代から物語が始まります。この時、主人公の川原喜美子は10歳。川原家は、両親とまだ幼い妹ふたりの5人家族です。父・常治の戦友である大野忠信を頼り、故郷である大阪から父滋賀県信楽にやってきたところから、物語が始まります。
見どころは沢山ありますが、古き良き日本の世界観や人々の交流は、現代ではなかなか見れません。約70年前の日本と現代の違いを楽しみながら、新鮮な気づきを得たり、懐かしい場面を目にすることができます。当時は食べることにも苦労することが珍しくなかったので、今の日本がどれだけ恵まれているか実感できます。
当時は今と違い、女性が働いたり芸術の道を進むことは一般的ではありませんでした。そんな中、陶芸家の道を突き進み切り開いた川原喜美子の人生は、想像以上に波乱万丈だったはずです。だからこそ、物語が進むにつれて多くの希望と感動を与えてくれることでしょう。
『スカーレット』登場人物
【川原喜美子(戸田恵梨香)】
『スカーレット』の主人公。幼少期から絵が得意で、厳しい時代の中で幾多の逆境を乗り越え、女性陶芸家としての道を切り拓いていきます。
【川原常治(北村一輝)】
喜美子の父親。昭和の父親像を代表するような、厳しくも愛情深い強い心の持ち主。自分勝手で楽天家な一面も。
【川原マツ(富田靖子)】
喜美子の母親。心優しく控えめで、母親の理想像を具現化したような女性。常に周りのために考えて行動しています。
【大野忠信(マギー)】
川原家をあたたかく迎え入れてくれた、常治の戦友。戦争中に負傷した際、常治が大野をおぶって長い道を歩いて救ってくれました。穏やかで優しい性格です。
【熊谷照子(大島優子)】
地元で窯元を営んでいる「丸熊陶業」のご令嬢。お金持ちを自負してるだけあり気が強いです。喜美子の幼なじみとして仲良くなっていきます。
『スカーレット』全話あらすじ【11月30日更新】51話~
『スカーレット』51話あらすじ
寺岡先生が、「百合子さんは、県立短期大学に進学を目指しています」と説明しました。高校どころか、大学という事実に驚きを隠せない喜美子たちです。どうやら家庭科という新しい科ができたらしく、家庭科の教師になることが百合子の夢だそうです。話を聞いた常治は、「大学はいいけど、高校はあかん」とまるでわけのわからないことをいいます。
お金がないことが原因のようです。喜美子に関しても、火鉢生産の縮小によって未来が危ういと指摘します。新聞で「女性初の絵付け師」と紹介されていたことを上げる、百合子と先生でしたが、常治は喜美子がまだ弟子で、給金すら一人前でないことをあげます。
その夜、喜美子と百合子は蚊帳の中で話しました。
「喜美子姉ちゃんいっぱい稼いでる思うてた」
「稼ぐで!これから。県短いかしたる」
しかし、百合子は首を横にふっていいました。
「中学でたら働くわ」
次の日、工房にて、喜美子は深野先生を待つ八郎と話を交わします。
「寂しくなりますよね」「火祭りを一緒に歩きたい」
話が見えず混乱する喜美子は追及し、深野先生が信楽を出ていってしまう事を知るのでした。
追及を逃れようとする八郎に逆壁ドンをかました喜美子なのでした。
『スカーレット』52話あらすじ
逆壁ドンを決め、深野先生が信楽を去るということがどういうことなのかを八郎から聞きだしました。どうやら、深野先生は、長崎にいる森田隼人という絵付けの研究をされている人の元で、また弟子として一から学び直そうとしているようです。
「フカ先生やから、ついていこう思て…。3年間頑張って」「お給金安くても構へん」「ウチも…長崎行こうかな」
喜美子は、八郎が工房を出た途端、涙をこらえることができませんでした。
数日後。暗い感情を隠すことができない喜美子へ、深野先生が「キュウちゃんにも話さんとな」と、夜、飲みに行くことを誘います。
その事を川原家へ連絡するため、喜美子は事務所で電話を借りました。番頭の加山は「残りますよね?マスコットガールやし」と話します。敏春新社長からは「無理して丸熊陶業にいなくてもいいですよ」と選択を許されました。
あかまつにて。
一番弟子は、京都で絵付けの教室を開き、二番弟子は、大阪の専門学校の陶芸科の先生になるそうです。そして、フカ先生は森田隼人の弟子になります。
悲しい顔をする喜美子に、「新たな挑戦や」とフカ先生は励まします。
こうして、深野先生と弟子たち「深野組」は解散したのでした。
『スカーレット』53話あらすじ
喜美子が、あかまつから川原家に帰ってくると、連絡をしたはずなのに常治が待ち構えていました。
街のみんなが「絵付け師のみんながクビになった」と噂しているらしく、それで常治もマツも喜美子のことを心配して待っていた様子でした。喜美子は、勝手な噂が許せず、「新しい挑戦するだけや!」と怒鳴ります。
すると、常治は突然、自分の運送屋の話を始めました。
「滝の汗かいて。あせもいっぱいで真っ赤っかや」
「『仕事大好き』なんて一回も思ったことあらへん」
「それでも働いてる。一生懸命働いて」
「家庭科の先生になりたいいう、娘の願い1つ叶えてやれへん…」
「深野先生みたいな人間しか素晴らしい思わんのなら、出ていってくれ!」
喜美子も、別の部屋で聞いていた百合子も、常治の言葉の意味をじっと考えるのでした。
火祭りの日がやってきました。
信作はカメラ役を任されたようで、やってきた喜美子と冗談のような会話を繰り広げます。
夜も更けました。深野先生、喜美子、八郎の順番で火を持って山を登っていきます。深野先生が一番弟子に松明を託し、山を下りていってしまいましたが、無事たどり着き、神社にお参りしました。
喜美子は既に心を決めていたのでした。
『スカーレット』54話あらすじ
次の日の朝。台所に喜美子の後姿を見つけ、常治は憎まれ口をたたきます。
「火祭りも終わったことやし。いつ出ていくんですかねぇ」
「水も一人で飲めへん、あせもだらけのお父ちゃん置いて、出ていけるわけあらへんやろ」
ご機嫌な様子で、寝床につく常治なのでした。
喜美子は、丸熊陶業にて、新社長の敏春に話をしに行きました。
「丸熊陶業にしがみつくことにしました」
「『女性初の絵付け師』として、一人前の給金をいただきたいです」
番頭の加山は、「養ってもらえばいいんじゃないですかね?」と言いますが、喜美子は反論します。
「家族がおります。下の妹を進学させてやりたいし、電話も引きたい」
喜美子は上機嫌で、絵付けの工房に戻ってきました。
「お給金あげてもらいましたぁ~!!」
深野先生ら3人も喜んで、口々に祝いの言葉を喜美子に投げます。深野組最後の体操を始めるのでした。
秋になり。喜美子のお給金があがったことで、百合子は念願の高校進学を果たしていました。丸熊陶業の植木鉢の生産が火鉢を上回った一方、初めて喜美子がデザインした火鉢の試作品が完成していました。
喜美子と照子は、火鉢とお腹の中にいる赤ちゃんを大切に愛でるのでした。
『スカーレット』55話あらすじ
試作品の絵付け火鉢を持っていった喜美子は、初めて八郎が陶芸をする姿を目にします。
やっと喜美子の存在に気づいた八郎は、絵付け火鉢の現物に感動します。
「深野先生いはったら、なんて言ったやろな」
「きっと」
『ええよぉ~』
新聞で喜美子が紹介されてたこともあり、注文数も順調に稼いでいるとのこと。
八郎は、若社長にお願いして電気釜を借り、自分の作品を作っているようです。いつか、陶芸家になることが夢と話します。
「一人前になるには4、5年…いや、もっとかかります」
「誰かの大事な宝物になるような作品を作るのが、ぼくの夢です」
喜美子は、八郎が陶芸する姿をじっと横で眺めているのでした。
一方、川原家には、信作がやってきていました。どうやら「集団お見合い」といって、東京でも流行っている、何組も集まってお見合いするイベントを喜美子に仕掛けるようです。
喜美子が、「どうして、絵じゃなくて、陶芸家にしたん?」と夢を持ったきっかけを聞きました。八郎は、「美術の先生がやってたのをやらせてもらって」「そしたら、自然と好きになっていました」と話しました。
喜美子は、形を整えるために切り取られた土から目が離せなくなるのでした。
『スカーレット』56話あらすじ
ついに形を整える陶芸作業が終了しました。切りカスから目が離せない喜美子に、八郎は説明します。
「学校の先生は削りカスいうてました」
「量が十分になったら、水を含ませて練り直すんです」
ゴミにならないという事実に、喜美子はほっとします。
八郎は、おもむろに削りカスの一部を手に取ると、練って小人の形を作りました。陶芸の工程を説明してくれます。
喜美子は、時間が遅くなっていることに気づき、「叱られる!」と慌てます。「お見合い大作戦に参加するの?」と八郎と予想外の質問が。八郎と信作は飲みに行く仲の良さになっており、八郎も参加することになっているようです。喜美子は拗ねた様子で、「参加せんわ」と言いながら帰っていきました。
喜美子は、大野雑貨店で信作を待ち伏せし、「なんで飲みに誘わないんや」と信作に迫ります。「お見合い大作戦」の話を聞き「出てくれ」と言われるのでした。
川原家に戻るとお通夜モードの、川原一家が待っています。喜美子は「わかった、お見合い大作戦参加すればええんやろ」と発言してしまい、言質をとられてしまいます。お通夜モードな理由は、直子から「モウダメ」などという電報がいくつも届いていたせいなのでした。
『スカーレット』57話あらすじ
直子からの不穏な電報について、マツは「東京にいく」といいだします。喜美子は「東京にいる草間さんに様子みてもらおう」と提案しました。
翌朝、大野雑貨店の電話を借りて、喜美子は草間に電話をかけ、直子のことを頼みました。その際、陽子に出されたのがお茶ではなく、コーヒーであったことに驚きます。どうやら、大野雑貨店はこれからカフェを目指すようです。
信作と喜美子は揃って大野雑貨店を出て、その目の前で話します。
「駅前に大きな店できたやろ」
「なんでカフェかは知らんけど、変わっていくんや」
「絵付け火鉢だって…わかるやろ?」
絵付け火鉢の縮小の危機に、喜美子の仕事も危機に晒されていました。
その夜、喜美子はマツに相談します。
「朝2時間早くいって、夕方2時間遅く帰ってきていい?」
「うち、陶芸学んでみたい」
新たな道を広げるため、八郎に陶芸を学ぶことを決意した喜美子です。
しかし、翌朝、早く八郎の元へ行くと、お願いを断られてしまいます。話は飛躍し、いつまでも「川原さん」と呼ばれていることへ。つきあってもいない女性を呼び捨てできません、という八郎に対し、「じゃあ、つきあいましょう」とまさかの提案をする喜美子なのでした。
『スカーレット』58話あらすじ
「つきあったらええやん」と言ってきた喜美子に、先日話していた夢の話を八郎はします。3つめが「大好きな人と結婚すること」だそうです。「はよう結婚したい思ってます」という八郎に対し、喜美子は返す言葉が思いつきません。
お互い、背を向けて帰っていきそうになりましたが、喜美子も八郎も立ち止まって考え、お互いの元へ戻ってきました。
「見たいいうのに、断って。話しが変な方向にいってすいませんでした」
「見てていいですよ」
喜美子は、「結婚する」という話で、頭がフリーズしてしまったことを語ります。結局、「川原さん」という元の呼び名で、朝と夕の2時間、作業を見せてもらえることになりました。
大野雑貨店にて、ついに営業終了を迎えたところへ、直子を連れた草間さんがやってきました。
川原家につくなり、直子はふとんを敷いて寝てしまったようです。草間さんがいうには、直子は家に帰りたかったらしく、それで社長にいって休みをもらい、実家に帰ってきたようです。
辺りも暗くなり、直子が起きてきました。直子の頼みでご飯を作る喜美子たちでしたが、その直子の表情が暗いことに、喜美子は疑問を覚えるのでした。
『スカーレット』59話あらすじ
話を聞いて欲しい、という直子は、百合子と喜美子を部屋から追い出します。直子はどうやら、恋愛に悩み、その話をマツに聞いてほしいそうなのでした。
直子は、牛田という男の人を好きになってしまったそうなのですが、彼には彼女がいるそうです。
「うちのこと妹みたいにしか思ってへん」
マツは言います。
「直子は正直もんや」
「自分ん中の好きいう気持ちに気づいて、大事にしよう思ったんやね」
直子はマツに話せてスッキリしたのか、「ほな、東京戻るわ」と言いました。
アカマツからの帰り、常治は酔いながら、草間に頼みます。
「喜美子の絵付け火鉢、みてやってくれませんか?」
翌朝、草間は絵付け火鉢を見て、「こんな絵もかくんだなー」と、ちょっと違った驚き方をしていました。喜美子は、そんな草間に陶芸も学んでいることを話します。草間は、「お見合い大作戦参加するの?」と喜美子に聞きました。そして、自分の奥さんの話をします。
「出会えてよかったって思ってる」
「好きな人ができると、世界が広がるよ」
喜美子はその話のせいか、朝夕の陶芸を学ぶ時間の際、ひたすら八郎の顔を観察してしまいます。八郎はたまらず、喜美子にも陶芸をやらせることにしたのでした。
『スカーレット』60話あらすじ
八郎に教えてもらいながら湯呑みを作りあげた喜美子。「何度でも練習や」喜美子と八郎は互いを意識しながらも、陶芸を作る作業に没頭しました。
その夜、喜美子が拾った信楽焼きの欠片の話になりました。室町時代の焼き物という話を聞き、八郎は明日の日曜に見に行く約束を取り付けます。
川原家に八郎がやってきました。マツは、八郎の若さに驚きます。八郎は、信楽焼きの欠片を見て感動しました。
お茶を飲んでいって、というマツに対し、八郎は首を横に振ります。
「お見合い大作戦なんで。…それじゃ」
行ってしまった八郎の姿に、喜美子は信楽焼きの欠片を見ながらフリーズしています。マツが「八郎さんいい人やったなあ。きっとすぐ見つかるやろなあ」とトドメの一言。喜美子は八郎を追いかけて飛び出していきます。
喜美子は八郎に追いつき、言いました。
「行かんといて!好きやねん!あんたのこと、うち好きやねん!」
喜美子は、草間さんと奥さんの事を話します。「手を繋ぐことより難しいことがある」という喜美子に、八郎は「離さへん、絶対離さへん!」と手をつなぎ、そして抱きしめるのでした。
しかし、それを信作と常治らが見ていたのでした。
『スカーレット』61話あらすじ
抱きしめ合う喜美子と八郎を見るや否や、常治は荷物を放り出して駆け付け、八郎に怒りの鉄拳を叩きつけました。喜美子を連れて家へ帰ってしまいます。
「どこのハレンチさんや!おまえはアバズレさんや!」
常治は喜美子に嫁に行ってほしくない気持ちで大騒ぎです。八郎に陶芸を教えてもらっている話をしますが、常治は聞く気もなく、「一生結婚しなくて娘でええねん」とまで言い出します。
一方、八郎が一人暮らしをしている部屋に信作がやってきていました。信作は「よかったな」などといいながら、自分が小さかった頃、今とは違っておとなしい少年だったことと、それを気にせず喜美子が接してきてくれたことを話します。
喜美子が八郎の部屋へやってきました。信作は、「お見合い大作戦が始まる」と退室します。八郎との話で、常治の話から、結婚の話に切り替わると、喜美子は話を切り替えようとしてしまいます。
「運動苦手やの、わかったから嫌いになった?」と、八郎。やはり話題をそらし、足をくじいてしまっている八郎の看病をしようとする喜美子でしたが、八郎は遠慮して「かえってええ」といいます。その八郎へ、「帰りたくない。帰さんといて」と言う喜美子なのでした。
『スカーレット』62話あらすじ
「帰りたくない、帰さんといて!」
そういう喜美子に、八郎は思わず枕に顔をうずめ、「あーー!!」と叫びます。男の葛藤に首をかしげる喜美子です。だったら、と「釉薬と粘土の焼き加減に関する研究ノート」を喜美子に見せて解説を始める八郎でした。しかし、「それを家に帰って見て」と言うと、再び「帰さんといて」からの「あー!」というやり取りが。
常治が認めてくれない、という話に、八郎は「僕がいるで」「ほな、一緒に頭下げよう」と言ってくれます。
一方、信作は「お見合い大作戦」で、一人の女の人に気に入られ、言い寄られていました。
翌日、喜美子が常治に八郎と会わせる約束をなんとか取り付けました。「せやけど結婚はあかん」
その報告を八郎にすると、「何百回でも頭下げたる」と言います。その二人の話を盗み聞きしてしまった人がいるとも知らずに…。
仕事中の喜美子の元へ、敏春と照子がやってきました。どうやら、喜美子と八郎の噂が広まり始めたようで、それならば早く籍を入れた方が会社的に良い、ということだそうです。
その夜、ついに待ち構える常治の元へ、八郎と喜美子が挨拶にやってきたのでした。
『スカーレット』63話あらすじ
もちろん、常治との話が円満に進むはずもありませんでした。1回目は、最初、殴ったことを早口で丁寧に謝ると、話を無理やり中断させてしまいました。
2回目は、まったく口をきいてもらえず。3回、4回、5回、6回、7回、とただ回数だけが増えていきました。それでも足を運んでくれる八郎の姿に、いよいよ百合子が耐えられなくなりました。
「多数決で決めようや!」
マツも、いよいよアカマツにいって、仲を取り持つと言い出します。喜美子は、笑いながらも真剣にいいました。
「八郎さんは、何百回でも来る、言うてた。心配ない」
直子にも手紙で近況をしらせると「がんばりい~!」という電報が届きました。
一方、もはや喜美子と八郎の仲は社内問わず広く知られるものとなっていました。今日も今日とて、八郎の元へ陶芸教室を受けに来た喜美子は、掃除を手伝おうという姿勢を譲りません。そこで、八郎は授業料を取ることを提案します。露骨に嫌な顔をする喜美子に、「結婚したら2人の金や」と説明します。電気釜を買おう、などと未来に夢を馳せる喜美子たちでした。
さて、そんな喜美子と八郎の声を聞きつけ、照子が顔を出します。と、照子に陣痛がやってきてしまい…!?
『スカーレット』64話あらすじ
八郎が挨拶に来ず、喜美子もなかなか帰ってこない状況に不安を隠せず、「喜美子、まだ、三歳やもん」などと支離滅裂に駄々をこねる常治は、ついには「駆け落ちしたんじゃないのか?俺たちみたいに」と言い始めます。駆け落ち、という話を初めて聞いた百合子が顔を出すと、常治は熱い熱情を語りだし、「気持ち悪」といわれてしまいました。
どうやら、喜美子と八郎は、照子の出産に立ち会って遅くなってしまったようです。また日を改めようとする八郎に、常治は「上がってけ、上がってけ」といいました。
互いに自己紹介が始まりましたが、常治はどこかふざけ調子です。
「改めまして、十代田八郎いいます」
「おれ、ジョージ」
マツや百合子らにも自己紹介させる常治でした。
常治は、どうやら八郎のことを気に言ってくれたようです。しかし、最後に一つどうしても気に入らないことがあるようでした。「おれは散々マツに苦労させてきた」「夢を語り合って、1つも叶えてやれんかった」「陶芸家になるっていう夢だけわからへんねん」「好き言うだけで夢は叶わへん。お願いします」
喜美子か、陶芸家か、どちらかの選択を迫られる八郎なのでした。
『スカーレット』65話あらすじ
「わかりました」
八郎が、喜美子と結婚するために陶芸家の夢をあきらめるという決断をしました。しかし、喜美子が納得できません。「ウチ、もう見てるで。十代田さんと同じ夢」と、夫婦の夢が一緒であること、八郎がどれだけ陶芸家という夢に一生懸命かを話しました。
常治は「仕事の合間にやったらええ」といいましたが、喜美子は「片手間でできるようなもんちゃう」といいました。常治は、「だったら丸熊陶業やめて、勝手にしたらええがな」と怒鳴ります。
常治と喜美子のおさまりがつかないぶつかり合いに、マツが「話してもいい?」と若かりし頃の話をしました。マツは、自分が常治との人生で、一度も「失敗した」などと思ったことはなかったといいました。
八郎は常時に、自分がどれだけ夢を叶えたいかを語りました。「人の心を揺り動かす作品を作りたいです」「先ほどの『夢をあきらめる』という約束、見合わせてください」
その上で2人合わせて頭をさげて、結婚をお願いしました。常治は、陶芸展で賞を取った際に、結婚を許す約束をしたのでした。
次の日から、八郎の真剣な陶芸展への作品作りが始まったのでした。
『スカーレット』66話あらすじ
朝と夕に、喜美子が陶芸の基本を学び、八郎が陶芸作品を作る日々が始まりました。
ついに出来上がった八郎の作品を、若社長の敏春に見せる日がやってきました。しかし、敏春は色が普通であることを指摘し、「何を焦ってるんや」と八郎に次の作品を作ることを勧めます。
八郎の作品作りはまた1からです。ご飯も食べずに必死になる八郎の姿に、喜美子はご飯を食べさせ「休むべきや」と勧めます。
一方、信作は「お見合い大作戦」で気に入られた女性に、家にまで無断で挨拶に来られ、疲れた様子をみせていました。そこへ、喜美子と八郎がやってきます。大野たちはどうやら、大野家が作ろうとしているカフェのコーヒー茶碗を八郎に作ってほしい、と思っていたようです。八郎はその願いを引き受けますが、「作品作りに忙しいのに」と喜美子は心配しました。
「作品作りから逃げたいだけやないの?」と話した喜美子に、八郎は説明しました。「自分の作品を否定されると、自分も全否定された気分になってまう」「湯飲み茶わん好きや言われて、救われた」「コーヒー茶碗作ってほしい、いわれたのも」
「大丈夫やるで!作品作りも、コーヒー茶碗も」
八郎はそう言い、作業に戻るのでした。
『スカーレット』67話あらすじ
正月がやってきました。川原家へ帰省した直子が、お土産を持って帰ってきたことに川原家一同が驚きます。その直子へ、常治が「感極まる喜びのお知らせ」として念願の電話を購入したことをバラしました。
喜美子は陶芸の作業場へ。お正月休みも、喜美子と八郎の陶芸作業は休みなしです。まずはやってきた大野と、八郎がコーヒー茶碗のデザインの相談をしていました。
「どっちが『サニー』っぽいかな」
「2種類作りましょか?」
「じゃあ、10個ずつ、20個頼めるかな?」
驚く喜美子を他所に、八郎は了解してしまいます。
大野が帰ったあと、なんと八郎は開店祝いの贈り物だから、と代金さえもらわないといい出します。喜美子は納得できずに拗ねた顔をします。
余裕な表情の八郎に、喜美子はいいます。「チャンスは一回きり。今回で入賞しなかったら結婚あきらめてもらうっていってたよ」そんなことは知らなかった八郎は「今からでもコーヒー茶碗断ろうかな」と焦りだします。
八郎が作っている姿を横で見ていることしかできない喜美子は、気づけば泣きだしていました。「無茶でも作りたかった」と泣く喜美子の姿に、八郎は突然黙ったまま部屋を出ていってしまうのでした。
『スカーレット』68話あらすじ
黙って部屋を出ていった八郎は、なんと大野に喜美子に手伝わせることを了承してもらう電話をしていたそうです。一度、「人前に出す茶碗だ」と八郎に断られた喜美子は、驚きながらもまずは電動ろくろを使って、八郎がやっていた通りの形にコーヒー茶碗を形作っていきました。しかし、習得するだけでも4、5年といわれている電動ろくろを、見様見真似で扱えるわけもありませんでした。喜美子は断念し、いつも使っているろくろでコーヒー茶碗を地道に1つ1つ形作っていきます。もちろん、いつも使っているろくろでだってとても難しくて、何度も失敗します。
川原家に、喜美子が八郎とともにコーヒー茶碗づくりで徹夜作業をするので帰らない、という連絡が入りました。たちまち常治はマツに「黙って覗いてこい」と慌てながら命令します。
差し入れのお弁当を持ったマツが作業場に「失礼します」と小声でいって侵入すると、中では八郎が床に眠り、喜美子が泣きそうな表情で必死にコーヒー茶碗づくりをしていました。
次の日。日も上り、やっと喜美子の10個分のコーヒー茶碗づくりが終わったのでした。
『スカーレット』69話あらすじ
ついにコーヒー茶碗の本焼きです。八郎のコーヒー茶碗を本焼きにかける中、喜美子のコーヒー茶碗は、釉薬をかける前の段階まで来ていました。しかし、喜美子のコーヒー茶碗を観察していた八郎がふと手をとめます。なんと2つが本焼きの際に割れてしまうかもしれない、というのです。不安に押しつぶされそうな喜美子は、ひとまず大野に連絡をします。
「15日に間に合わせてくれるなら、2個割れてもかまへん」と大野はいってくれました。そして、喜美子の10個分は大野の希望もあって代金を支払ってくれることになりました。八郎は「受け入れます」と、喜美子の要望を納得はせずとも容認したのでした。喜美子は割れた分として、得意の絵付けで自分が作ったコーヒー茶碗に花を描くことにしました。
2人は直子が買ってくれた土産のノートを、『夫婦ノート』と名付け、未来の予定を書いていきます。3月は賞を取る、4月は結婚、5年後には八郎が陶芸家として売れていて、子供は娘と息子が1人ずつで…。そして、八郎は「キスはいつするんやろ…」とふと切り出します。「全部予定通りはつまらん。ぼくも男やで…」八郎はそっと喜美子の唇に自分の唇を近づけていくのでした。
『スカーレット』70話あらすじ
喜美子はキスをする寸前に思いつきました。「お花の絵…コーヒー茶碗の中に書くわ」2人はそっと初キスを交わすのでした。
ついに釉薬も絵付けも塗り終わり、喜美子のコーヒー茶碗10個の本焼きにかかります。昼間に焼き始まり、焼きあがったのは夜。やはり、2個割れてしまいました。他の8個は無事に焼きあがっています。八郎も褒めます。「中のお花もかわいいな。さすが絵付け師や」
大野夫婦も完成品を見て、大喜びです。喜美子と陽子は、「これぐらいは」「多すぎます」とコーヒー代金でゆずりあいの押し問答です。大野夫婦からもらったコーヒー茶碗代金は、『夫婦貯金』になることになりました。
時は流れ、八郎の出品作品が完成しました。「はよ出ていけ」となぜか喜美子の出かけを急かす常治です。常治はこっそり川原家に、喜美子達が住める部屋を作ってもらうことにしていたのでした。そのために遠距離運転の仕事をするといい出し、マツが心配します。
八郎の出品作品の完成に、喜美子、信作、照子、敏春が集まりました。照子と敏春の夫婦関係は、子供が生まれたことで悪化しているようです。八郎の渾身の1作の登場に、「中々やなぁ」と納得の一同なのでした。
『スカーレット』71話あらすじ
時が立ち、喜美子と八郎の部屋が完成しました。喜美子から「増築してくれたところ完成しました。ありがとうございます」と感謝の言葉をいわれる常治です。
一方、絵付け火鉢の縮小がさらに進み、絵付け係の作業場が片付けられていきます。丸熊陶業はこれから建築資材用のタイルの開発に力を入れていくようで、八郎の仕事は大忙しです。
今日はついに入選発表の日です。八郎が絵付け係の作業場に神妙な面持ちでやってきました。彼は2つのご飯茶碗を取り出します。「ご飯茶碗を作った。これで毎日一緒に食べような」八郎の作品は、見事新人賞に入選していたのです。
その夜、結婚と入選を祝うお祝いが、川原家に街中のみんなで集まって盛大に行われました。皆が帰った後、八郎と常治が2人で酒を交わします。常治は、「息子がほしかったんや」と2人の結婚を認めました。
後日、カフェ・サニーで初めて喜美子と八郎の姉であるいつ子が顔を合わせ、いつ子に八郎のことを頼まれます。
写真撮影の日がやってきました。東京から帰省した直子は、離れを見て大興奮。いつ子に髪を結ってもらっていた喜美子の元へ、カフェ・サニーから「ええ話なのよ」という一本の電話が届きました。
『スカーレット』72話あらすじ
カフェ・サニーからの電話は、なんと喜美子に1個400円でコーヒーカップを作ってほしいとの注文でした。
カフェ・サニーで話を聞いたところ、なんと80個も注文したいとのことでした。喜美子は「8個作るので精いっぱいでした」と断ります。八郎が「いつか喜美子が一人前になった時、また注文を持ってきてください」と話します。
時は流れ、昭和40年。2人は独立し、専用の電気釜も買いました。まだまだ八郎は大成したとまではいかず、離れを作った借金もあって川原家は貧乏生活が続いています。喜美子は大量の注文品を請け負って八郎を支えており、電気釜もすっかり扱えるようになりました。2人の間には、武士と名付けた男の子が1人生まれていました。遠距離トラックの運転をしていた常治の容態がすっかり悪くなっていました。百合子は短大へは進めず、食品を卸す仕事をしています。
ある日のこと、喜美子と八郎の元へちや子がやってきました。「琵琶湖特集も終わりで、こっちへ来ることもあらへんなあ」ちや子は、「女性陶芸家としてやっていったらええやん」といいますが、喜美子は「今の仕事にやりがい感じてます。満足です」と首を横に振るのでした。
『スカーレット』73話あらすじ
食器づくりで家計を支える喜美子でしたが、常治の体の調子はよくなる傾向が見られませんでした。
八郎が武士の小さな作品たちを「すっかり陶芸家やな」と褒める一方、「喜美子のスペースもあるやん」といってしまったことが、「興味ないねんな」と喜美子を拗ねさせます。八郎はすぐ「喜美子に興味津々やで」とフォローしました。
ランチには、照子とその子供たち三姉妹もやってきていました。照子は、1人抜け出して八郎の元へ行くと、県立病院で常治を見かけた話をします。常治が泣いており「長うない」といっていた話をすると、八郎は「嘘や」と信じません。半年前の話だったことを話すと「なんでそのときいわなかったんや」と八郎が問い詰めます。照子はその時、常治に「喜美子には言うてくれるな」と常治に腕をつかまれたことを話しました。
炊事場では、マツが喜美子に「温泉に行きたいと言い出した」と常治のことを話します。
しばらくして、常治とマツは温泉へ行きました。両親のいない川原家にて、八郎が常治の担当医から聞いてきたという病状を交えて、真実を喜美子と百合子に伝えました。「嘘や」と信じない喜美子に「喜美子がしっかりせんと」と八郎は励ますのでした。
『スカーレット』74話あらすじ
温泉にいっていた常治とマツが戻りました。常治はスリッパを頭にのせて踊りだしたり、とふざけ通しだったそうです。「私にできるこは何かないか聞いて、『何もない』言われた。そやから、私にできることは…泣かないことや」必死に涙をこらえるマツの姿に、「ウチでみよう」と喜美子や百合子も常治の最後を看取る覚悟をします。
八郎の元に、陶業研究所の柴田がやってきました。「金賞狙うなら、強い個性打ちださんと」柴田がその場を去っていくのを、八郎は悔し気に見送ります。そこへ喜美子がやってきました。電話で八郎が勝手に喜美子の仕事を断った、というのです。八郎は「断ってないよ」といいますが、2人の喧嘩はヒートアップしていき…常治が「しょうもない」とその場を後にしました。
直子は仕事が忙しくて、川原家に戻れません。
秋になり、常治はご飯もロクに食べれないほどになっていました。喜美子は八郎に、「器…作ろう」といいます。八郎も同じ考えであり、素焼きしておいた大皿をもってきました。
夕方、大皿にみんなで絵付けをしていきます。武士が常治の似顔絵を描き、マツがメッセージを書いて、八郎は富士の絵を、喜美子が花の絵を縁に描いていきました。
『スカーレット』75話あらすじ
大野家では大野が毎夜、朝まで酒を飲み明かしていました。心配する信作に、無理やり大野は常時と交わした約束について語ります。「うまいマツタケごはんご馳走しますって約束したんや」「約束…叶えられんかった」クシャリと表情をゆがめる父に、信作は立ち上がっていいます。「松茸。取りに行こうや!」
突然、真夜中の川原家にノック音が響きます。喜美子が開くと、そこには土だらけで松茸と炊いたご飯を持った大野一家がいました。
松茸ご飯の乗った器が常治の元へ差し出されました。弱々しく「器、見えへんやんけ」という常治に、慌てて喜美子たちは代わる代わる松茸ご飯を食し、空っぽにします。常治は川原家一同1人1人に話し始めました。喜美子と八郎に「仲良うせえよ」。百合子とこの場にいない百合子に「いい人見つかったらいいな」。武士に「う~!…これからはお父さんにしてもらえ」。
「喜美子!」「頭に何かついとるな!」しかし、喜美子の頭には何もついていません。首をかしげる喜美子の頭に手をのせ、その頭を撫でる常治です。「ほな、またな…」
喜美子が琵琶湖を初めて見たときの思い出を語りますが、常治はそれきり、目を覚ますことはありませんでした。
『スカーレット』76話あらすじ
お葬式も終わり、作業場に『かぞくの作品』という新たな棚ができあがりました。喜美子と八郎は、常治に夫婦仲について言われていたことを話し合います。喜美子はどうやら、八郎が寝てしまった武士を率先して運んでくれることや、適当に畳んでしまった洗濯物を畳みなおしてくれることがどうしても『嫌』なのだとか。
「嫌味か!」
「優しければ、優しいほどうちが責められてる気持ちになるねん」
どうすればいいのか、という具体例を出すまでには至りませんでしたが、八郎はいいます。
「もう一つの方もわかってたらいいんちゃうかな?」
「もう一つの方って?」
「喜美子のこと好きやで」
喜美子も「あんたしかおらん」と言います。
お葬式にも参加できなかった直子が、雪が降る季節に信楽に帰ってきました。直子が連れてきた男の鮫島を追い出し、喜美子は「なんで帰ってこなかったんや」と直子を責めます。直子がこなかった理由は、常治が『帰って来るな』と何度も念押ししたせいだそうです。
「最後くらい言う事聞いてやろうおもうたんや」
「会いたい思うたに決まってるやろ!」
「うっとおしい、暑苦しい、元気なお父ちゃんしか記憶にない」と泣きそうな顔で笑う直子なのでした。
『スカーレット』77話あらすじ
葬式にも駆け付けられなかった理由をやっと話した直子は、鮫島を呼びに行きます。鮫島と直子は、なんと2人で年明けに大阪で商売を始めていくつもりだそうです。「そのうち楽させたるからな!」と意気込む直子の姿に、マツは「どこかで見たような…」と頭を思い悩ませ、閃きます。
「お父ちゃんや!」
常治のことです。
直子は作業場へ行くと、常治のために作った大皿を手にして、「自分も描きたかったなあ」などとつぶやいた後、いいました。
「お父ちゃん亡くなって、ほんま悲しいで」
「でも、お父ちゃんにああしろ、こうしろいわれてたのがこれからはなくなる」
「わーっと走りだくなるねん。…自由を手に入れたんや」
喜美子らに心配されながらも、鮫島とともに大阪へと戻る直子なのでした。
夜、寝てしまった武士を布団に寝かせながら、喜美子と八郎は自由のことを話しながらも、日曜にあるジョージ富士川の実演会に2人で行くことを約束します。しかし、当日、武士が熱を出してしまい、八郎だけが実演会に行くことになりました。
返ってきた八郎、さらに照子まで現れ、ニコニコと作業場へ喜美子を連れていきます。中に入ると、なんとジョージ富士川がそこに立っていたのでした。
『スカーレット』78話あらすじ
自分のために来てくれたという事実に感激する喜美子です。ジョージ富士川の特別実演会が始まりました。庭いっぱいに広げられた紙に、思い思いに絵を書け、といわれます。子供たちが絵を描く中、喜美子の手は止まったままでした。
「自由いわれても、書けへんもんやな」
「自由言われるほうが不自由や」
「課題出したる」
課題は『信楽の土』でした。ジョージ富士川がペンに大量の絵の具を含ませてデタラメに走らせたり、絵の具の中に足を入れて歩き回ったりするうち、子供たちも喜美子も思いっきり『自由』に絵を描いていくようになったのです。
八郎はこの日から、猛全と作品作りに励むようになりました。ついに八郎の作品が陶芸展にて金賞を受賞します。写真をとられたりともてはやされる中、八郎は喜美子に声をかけました。
「ずっと作りたい思うてたんやろ」
「次は喜美子の番や」
喜美子はどう作品作りをすればいいのか、と土をこねながらも、ふと亡き父への想いを沸き上がらせます。八郎の肩を借りながら、号泣しました。涙を流したことで、やっと喜美子の手が動き始めました。普通の作り方からかけ離れたその作品は、まさに『自由』に作った作品でした。
『スカーレット』79話あらすじ
3年の月日が経ちました。深野先生とは年賀状のやり取りが続いており、武士は小学生になっています。
川原家の朝。百合子が信作とアカマツに飲みに行っているという事実を聞き、喜美子が驚きます。八郎は金賞をとったことで世に広く認められ、銀座で個展も開くほどになっていました。生活は以前ほど貧しくはありません。しかし、弟子までとっている八郎の心境は、なぜかどんどん息苦しくなるばかりです。弟子は2人いるのですが、仲が悪いです。「今日は陶芸教室や。どちらか1人つきそってな」といっても、互いにゆずる気はなく、ケンカ状態の2人を引き連れて、八郎は陶芸教室へ向かいました。一方、マツは小学校のお母さん合唱団に参加しており、今日もそれに向かいました。
夜、武士が寝た後。その時間だけが、夫婦2人で過ごす唯一の時間です。
「ぼくな、この時間が一番好きや」
「2人、陶芸教室でも喧嘩してた」
「弟子やめさせてええかもな」
喜美子に作ってもらったおにぎりをほおばりながら、八郎は悩みます。「素晴らしい作品ってなんやろな…」
「この時間取り上げられたら、もう生きていけへん」と笑う八郎に、「誰も取り上げへんよ」と笑い返す喜美子なのでした。
『スカーレット』80話あらすじ
とある日の夕方、八郎を訪ねてきた信作でしたが、弟子2人の不毛な争いを目にする羽目になった上、先客がありました。
先客とは、陶芸研究家の柴田でした。柴田は喜美子と八郎、さらに信作がいる前で話を始めます。八郎は、柴田から紹介された2人の弟子をやめさせることを話した様子であり、柴田も納得します。話は銀座の個展の方へと移ります。個展の目玉商品はできあがっておらず、柴田は武士や喜美子の作品にも興味を持ちます。
「奥さん。ハチさんの後ろに控えて、お客さん迎えるんやろ?」
「美しい格好してな。銀座やで」
柴田が帰ったあと、信作は喜美子と八郎の今の関係が心配だ、といいます。八郎の後ろに従うような喜美子の姿勢が、喜美子らしくない、いつか爆発する、というのです。
その夜、工房にて八郎が喜美子に日本陶磁器次世代展に応募するようにいいます。しかし、話を逸らして八郎が頼まれている作品について聞きます。仕方なく色を「深い緑色」にしようとしている、ということを話すと、喜美子が知らないはずの釉薬の調合について的確に分量と工程を口にしたのです。「ハチさんの後ろから学ばせてもらってた」という喜美子に、戦慄を隠せない八郎なのでした。
『スカーレット』81話あらすじ
喜美子は、弟子2人に弟子を辞めさせることを告げました。怒りだしてしまい、頭をさげて謝ります。
川原家に池ノ内と磯貝がやってき喜美子は大喜びです。2人は八郎に弟子を連れてきたそうです。
「松永三津といいます」
彼女も、女性陶芸家を目指していました。
八郎は柴田らと工房で、喜美子が作品を出品することを話していました。柴田らも喜美子が作品を応募することを認めてくれましたが、受賞するとは思っていません。
「ひらめきと感覚だけのうちは怖くない。怖いんは、知識がついたときや」
喜美子が、池ノ内たちを連れて工房へきます。再会を喜ぶ八郎でしたが、三津の話は断ります。三津は全国を回って修行場所を探してきたのですが、『女だから』という理由で断られてきたようです。
喜美子は、三津に弟子を断る事を告げますが、簡単にはあきらめてくれません。全国で集めた釉薬の材料を取り出して見せたり、元カレの話をしてあげるから、と釣ったりします。八郎はガンとして首を縦にふりません。
三津が帰ったあと、八郎が喜美子の作品を次世代展に出品する話をしましたが、喜美子は首を横にふります。「残りの2週間で、新しいのを作る」と言い出したのでした。
『スカーレット』82話あらすじ
三津が発見したのは、八郎の元弟子である2人の姿です。闇に生じて釉薬の調合ノートを盗もうとする彼らに、三津は後を追いかけました。
一方、アカマツに信作が駆け付けると、百合子と飲む藤永たちの姿がありました。信作はたちまち嫉妬し、「泥棒が入ったんや」と百合子を連れ帰ります。
泥棒事件はやはり、八郎の元弟子の2人がノートを盗んでいった件であり、離れにも鍵をつけることが決定しました。
信作はアカマツにて、百合子が藤永たちと手を合わせていたことに言及し、「他の男に触らせんなや」と嫉妬を露にします。百合子は初めて、信作を意識しました。喜美子と八郎は、「2人『なんやこのノート!?』って今頃、驚いてるやろな」と笑い話をしていました。そこへ三津が「なんやこのノート!?」といいながら、ノートを持ってきたのでびっくりです。ノートは喜美子たちの夫婦ノートだったのです。三津が無茶をして取り返してきたのでした。
三津に手作りおむすびがふるまわれることになり、待っている間、三津は元彼の話をしました。
「喜美子さんと同じです」
「軽々新しい作品を作っていきやがるんです。…私は耐えられませんでした」
共感を隠せない八郎なのでした。
『スカーレット』83話あらすじ
喜美子が台所でおにぎりを用意していると、マツと百合子が起きてきました。喜美子は三津がノートを取り返してくれたことを話しました。
「はるばるここに来はったんよ」
「でも、ハチさんがなぁ…」
銀座の個展のために手一杯な一方、手づまりな様子の八郎のためにも、三津を弟子にしてあげたいと話す喜美子でした。
喜美子は工房に戻り、三津を預かってあげたい事を八郎に話しました。
「大事なノート取り返してくれてな。お礼がおむすびだけってこともないと思うんよ」
三津と揃って頭を下げると、八郎も「喜美子がそこまでいうなら」とやっと三津を弟子にとってくれました。
とある日の昼間。百合子が三津について楽しそうに話すのですが、連れの信作はおみくじで『凶』を連続でひいてしまってそれどころではありません。
「命と同じくらい大事なものを失う恐れがある」
「…百合子やな」
喜美子が工房へ行くと、三津が八郎に「その土じゃ、この色は出せません。違う土を試してはどうですか?」といいました。それを断り、三津を追いやった八郎に、「やってみたらええんやない?」喜美子がききます。しかし、八郎は、「ぼくと喜美子は違う人間や」と頑固な姿勢を崩さないのでした。
『スカーレット』84話あらすじ
「ぼくと喜美子は違う人間や。次世代展に出品する作品作りがんばりぃ」
喜美子と八郎は、それぞれ作品作りに取りかかりますが、喜美子は笑いがとまりません。八郎は厳しい言葉をなげかけます。
喜美子の作品『春の皿』ができあがりました。「平凡やな」と言われますが前向きです。彼女は八郎のために応募したのです。
八郎の新作づくりがうまくいかないまま、2か月が経過しました。「喜美子がおしえたってもええな…」という八郎の発言により、忙しい八郎に代わり、三津の陶芸を喜美子が教えることになります。
アカマツにて、信作は上司に「若いもんが危機感もたな、あかんのや」と指摘されます。その解決策を「人口を増やすや」と口にした信作は、冗談で百合子にいいました。
「家庭を築く。…一緒に築くか?」
「うち…人口増大に貢献してもええよ?」
2人は、結婚を前提にお付き合いすることになったのでした。
手動のろくろから始めた三津は、八郎に厳しく指導されます。
「最初に教えた時から、喜美子は上手やった」
「教えんでもできるようになって。うまくいかへんぼくの横で」
「喜美子に横におられんのは…しんどいなぁ」
そう三津に漏らしてしまう、八郎なのでした。
『スカーレット』85話あらすじ
「おにぎり食べたら、三津はしまいやな」
などと喜美子が言っていた矢先に、泥酔した百合子が帰ってきてしまい、喜美子は百合子を介抱しに戻りました。三津は八郎の問題発言について言及し、構わず話を続けます。
「ヒロシのとき、私も似たような気持ちになって別れました」
「まず、喜美子さんに追い越されてしぼんでしまった才能を開花させればよろしいのでは?」
三津は八郎に「個展を大成功させましょう」、と応援します。
八郎に「素晴らしい作品とは?」と聞かれ、「売れる作品です」。三津は佐賀の名もない陶芸家の話を持ち出します。
「70位の前歯のないおじいさんなんですけど、似たようなぐい飲みばかり作り続けて、売り続けていたんです」
八郎は安らいだ表情を見せました。
一方、喜美子が出した答えは正反対でした。泥酔状態の百合子から、橘さんの話を聞いた喜美子は、翌日、八郎に橘さんからの注文を受けるつもりがあることを話しました。
「ここ3年、ハチさんが作品作ってくれて。裕福な生活させてもらってきたわ」
「私の番や。銀座の個展はやらんでええ」
その夜、自分の枕の下に武士からの「テレビを買ってください」という手紙を見つけ、苦悩する八郎なのでした。
『スカーレット』86話あらすじ
朝のことです。マツが喉から声がでない一方、武士は学校にでかけるフリをして八郎のいる工房へと手紙を届けてから、登校しました。どうやら、武士が出した「テレビを買いたい」という嘆願書を八郎が落としたようです。三津は事情を聞くと、「じゃあ、個展成功させて、電気釜とテレビですね」と励まします。
三津は、東京で洋食器のセットが流行っていることを八郎に教えました。東京の話をしながら、作業開始しようとした八郎でしたが、どうやら三津が電動ろくろを回したことがあるらしいことを知り、三津にやらせてみました。ディナーセットの話へと戻ったところで、喜美子がやってきて「橘さんのところへ行くわ」と注文を受ける旨を伝えます。
一方、カフェ・サニーでは、陽子が飲みすぎで信作に介抱されていました。陽子は、信作と百合子の結婚は嬉しいそうですが、「常治さんがいてくれたらな…」と思わずにはいられないそうです。
「『誰が、お前に渡すか!』って門前払いしてくれたやろな」
「常治さんの洗礼浴びさせたかった」
やっと「結婚の許しもらってくるわ」と男の顔をした信作です。しかし、橘に会いにやってきた喜美子を前にし、言葉すら発せない信作なのでした。
『スカーレット』87話あらすじ
喜美子が橘と再会し話に盛り上がっていると、ひょんなことから信作と百合子のことがバレそうになってしまい、大野たちはごまかします。喜美子はいいました。
「百合子がお世話になってます。お母ちゃんとあんなんまだ、嫁に出せへんといっていたところです」
「うちのことを柔道で投げ飛ばせるぐらい、勇ましいたくましい男が相手だとええです」
すっかり心配顔になってしまった大野夫妻でした。
喜美子が帰ると、談笑して笑い合う三津と八郎がいました。いぶかしげな表情をする喜美子に、八郎がディナーセットを作って銀座の個展に挑むつもりなことを告げます。東京の下見にまで行く、という八郎に、喜美子は声を荒げますが、八郎はもうやると決めてしまったようです。
「昔の作風に戻ろうと思ってる。それが正しいことなのかはわからんけどな」
離れへ走り去ってしまった喜美子を追い、八郎は橘さんに何を頼まれたかを聞きだします。なんと結婚式の引出物として、合計200枚の小皿を注文されたのでした。
「喜美子らしいええ小皿やん。ほな進めんと」
喜美子の心は、個展を手伝いたい気持ちと自分の作品を作りたい気持ちに揺れ動き、自身の作品作りに集中する決断をしたのでした。
『スカーレット』88話あらすじ
マツは、変わらず声がでませんでした。お母さん合唱団でハリキリすぎたせいだそうです。200枚という枚数に驚く三津を助手に、さっそく喜美子は小皿の形作りに取り掛かります。
八郎はカフェ・サニーにて、初めて大野家のために作った茶碗を手に思いを巡らせています。すると大野が「実は2個割れちゃってな…」という話から、冗談でいくつも茶碗を頼むフリをしました。それを見て笑ってしまった八郎に、大野は笑顔を返します。
「よかった」
「声出して笑えるやん」
すっかり八郎は笑顔を取り戻したのでした。
カフェ・サニーへ柔道着姿の信作と照子が入ってきました。信作が負け越しているようであり、柔道で喜美子に勝てるのはまだまだ先になりそうです。
工房では、休み時間に喜美子と三津が言葉を交わしていました。八郎が「喜美子に横にいられるのはしんどい」といっていたことを話すと、喜美子は怪訝な表情です。
「うちはそんなこと感じたことないけどなあ」
「喜美子さんはそっち側の人間だからです」
喜美子はその日のうちに、小皿200枚の形づくりを終わらせました。
その夜、グローブを買いたいという武士に、喜美子は裁縫を教えました。
「靴下一足12円や」
『スカーレット』89話あらすじ
喜美子が三津に、土の練り方を教えていました。喜美子と三津は冗談をいい合える良好な関係です。美津が、八郎から深野先生の話を聞いたことをいうと、喜美子は寂しそうにつぶやきました。
「三津にはなんでも話すんやな」
「私も先生みたいな人を好きになりたいなぁ」
三津の一言が、喜美子の心を痛めます。
川原家にて、武士がグローブのために靴下を裁縫していたときの事です。電話が鳴り響きました。
カフェ・サニーにて。大野家総動員で川原家へ結婚の申し込みをしようとしていた時、こちらでも電話が鳴り響きました。百合子が出ると、なんと直子がお腹に子供ができてしまって川原家へ帰ってくるというのです。結婚の挨拶は先送りに。『信作、結婚のご挨拶が中々できない』の始まりでした。
鮫島を伴って返ってきた直子のお腹は本当に膨らんでいました。怒りたい気持ちをこらえ、喜美子は「おめでとう」と素直にいいます。
「子供のために、お金を用立ててほしい」
という直子でしたが、突然マツが何かを床に見つけたかと思うと、箒を振り回し、直子の顔をビンタします。直子がお腹から砂の袋を取り出しました。妊娠した、というのはお金をもらうためについた嘘だったのです。
『スカーレット』90話あらすじ
鮫島が頭をさげて、金をだまし取ろうとしたことを謝りました。しかし、喜美子たち3姉妹は大笑いです。
川原家女性陣が集まって縁側に座りました。食べるのは、イチゴです。楽しい思い出話をしていると、「ぁったなあ」とマツの声がやっと出て、喜美子たちは喜びました。マツはいいます。
「お金…なんぼ必要なん?」
たちまち喜美子や百合子まで、お金を出すといいだしました。しかし、最後に釘をさすことだけは、喜美子は忘れません。
「また騙すような小細工したら、二度と敷居またがせんからな」
直子は素直に謝りました。
陶芸研究所の柴田から、次世代展の結果の電話がかかってきました。結果は、落選です。なのに、喜美子はまったく落ち込みません。
八郎と三津は、東京下見について話し合っていました。一緒に行こうといってもつれない八郎に、三津は冗談で「先生の事、襲っちゃうかも」といいました。
鮫島は本気で直子と結婚する気でいました。マツは、「許しません。今は」と笑います。
落選の話をすると、八郎ががっかりします。八郎と「夫婦ノート」を再びつけることを約束した喜美子です。喜美子はふとそのノートに『新しい作品作る』『金賞受賞する』と書いたのでした。
『スカーレット』第91話あらすじ
喜美子が作品作りに取り掛かっていたところ、1か所12円の裁縫を終えた武士が、完成した靴下を持ってきました。喜美子は、繕いを雑さを厳しく叱ります。そこに照子がやってきました。
照子は夫の敏春と喧嘩して、泊まりにやってきたようです。実はすっかり恒例行事となっていました。やがて、敏春が描いた手紙を持って走ってやってきた信作も交えて、幼馴染の3人で夜を明かす飲み会が始まりました。
「(夫婦喧嘩)嘘やったんかい!」
「「結婚おめでとう、相手はだれや?」」
愉快な飲み会が始まります。
武士はマツと一緒に布団に入っていました。
「匂いが困んねん。すぐ眠くなってくる」
それは、マツが昔、よく幼い武士と一緒に寝ていたからでした。
喜美子たちは昔の話で盛り上がっていました。『今やからいうけど』大会が始まります。
「喜美子が描いた絵」
「ほんま、こいつすごいなぁ思うとった」
信作の言葉に思うところがあった喜美子は、旅のお供として連れて行った『信楽焼きの欠片』を2人に紹介しました。
次の日、目を覚ますと、テーブルの上に書き置きが残してありました。
『先、帰る。信作』
『スカーレット』第92話あらすじ
幼馴染飲み会を終え、喜美子や信作に心境の変化がありました。
信作からの電話を受けた百合子は、何やら落ち込んだ様子でした。布団の下に敷いた洗濯物を見て、百合子はいいます。
「明日もくしゃくしゃやったら、会社休もうかなあ」
カフェ・サニーで話がある、といわれて破談だと百合子は思ったのです
次の日の夕方、カフェ・サニー。しかし、信作の呼び出しはまったくの正反対な理由でした。
「結婚、多数決で決めてしまったやろ」
「そんな流れで結婚なんて、あかんなあ、思うて」
「結婚してください、結婚してください!」
正式なプロポーズの申し出だったのです。もちろん、百合子の答えはYESです。心配でやってきた三津と一緒に大喜びしました。
夜、武士が繕った靴下を持って喜美子の元へやってきました。今回はしっかり縫ってあって、喜美子もOKを出しました。
「お母ちゃんはできたん?」
「お父ちゃんに聞けばいいやん」
喜美子は首をふって聞かせます。
「これは、お母ちゃんの作品や」
一方、百合子はすっかり上機嫌でした。百合子が三津に「誰か気になる人いないの?」と聞くと、三津はすこしとまどってから「修行に来てるんですよ」と笑うのでした。
『スカーレット』第93話あらすじ
八郎が東京の下見から帰ってくる日がやってきました。八郎からの電話を受けた喜美子は、誰といるかを聞いてすっ飛んでいきます。
カフェ・サニーへ向かった喜美子を待ち受けていたのは、八郎と柴田、そしてジョージ富士川だったのです。ジョージ富士川は、「いつもこれで終わりや~思って作るんや」と笑います。
「でも、湧いてくんねん。ここが…」
胸を指さしたジョージ富士川を見て、喜美子がいいます。
「熱い…」
ジョージ富士川が喜美子が持っていた信楽焼きの欠片が見たい、と言い出したので、工房まで連れていくことになりました。
色合いを見て感動するジョージ富士川ですが、柴田がいうには作られた当時にとっては普通の焼き物でしかなかったはずだそうです。薪で焼く際の灰がかぶって、溶けたのだとか。
夜、八郎と喜美子は夫婦2人の時間を過ごしました。八郎はやはり和食器セットを個展に出すつもりのようです。
「団地見てきたで」
「あの灯りの向こうに、僕の和食器セットがあったらなあ。熱くなる瞬間や」
喜美子は信楽焼きの欠片を持って、いいます。
「いつかこの色をだして、頑張りぃって励ましてやりたい」
「熱くなる瞬間や…」
喜美子の目標が決まった瞬間でした。
『スカーレット』第94話あらすじ
電気釜がついに壊れてしまいました。修理に釜屋さんがやってきましたが、どうやら直せない様子。聞きつけた照子が敏春に話を通し、丸熊陶業の窯を借りることになりました。
その夜、ひそかに百合子が信作と電話を交わし、「会いたい、会いたい」合戦を始めます。こっそり見守っていたマツでしたが、あまりにも長すぎて、トイレに向かいます。帰ってきたマツに百合子は「知ってたの?」と聞きました。
「お母ちゃんの頃はな、恋文を飛行機に折って飛ばしてくれてた」
もちろん、マツは信作とのことを知っており、信作と百合子の結婚を認めてくれる様子でした。
八郎から喜美子へ提案がありました。薪で炊く窯を置こうというのです。次の日、喜美子はさっそく柴田に薪で炊く窯について聞きました。穴窯、というらしく、喜美子も小さいときに会っていた慶野川に聞くのが一番早いとのことです。
慶野川とカフェ・サニーで会うことになりました。しかし、やってきたのは慶野川の甥っ子でした。慶野川は亡くなっており、代わりに穴窯の設計図を持ってきてくれたというのです。
「穴窯は維持費が大変なんです」
「一回焼くごとに何十万…」
喜美子はお金の壁にぶち当たりました。
『スカーレット』第95話あらすじ
穴窯づくりを諦めかけていた喜美子へ、マツが貯めていたお金を差し出します。しかし、喜美子は今すぐ穴窯に取り掛かる気にはとてもとてもなれません。
八郎が喜美子を連れ出しました。「いつかはやる」という喜美子に、八郎は自身の体験を交えて話します。
「深野先生の絵を売ったのが、終戦から二年後や」
「喜美子…いつか、なんていってたらいつ戦争起こるかわからんで」
八郎の個展は無事、大成功とはいわずとも、成功に終わりました。佐久間が「もっと上目指さな!」という一方、柴田は「ハチさんが熱なる瞬間は、今は和食器セットなんや」と笑顔を見せます。
百合子はカフェ・サニーにて、結婚挨拶の待ち合わせをしていました。が、信作が全治二か月の大怪我をしてしまい、またもや先延ばしです。
帰ってきた直子がマツのお金を穴窯に使うことに激怒していました。しかし、いうことだけいうとすっきりした様子で30秒で笑顔で帰ってきました。
そして、ついに畑を潰し、穴窯作りが開始されるのでした。
『スカーレット』第96話あらすじ
半年をかけ、ついに穴窯が完成しました。その夜は、柴田や佐久間、大野や敏春まで集まって大祝いです。
穴窯で焼くには、3日を目標に1200度まで穴窯の中を上昇させなければなりません。その間、一度も火を消さぬよう、火の番をしなければなりません。最初は、喜美子が1人でやる、といいましたが、八郎が止めます。八郎と交代で火の番をすることになりました。
3日が立ちました。しかし、1200度まで達していません。幸い、その場合の薪も用意してありますが、このまま続けて1200度まで本当にあがるのか、と喜美子の中で迷いが生まれます。
「…続ける。ここで諦めるわけにはいかへん」
4日目。やっぱり1200度まで到達しませんでした。5日目の朝になっても1200度に到達しません。喜美子は迷い、工房で仮眠をとっている八郎の元へどうするべきか聞きに行きます。しかし、工房へ行くと、眠る八郎の上にかぶさるように、三津が寝ているのを発見してしまいました。
喜美子は一人で窯の前へ戻ると、迷いましたが再び残り少ない薪をくべはじめるのでした。
『スカーレット』第97話あらすじ
喜美子はふと小さな頃の風呂を沸かしていた経験を思い出します。『薪を細くすれば強く燃えあがるんじゃないか』と実践し、ついに1200度を達成しました。
工房では、三津が眠っている八郎の顔に顔を近づけ、その最中に八郎が目を覚ましてしまってきまずい空気が流れます。しかし、八郎は優しく大学時代のことを話し、穴窯の元へ。すると、缶ぽっくりの修行をする鮫島と、それを教える喜美子と武士の姿がありました。なんと鮫島は、直子にプロポーズをし、「缶ぽっくりもできない男となんて結婚できない」といわれてしまったそうです。そしてついに、缶ぽっくりを習得し、電話でOKをもらった鮫島でした。
三津が八郎の弟子を辞める、といいました。「穴窯なんて時代に逆行しています」と心にもなさそうなことを理由にする三津に、釉薬の配合が書いてあるノートを渡します。
「いままでどこの工房にいった時も、思わなかったんですけど」
「男にうまれればよかったな…」
喜美子らは、それが八郎への片思いのことだとわかりました。三津はこうして、八郎の弟子を辞めたのでした。
ついに、穴窯作品が焼きあがりました。しかし、望んだ色には焼きあがっていませんでした。
『スカーレット』第98話あらすじ
喜美子が穴窯の失敗の原因を考えていると、工房に漢字の宿題をやりに武士がやってきました。どうやら、照子の娘の芽ぐみに「女と男の違いをわかっとけ」と少女漫画を渡され、その勉強の結果、喜美子を慰めにやってきたようです。
「ありがとうな」
アカマツにて、佐久間が「奥さんに穴窯を任せない方がいい」と八郎に提案していました。たとえ、うまく焼けても売れないだろう、というのです。理由は2つ。川原喜美子が無名だということ、陶芸の世界にまだまだ女は進出してきていない、ということです。新聞にも、喜美子が取り組んでいることなのに、八郎のことしか書かれていません。
喜美子が使用した薪は、420束、しめて15万円にものぼりました。次はもっと予備を用意して、25万円ほどかかる予定です。「喜美子…ええかな」八郎が喜美子に、「穴窯は後にして、別の作品を作るべきだ」と提案します。借金してでもやる、といいはる喜美子なのでした。
『スカーレット』第99話あらすじ
マツが電話をしていました。ミシンを借りて、子供服の内職を始めるつもりだそうです。
「40万かかったで」
そういっても、マツは笑顔で「お父ちゃんで慣れてるさかい」と笑うだけでした。
八郎が穴窯へやってきます。喜美子と八郎の話し合いの結果、喜美子は穴窯を一旦あきらめることにしたそうです。しかし、喜美子はその話を他の誰にもしていなかったのです。
「なんでいわへん?」
「やめるいうたんは、ハチさんやろ。ハチさんがいうたら」
仕方なく穴窯での制作を中止することにした喜美子でしたが、心の中は穴窯をやりたくてやりたくて仕方がないのでした。
信作と百合子が結婚の挨拶にやってきました。まさか信作と百合子がそんな仲だと知らなかった喜美子は、事実を知って驚き、そして泣いていました。喜美子は笑顔で、2人の結婚を認めたのでした。
そんな2人を見て、『今だから言うけど大会』をしようと喜美子は八郎に持ちかけます。喜美子の番が回ってきて、「穴窯やりたい。次こそ成功させる」といいました。
「いい加減にせえよ!」
「もう一回だけでええから」
「武士連れて出ていくわ…」
本当に八郎は、武士を連れて出ていってしまったのでした。
『スカーレット』第100話あらすじ
喜美子は、八郎や武士が出ていったことでむしろ穴窯の下準備・薪拾いに集中していました。八郎らを迎えに行こうとしない喜美子を照子が責めます。目を覚ませ、と。一旦穴窯はあきらめろ、と。
「ハチさんがいなければ、いちいち穴窯していいか確認せんで済む」
照子の言葉は届きません。
照子の元へ行っていた武士が帰ってきました。武士は、冬休みに動物園に行きたいと盛り上がっています。喜美子は、穴窯が成功したら、八郎を迎いに行くことと、動物園にいくことを約束しました。
穴窯3回目に挑戦し、失敗しました。火の流れや作品の置き方を変えたのですが、思った色がでません。
喜美子は動物園の約束が叶えられないことに後悔していました。と、百合子が喜美子を呼びます。「穴窯も終わったし、ハチさんに会おう」という百合子に「失敗したんやで」と喜美子は首を横に振ります。大阪の動物園の入場券を2枚喜美子に渡してくれました。信作が気をつかって買ってくれたのでした。(ちなみに、信作と百合子は互いのことをポパイ、オリーブと呼び合っているそう)
大阪に行き、喜美子と武士は動物園を満喫しました。泊まるビルへ向かうと、扉からでてきたのはちや子でした。
『スカーレット』第101話あらすじ
ちや子と再会を果たし、部屋へと入った喜美子は、子供連れの何組かの女性も含めてみんなで「メリークリスマス」の乾杯をします。現在ちや子は、地域活動に取り組みながら、記事や本の執筆に勤しんでいるようでした。
一方、八郎は喜美子がいない間に川原家を訪れていました。
「喜美子とも、そのうちゆっくり話しよう思ってます」
すっかり夜になる頃、喜美子はお酒で軽く酔っていました。ちや子が何かあったことを察し、相談にのります。ちや子に時間潰しにと紙とペンを渡されます。ちや子はこれから政治家に取材にいかなければいけないようです。取材に向かう準備をしながら、荒木荘の面々について話してくれました。さだは京都の服飾学校で校長先生をしているそうです。大久保は変わらず、家事仕事の仕事に取り組んでいるようです。そこまで話して、「ああ、忘れるとこやった」とちや子はラジオを取り出します。
「10時になったら聞くんやで?」
そのラジオのゲストとして登場していた人物は、まさかの元荒木荘の住人、信楽太郎こと雄太郎だったのでした。
『スカーレット』第102話あらすじ
ラジオから信楽太郎こと、雄太郎の声が聞こえて驚く喜美子です。そして彼が歌う楽曲の歌詞から、ふと彼女は自分と八郎と武士の境遇に重ね合わせていました。そして、描いていた親子1人ずつだけの絵に、もう1人の人間を描き足します。
ちや子は今、フリーランス記者として働いているようです。色恋沙汰もない、とちや子は説明しました。
「うちいっつもズボンやろ?」
「色恋沙汰はスカートみたいなもんや」
話は、雄太郎が役者ではなく、歌手として活躍していることについてに切り替わります。曲に感動した、と話す喜美子です。と、「ほんま?」と背後から声が聞こえ、振り返ると雄太郎と大久保がいました。
再会の喜びで盛り上がっていると、「いつか売れたら、テレビジョンやオート三輪買ったる」っていっていたよな、と雄太郎が切り出し、なんと封筒パンパンに入った大金を渡してきました。喜美子は、もらえません、といいながらも周りに後押しされ、大金を受け取ります。大久保が笑っていいました。
「陶芸やってるんやろ?」
「家のことできる女は、なんでもできる」
喜美子は信楽へ帰り、マツ、そして穴窯にこういうのでした。
「ただいま」
『スカーレット』第103話あらすじ
喜美子は借金をする決断をしました。喜美子は武士と向き合います。
「お父ちゃんのいるところと、お母ちゃんのいるところ、どっちも武士の居場所やからな」
喜美子は、4回目、5回目、6回目と置く場所を変えたり、煙突の穴を小さくしたり、土の配合を変えてみたりと様々な工夫をした結果、望みの色を出す方法に検討がつくようになっていきました。
しかし、7回目。その方法を試すには、お金が足りていませんでした。さらに八郎と離れて暮らしていることが知れ渡り、喜美子に仕事が回ってこなくなってしまいます。そこへ注文を持ってやってきたのが、橘でした。喜美子は喜んで、絵付け小皿500枚の注文を受けます。
カフェサニーにて、野球をしてきた八郎と武士が夕ご飯を食べにやってきました。どうやら、陽子が手術が必要な病気になったらしく、今は手術を終えて入院中だそうです。
柴田がカフェサニーに訪れ、八郎にいいました。
「ここにおっても息苦しいだけやで。…信楽離れ?」
京都行きを勧めてきたのです。
眠ってしまった武士を背負って川原家へやってきた八郎を出迎えたのは、喜美子です。笑顔で言葉を交わす夫婦の元へ、1人の人物がやってきました。
「草間さん!」
『スカーレット』第104話あらすじ
川原家に草間がやってきました。草間がやってきた経緯を「マツさんに手紙をもらったんだ」と説明します。草間は台湾の会社を引き払って、神戸へ戻ってきたそうです。八郎は簡単な挨拶だけ済ませて川原家を去ってしまいました。
喜美子は穴窯について失敗を繰り返して立てた仮説を、草間に説明しました。2週間しっかり焼かなければあの色は出ない、という結論に至ったのです。
「窯が…崩れ落ちるかもしれません」
事実、次が窯焼き最後のチャンスなのです。
草間は、そんな喜美子を見て安心したようです。立ち去り際、喜美子にタヌキの焼き物を渡しました。慶野川が信楽を立つ草間に託した、小さなタヌキの焼き物です。
「慶野川さん初めて会った時、土を持ってた」
草間はさらにそういい残しました。喜美子は慶野川が掘っていた場所から土を掘り、自分の作品にしようと決断します。
無事、百合子と信作は結婚写真を撮ることを完了し、川原家は大盛り上がりです。
喜美子は、2週間の窯焼きにあたり、信作や鮫島たちの力も借りることを決断していました。八郎はいいます。
「1150度で2週間炊き続けたら、崩れるで?」
「僕にとって、喜美子は女や。危ないことやらんでほしい」
『スカーレット』第105話あらすじ
喜美子の答えは今更変わるわけがありませんでした。
「ハチさんに出会って、うちはほんまに幸せです」
「幸せやから…うちは陶芸家になります」
ついに7回目の挑戦です。家族総出となった火入れの日、「借金まみれらしいなあ」と話しますが、みな借金まみれとは思えないほど穏やかな表情でした。鮫島、直子、マツ、百合子、信作と、交代で火の番をしていきます。信作と喜美子が幼馴染トークを繰り広げていると、そこへ照子と敏春がやってきました。照子は喜美子の挑戦を認めていないそうですが、差し入れを持ってやってきたようです。
2週間目がやってきて、その夜のことです。
「火事や!消すでぇ!」
穴窯の頂点から火が噴き出たのです。しかし、水を持って駆け付けてきたマツを、喜美子は何かに取りつかれたように止めました。
「もっと、もっと燃やすんや!」
喜美子は火が噴き出た穴をふさぎ、もっと薪を穴窯の中に放り込みます。
次の日の朝。穴窯をあけると、夢の色がついた作品たちの姿がありました。喜美子はちや子に「記事にしてください」と手紙を書きました。
…7年後。喜美子は自然釉の作品が代名詞の有名な陶芸家となり、武士は高校生になっていました。
『スカーレット』第106話あらすじ
武士が学校から帰ってきて、マツも含めた3人でお茶の間を囲っていると、マツが「めでたしめでたしの話してくれる?」といいました。
「穴窯が成功して、ちや子さんが記事にとりあげてくれました」
「作品がどんどん売れました。借金もなくなり、テレビジョン買うことができました」
マツは夢枕で「でかした、喜美子~!」と喜ぶ常治の姿を見たそうです。しかし、マツはもう一度いいます。
「なあ、『めでたしめでたしの話』してくれる?」
川原家には、八郎の姿がありません。
「大学に行かないの?」と喜美子に聞かれ、武士は「行って何するん?」と答えます。
信作と百合子には2人の娘が生まれていました。信作がやってきました。謎の封筒を「『ピンクフィーバーズ』の水着写真や!」とうっかりいいながら、武士に託します。
マツがツアーから帰ってきました。「昔と変わってたなあ」とマツは常治の思い出話をします。
「家訓の『女に学問はいらん、間違いだったなあ』っていってたんよ」
「武志は、武志の好きにしたらええ」
電動ろくろを見つめる武士の後ろ姿に、喜美子は「やる?」と問いかけます。「やる」とうなずき、武士は電動ろくろを回し始めたのでした。
『スカーレット』第107話あらすじ
「陶芸楽しいな!」と話す武士に、喜美子は「陶芸やりたい思うてんの?」と聞きました。武士はテレビジョンが来た日の話をします。
「お母ちゃんが来て、『武士、来たで…やっと来たで!』って」
「…お父ちゃんやと、思ったんや」
喜美子と八郎は、武士の知らぬ間に離婚していたのです。
「お母ちゃんは、陶芸家として成功した。代わりに…本当に大事なもん失った」
「そこまでして、陶芸家やっていけるかわからん」
八郎は穴窯作品がついに成功した日、成功した作品を眺めながら泣き出しそうな顔でつったっていました。何もいわずに…。
「すごいな すごいな すごいな 喜美子」
夫婦ノートにそう書き残して、京都へ行ったのです。
喜美子の何回目かの個展会場にて、受付の芳名帳に八郎の名前がありました。
『十代田八郎』
川原、じゃなかったのです。喜美子は離婚届を八郎に送ります。
仲良しの友達2人組とビリヤード場で遊んでいても、武士の顔は優れません。武士は家に帰ると、信作から受け取っていた封筒を開けました。それは、八郎からの手紙だったのです。
武士は八郎の職場に電話をかけました。でてくれた5年ぶりの八郎の声に、武士は顔をほころばせたのでした。
『スカーレット』第108話あらすじ
武士がご飯も食べずに出かけてしまい、喜美子は不思議がります。カフェ・サニーにて、「そういえばいつも信作が封筒持ってくるんやけどなあ」と相談する喜美子でしたが、大野夫妻は「思春期や。そっとしとき」と返してきます。
武士が帰ってくると、武士は進路について心を決めたそうでした。「おれ、死に物狂いで勉強して、京都の美術大学に行く。そんで…陶芸家になる」武士は、本当に死の物狂いで勉強をする日々を開始したのでした。
一年がたち、武士の受験結果発表の日がやってきました。結果は…見事合格です。マツも含めた3人で大盛り上がり。その夜、喜美子は武士に質問しました。
「報告したんか?」
「何回か電話もしてたやろ」
どうやら、喜美子は武士がひそかに八郎と会っていたことを見抜いていたようでした。武士は八郎と手紙のやりとりを五年間ずっとしていたこと、八郎と会っても、五年前と同じ感じで話すことができたことを話しました。
「どうして、五年前と同じ感じで話すことができるんや?」
「いつも手紙の最後に、『いつか会いたい』って書いてたんや」
喜美子は、『大事なものを失ったんだ』と実感してしまったのでした。
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