ちょっとした仕草を見逃すな。とびっきりの推理力と読心術で犯人を追い詰めるメンタリスト、ジェーンの物語「THE MENTALIST」はアメリカで2008年~2015年まで放送されていた連続推理ドラマです。このドラマの特徴は、主人公のメンタリストがその類まれなる洞察力と人の心理を操る言動によって事件を解決していくところにあります。
メンタリストとは?
メンタリストと言うと何を思い浮かべるでしょうか?
このドラマの中で、メンタリストとは、Someone who uses mental acuity, hypothesis and / or suggestion. A master manipulator of thoughts and behavior.”(「人の心を読み取り、思考と行動を操る者」)と説明されています。
その人がどうしてそのような行動をしているのか、残った痕跡から、その人物がどんな環境にいたのかまで推察してしまうのが、このジェーンのすごいところです。
ジェーンはその類まれなる推理力と洞察力から凶悪犯罪を調査するカリフォルニア州捜査局(California Bureau of Investigation)でコンサルタントとして、事件解決の手助けをしています。難事件をわずかな手がかりを基に解決していくのです。
シャーロック・ホームズの洞察力+ポワロ(ポアロ)の心理術=パトリック・ジェーン?
シャーロック・ホームズの推理力
その洞察力は、コナン・ドイルが生み出した名探偵シャーロック・ホームズを彷彿とさせます。
シャーロック・ホームズの洞察力と言えば、後に相棒となるワトソンに初めて会った時、挨拶を交わし、握手をしただけで、ワトソンがアフガニスタンにいたことがあることを当てます。
ワトソンは医師で、軍人風の色黒紳士でした。しかも、焼けていない部分を見ると色白であることから、黒く焼ける地域に暮らしていたということになります。さらにワトソンは憔悴し、辛酸をなめたような顔で、しかも腕を負傷までしています。
そうなると、当時イギリスが戦っていたアフガニスタンに軍医として赴任していたのではないかとホームズは推理したわけです。
このような推察をジェーンも行います。例えば、死んだ女の子の部屋にあった破れた写真、写真がHの文字を形成していること、ポスターを長期間貼ってあったことによる壁の日焼けなどから、女の子には彼氏がおり、そのイニシャルがHであることなどを判断します(シーズン1 第2話 Red hair & silver tape)。
正しくホームズ顔負けの名推理です。
エルキュール・ポワロの心理術
ジェーンの物証からの推察が、ホームズの系譜を継いでいるとしたら、彼の心理術はポワロの系譜を継いでいると言ってもよいかもしれません。
エルキュール・ポワロはミステリーの女王アガサ・クリスティが生み出した名探偵です。彼女の時代にはもうシャーロック・ホームズという名探偵が生まれ、人々に愛されていたこともあり、優れた洞察力で事件を推察していくのとは違ったタイプの名探偵を生み出す必要がありました。そこで出てきたのがこのポワロなのです。
ポワロは、現場の状況、殺人の仕方などから、犯人像を特定します。今でいう、性格のプロファイリングです。例えば『ひらいたトランプ』では、犯人を特定するために、ブリッジというカードゲームの結果やそれぞれを観察してその心理を読み解きます。
ジェーンも、犯人の残した物、容疑者との会話から犯人を特定していきます。
それって捜査に使って大丈夫?コールド・リーディングによる心理操作
ジェーンはコールド・リーディングという手法をよく使います。日本ではメンタリストというとおそらくDaiGoさんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
DaiGoさんはTV番組などで、数枚のカードの中から相手がどのカードを取るかを当てるという企画などに出ていますよね。
この時に、DaiGoさんが行っていることの1つがマインド・リーディングです(実はDaiGoさん自身も、このドラマが大のお気に入りらしく、SPサポーターを務めていました)。
マインド・リーディングとは、相手の行動やしぐさ、表情などを読むことで、自分が相手のことを知っていると思わせることもできるというようなものです。ただし、使っている人や、団体によって少しずつ定義が違っているようです。
相手のちょっとした癖、話し方、行動の傾向から相手が何を考えているかを読んだり、相手の行動を促したりするのです。おそらく犯人であろうと思われる人物に罠を仕掛けるのもジェーンのおてのもの。面白いくらいに犯人や、時にはCBIの同僚までひっかけてしまいます。
さらに、この行動が観ている側のミスリーディングを誘い、犯人を推測する邪魔をします。「今回こそ、この人が犯人だ!」と思っていても、実際に犯人がわかると、「え!!この人なの?」と驚かされることがたびたびあります。これこそ、THE MENTALISTの醍醐味です。
おまけ:そもそも人の心は本当に読めるの?
出典:よく、人間の左の顔には本音が出てしまいやすいという話を聞くかと思います。「人間の脳は左脳に言語中枢や計算、思考機能が、右脳に空間把握や音楽、芸術的な機能がある」「左脳が右の顔を、右脳が左の顔を支配しているため、右脳に支配されている左の顔には本音が出ている」など聞いたことがある方もいるかもしれません。
さらに嘘をつく時は、目が右上に行くとかそんなことまで言われておりますが、実際に科学的に検証をしてみると、これを実証する結果はついてきません。
そもそも「左の顔こそ真実の顔」という話は、ハロルド・サッカイムがポール・エクマンの作った顔表情の左半分、右半分を切り取り、それぞれ鏡の様に反転させ、左の表情だけでできた顔、右の表情だけでできたものを参加者に見せると、喜び以外の表情、恐怖、驚き、怒り、悲しみ、嫌悪の表情は、より左の表情だけでできた顔から読み取れる結果となったことから、この「左側の顔=本当の顔」節が広がったと言われています(Ekman, 1992)。
エクマンはこれに対し、自らの作成した顔表情が喜び以外モデルに頼んで随意的に作成したものであり、本当の感情が現れているとするのはおかしいと反論しています。エクマンはそもそも、不随意的な表情には左右差が無いとしており、サッカイムとは全く反対の主張をしているのです。
「嘘をついている時、人は右上を見る」とも言われますが、これも実証されているわけではありません。例えば、ある人の嘘を見抜くことができるとすれば、それはおそらくその人の家族や友人など、その人とたびたび行動を一緒にしている人でしょう。
「ある人は嘘をつく時ある特定の行動をする」というのはよくあることです。例えば、嘘をついている時「鼻を触る」や「興味がない時、左手を見る」など、ある人がある行動をする時によくする癖というのはあります。しかし、それが万人に共通するかというと、必ずしもそうではないのです。
そうしたことを考えると、THE MENTALISTの主人公ジェーンは人の心を読むというよりも、読んでいる、わかっていると思わせることで、犯人の心理を操り、行動をさせるといった方が正しいかもしれません。
ジェーンの追うシリアルキラー「レッド・ジョン」
THE MENTALISTは基本的に1話解決です。そのため、どこからでも観ることができますし、途中から観ても楽しめる作りとなっています。しかしながら、SEASON1の第1話から観ることをお勧めします。
それは、ジェーンの天敵とも言うべきシリアルキラー「レッド・ジョン」が存在しているためです。レッド・ジョンはジェーンの妻子を殺した憎むべき連続殺人鬼です。
1話ずつ事件を解決しながら、彼を追い、彼が誰かを突き止めていきます。毎回の犯人を推測しながら、レッド・ジョンの正体をジェーンと一緒に考えることで、このドラマの楽しさは何倍にもなることでしょう。
主人公ジェーンを演じるサイモン・ベイカー
主人公のジェーンを演じるのは、サイモン・ベイカーです。オーストラリア出身の俳優さんで、たれ目のイケメンです。笑顔が大変魅力的で、笑うと、くしゃっとした皺ができます。
彼はドラマだけでなく、映画にもいくつか出演しています。『LAコンフィデンシャル』や『レッドプラネット』などにも出ていますが、なにより、『プラダを着た悪魔』の主役が憧れていたプレイボーイのコラムニスト役が印象的です。あの持ち前の色気を、本作でも遺憾なく発揮しています。
どこで観られるの?
THE MENTALISTはファイナルシーズンまですでにDVD化されています。
また、多くの動画配信サイトで配信中です。Amazon Prime Video(Amazonプライムビデオ)、U-NEXT、Hulu、dTVなどで観ることが可能です。
ぜひジェーンと一緒に犯人を推理し、レッド・ジョンを追いかけていってください。
参考元
- ・参照リンク:THE MENTALIST/メンタリスト|ワーナー海外ドラマ 公式サイト
- ・参照リンク:“メンタリスト”DaiGoが影響を受けた米ドラマのSPサポーターに就任 | ORICON NEWS
- ・コナン・ドイル(1953)『緋色の研究』新潮文庫
- ・アガサ・クリスティ(2003) 『ひらいたトランプ』早川文庫
- ・Paul Ekman (1992) 『暴かれる嘘』誠信書房
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