映画『名探偵コナン 絶海の探偵』の舞台はスパイが潜むイージス艦！　キャスト・見どころをネタバレありで解説

映画『名探偵コナン 絶海の探偵（プライベート・アイ）』はどんな映画？

劇場版『名探偵コナン』第17作のタイトル『絶海の探偵』は「ぜっかいのプライベート・アイ」と読みます。陸から離れた遠海にいる、どんな微弱な信号も捉える「海の名探偵」イージス艦、そしてその艦上にいるコナン。そのどちらをも指すのかと想像させるタイトルです。

最新鋭の艦艇、その中に潜み機密を奪おうとするスパイ、艦内で発見される人間の左腕。『名探偵コナン 絶海の探偵』はスパイと左腕の謎をコナンが追う艦上ミステリーです。

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』作品情報

『名探偵コナン 絶海の探偵』の制作スタッフとデータをご紹介します。

監督：静野孔文
脚本：櫻井武晴
原作：青山剛昌
音楽：大野克夫
撮影：西山仁
編集：岡田輝満
制作：トムス・エンタテインメント
公開：2013年4月20日
上映時間：110分

劇場版でスパイを扱うはじめての作品となる『名探偵コナン 絶海の探偵』の脚本は、アニメ作品初挑戦の櫻井武晴です。櫻井はテレビドラマ『相棒』や『ATARU』などのミステリーの秀作を手がけた脚本家。『名探偵コナン』でもサスペンスフルなミステリーを書き上げました。

また、警察や消防はたびたび登場する『名探偵コナン』ですが、陸海空通じて自衛隊の登場は作品史上初。国家機密や国外からのスパイなど、登場するファクターのスケールも大きい作品となりました。

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ　※一部ネタバレあり

『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ①：イージス艦「ほたか」体験航海とコナンの腕時計

ある早朝、舞鶴湾で不審船が発見されました。同じ日、コナンは毛利小五郎・蘭の父娘と蘭の同級生・鈴木園子、コナンの同級生の小嶋元太、円谷光彦、吉田歩美らとともに、海上自衛隊のイージス艦「ほたか」の体験航海のため、舞鶴港を訪れます。

しかし近辺で不審船が発見されたとのことで、「ほたか」乗艦の際のボディチェックが厳しくなり、携帯電話が持ち込めなくなってしまいます。けれどもコナンは阿笠博士が新しく機能を追加した腕時計をつけていました。

新しい腕時計は麻酔銃だけでなく、衛星電波を使った電話機能があります。携帯電話は一時預かりになりましたが、腕時計は見逃されてつけたままで「ほたか」に乗り込みます。

『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ②：対空対潜戦闘訓練を見学

井上航海長の案内で体験航海の参加者は「ほたか」艦内のCIC(戦闘指揮所)で対空対潜戦闘の訓練の様子を見学します。通常の訓練展示と参加者らは思っていますが、途中からは不意に接近してきた「味方に属さない潜水物」を対潜弾で撃破するという訓練ではない部分が含まれていたことにコナンは気づきます。

しかし、すべてが状況を想定した訓練だったと航海長は取りつくろい、また、「味方に属さない潜水物」は潮によって流されてきた廃船だったため、大きな混乱には至りませんでした。

戦闘訓練の後、甲板の見学に出たコナンは1人の少年に声をかけます。少年は戦闘訓練の見学中に付き添いもなく1人でいたので、気になっていたのです。少年は名を雨宮勇気と言い、甲板上では父親と一緒にいたので、はぐれた父親と再会できたのだとコナンは思いました。

『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ③：謎の女性自衛官、藤井七海一等海佐

同じく甲板の見学中に、コナンは女性自衛官を見つけます。イージス艦には女性自衛官は乗り組んだ例がないことを知っているコナンは彼女に声をかけました。彼女は名を藤井七海と言い、職種をたずねると「乗員の食事をつくっている」と答えましたが、彼女の階級章は一等海佐を表していました。一等海佐と言えば艦長クラスの階級です。

不審に思ったコナンは記念写真を装って藤井一佐の写真を撮り、国際科学フォーラムに出席するため大阪に滞在中の阿笠博士と灰原にそれ送って、彼女の本当の所属先を調べるよう依頼しました。

同時に、自分でも艦内で調査をはじめようとしますが、コナンは蘭に単独行動をとがめられ、行動をともにすることになります。その先で、艦の注排水口のフィルターから人間の左腕が回収された現場に出くわしました。

『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ④：「あの国」のスパイ「X」

これを事件とみた蘭は毛利小五郎の名を出し、捜査協力を申し出ます。その一方でコナンは回収された腕がつけていた服の袖の階級章から二等海尉だと見て取り、腕時計の衛星電話で大阪の服部平次に連絡を取り、舞鶴近辺の捜査を依頼しました。

しかし、衛星電波を発していることがどうやらイージス艦内で把握されているらしく、コナンは「ほたか」乗員に通信を見つかりそうになってしまいます。その乗員らの会話から海上自衛隊が「X(エックス)」と呼ぶスパイが存在することを知りました。

大阪からバイクで遠山和葉とともに舞鶴へ向かう平次は、その途上の若狭湾で左腕がちぎれた海上自衛官の遺体が発見された現場に出会います。残った腕の階級章を見ると二等海尉。コナンから捜査依頼があった人物とわかった平次は名札を確認し、彼が笹浦だとわかりました。笹浦の遺体には赤い付着物がありました。

『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ⑤：警察・海上保安官がイージス艦に到着

イージス艦「ほたか」に到着したヘリコプターには警視庁の目暮、佐藤、高木の3人の刑事と、倉田、宗川の2人の海上保安官が乗っていました。警察、海上保安庁の面々は海上自衛隊と協力して捜査に当たろうとしますが、海上自衛官たちは何かを隠している様子で非協力的です。特に藤井一佐はかたくなな素振りでした。

艦内の捜査上で笹浦の携帯電話が発見されます。佐藤刑事が確認したところ、SDカードが抜き去られていました。笹浦がイージス艦の重要機密をデータコピーしていたことが明らかになります。

その後、無人の艦長室に忍び込む藤井を見かけたコナンは、藤井が扱った後のパソコンから、彼女が閲覧していたデータを入手しました。そのデータを衛星電話で阿笠博士らに転送。電波をイージス艦に捕捉させることで捜査に関わる警察官・海上保安官・海上自衛官らを艦長室に呼び寄せ、暗に活動していた藤井と鉢合わせさせます。

『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ⑥：藤井七海一等海佐の正体

藤井一佐は不審な行動を追及され、ようやく身分を明かします。藤井一佐は海上自衛隊の情報保全隊に所属していて、「ある国」のスパイである「X」を追って「ほたか」に乗艦していたのです。殺害された笹浦は藤井と同じ情報保全隊所属でした。

海上自衛隊若狭基地からイージス艦の機密データが流出していて、藤井一佐らはその捜査をしているところでした。竹川という男が代表を務め、数年前に活動を休止したという興信所を何者かが買い取り、竹川になりすましてスパイ活動をしていて、そこに笹浦が機密データを流していたのです。

『名探偵コナン 絶海の探偵』あらすじ⑦：犯人はスパイ「X」？

そんな折りにすぐ近くに不審船が発見され、船内からは「あの国」の機材や、自爆用の爆弾が出てきたとなると、竹川と同じ「あの国」のスパイが日本に上陸したと考えられます。イージス艦のデータが他国に渡ったら国防の危機です。笹浦が乗艦を手引きしたと考えられる「X」を何としても確保しなければなりません。

スパイ「X」はどこに潜んでいるのか。笹浦二尉を殺害したのは「X」なのか。沖に出た1隻のイージス艦の中で、コナンは日本を危機から救うことができるのでしょうか。

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』の登場人物　※一部ネタバレあり

ここでは『名探偵コナン 絶海の探偵』に登場する主なキャラクターについて、簡単に解説します。舞台となるのはほとんどが1隻の艦艇の中と限られた空間ですが、登場する人数は多いので、ここで確認して映画をご覧頂ければと思います。

メインキャラクター

『名探偵コナン』のメインストーリーに関わる人々です。テレビシリーズのレギュラーおよびセミレギュラーのおなじみの人物たちですが、簡単にご紹介します。

江戸川コナン

ご存じ『名探偵コナン』の主人公。正体は高校生探偵・工藤新一。黒の組織が開発した薬で身体を小さくされて、江戸川コナンとして生活しています。

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では、なかなか手に入らないイージス艦「ほたか」の体験航海参加券が当たった蘭や小五郎、園子、少年探偵団と一緒に「ほたか」乗艦のため、京都の舞鶴港を訪れます。

重要機密の塊とも言えるイージス艦の中で、またもや事件に遭遇するコナン。阿笠博士が新機能を追加した腕時計とともに、事件に立ち向かいます。

毛利蘭

工藤新一の幼なじみの高校2年生。世間では「名探偵」で通る毛利小五郎の娘です。本作『名探偵コナン 絶海の探偵』ではめったに手に入らないイージス艦の体験航海参加券を持ち前の幸運で手に入れて、コナンや小五郎、園子らとともにイージス艦「ほたか」に乗艦します。

終盤ではある理由で行方がわからなくなってしまいますが、新一だった頃に「安心しろ、オメーの一人や二人、どこにいたって見つけ出してやっからさ」と約束した通り、コナンが知恵を振り絞って彼女を捜索します。果たして蘭は無事に発見されるでしょうか。

毛利小五郎

「眠りの小五郎」と呼ばれる私立探偵。世間には「名探偵」と思われていますが、それはコナンが麻酔銃で小五郎を眠らせて、変声機を使って小五郎の声で推理をして事件解決に導いているから。けれども小五郎自身はそれを自分の功績と思っています。

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では劇場版『名探偵コナン』第2作『14番目の標的』以来の「眠りの小五郎」の登場で活躍(？)します。また、本作で新調した名刺を初披露。

「どんな事件現場でも目立つように」とド派手にデザインされた名刺は、その派手さが終盤に訪れる大ピンチを脱するキーとなっています。一度はこの名刺に足元をすくわれてしまったコナンが一転して感謝を示す場面も。

阿笠博士

工藤家の隣家に住む発明家。コナンの正体を知る数少ない人物の1人でもあります。本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では「国際科学フォーラム」に出席するため大阪にいて、コナンらとは別行動です。

それにもかかわらず、阿笠博士はわざわざコナンに電話で連絡を取り、コナン越しに少年探偵団にクイズを出します。阿笠博士のダジャレクイズは劇場版恒例のもの。今回のクイズはイージス艦の「イージス(神の楯)」にちなんだ問題です。

少年探偵団(小嶋元太／円谷光彦／吉田歩美)

小学校に通うコナンの同級生3人組。コナンや灰原哀をも仲間に「少年探偵団」を名乗っています。本作『名探偵コナン 絶海の探偵』ではコナンと一緒にイージス艦の体験航海に参加。光彦が蘭に貸した電波時計が重要なアイテムとなります。

灰原哀

もとは黒の組織での科学者で、コードネームはシェリー。自らが開発した薬を飲んで身体が縮み、現在は「灰原哀」を名乗り、コナンと同じように小学生として生活しています。

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では阿笠博士と一緒に大阪に滞在。イージス艦内のコナンからの依頼でさまざまな情報をコンピュータを使って解析します。

鈴木園子

蘭の同級生で鈴木財閥令嬢。たびたびめずらしい催しに財閥のコネクションで顔を出しますが、本作『名探偵コナン 絶海の探偵』のイージス艦体験航海は蘭が自らの幸運で抽選に当たったもの。鈴木財閥の影響ではありません。

園子はイージス艦「ほたか」乗艦の際にジャンパーを着ています。その背中には「JMSDF」という文字と「桜に錨(いかり)」のマークが入っています。「JMSDF」とはJapan Maritime Self-Defense Force、海上自衛隊のこと。「桜に錨」は海上自衛隊のマークです。

服部平次

「東の工藤、西の服部」と、工藤新一と並び称される高校生探偵。コナンの正体を知る者でもあります。本作『名探偵コナン 絶海の探偵』ではイージス艦上のコナンからの依頼を受け、京都や関西国際空港に捜査に出向きます。

遠山和葉

平次の幼なじみで同級生。コナンから電話で捜査を依頼された平次とともにバイクで京都へ向かい、のちに阿笠博士らと合流します。平次と和葉、阿笠博士、灰原の4人で行動しますが、このうちコナンの正体が新一であることを知らないのは和葉だけです。

また、灰原の正体も知らないので、阿笠博士の「哀くんはもともと科学者じゃからのう」という言葉に「科学者？　何言うてんの、どう見ても小っさい子どもやん」と発言しています。小学1年生の少女がコンピュータでいろいろと解析するさまは、和葉の目にはきっと奇妙に映っていたのではないでしょうか。

イージス艦「ほたか」乗員

立石由紀夫

イージス艦「ほたか」艦長。海上自衛隊一等海佐。
対空対潜戦闘訓練の際に、味方に属さない潜水物が不意に接近してきた折りも自らCICに出向いて冷静に対応、ことなきを得ました。

殺人事件発生に際しては警察や海上保安庁の捜査を受け容れることをためらっていましたが、小五郎の説得に応じるかたちで協力することになります。

副艦長

イージス艦「ほたか」船務長兼副艦長。階級は二等海佐。「ほたか」乗員の幹部のうち、なぜか副艦長だけ名前の設定がありません。

各種レーダーの運用・無線通信を担当する船務科のリーダーで、同時に副艦長も務めています。味方に属さない潜水物が接近してきた際に艦長がCICに向かったため、艦橋でCICから来る指示を各部署に伝達、指揮を執る役を担いました。

井上文忠

イージス艦「ほたか」航海長。海上自衛隊三等海佐。
イージス艦「ほたか」体験航海の参加者である民間人を案内する役割を負って、対空対潜戦闘訓練中のCICを訪れます。その後、甲板上での案内でレーダーについての説明をしていました。

味方に属さない潜水物接近の際は民間人に非常事態であることを悟られないようにふるまい、また対潜弾爆発後の衝撃波が艦に到達する前に、民間人に艦の揺れに対応するように注意を促すという適切な行動を取りました。

佐久間重吾

イージス艦「ほたか」砲雷長。海上自衛隊三等海佐。
武器などの運用を担当する砲雷科のリーダーで、CICでは艦長・副長に次ぐ責任者。戦闘の際には射撃管制や防御の展開などの指揮を執ります。

野津原将

イージス艦「ほたか」CIC電測員。海上自衛隊三等海尉。
電測員とはレーダーを扱う乗員のことです。対水上レーダーを担当していて、対空対潜戦闘訓練時には攻撃目標の正確な位置と距離を報告していました。

岸大和

イージス艦「ほたか」CIC電測員。海上自衛隊二等海尉。
野津原と同じく対水上レーダー担当。野津原の左側の席にいる眼鏡をかけた電測員が岸です。

的場章

イージス艦「ほたか」CIC電測員。海上自衛隊三等海尉。
担当はソナー。ソナーとは水中に音波を放ってそれを測定し、艦艇周辺の情報を収集する、海上や陸上で使用するレーダーのようなものです。対空対潜戦闘訓練の際に味方に属さない潜水物をソナーによって探知しました。

味谷勇作

イージス艦「ほたか」CIC電測員。海上自衛隊三等海尉。
電波探知装置を担当しています。艦内で発せられた衛星電波を探知して艦長に報告したのが味谷です。また、京都府警から送られてきた監視カメラの映像を解析して、竹川を見つけ出したのも味谷です。

丸山一

イージス艦「ほたか」CIC通信士。海上自衛隊二等海尉。
艦内放送により各部署の乗員に指示を出す、ある人物を捜索するために飛び立った哨戒ヘリコプターSH-60Kのパイロットと通信するなどしていました。

畑宗徳

イージス艦「ほたか」CIC砲雷科員。海上自衛隊三等海尉。
佐久間砲雷長の命令を受け、味方に属さない潜水物に対して警告の意の発光信号弾を発射しました。

我孫子勇治

イージス艦「ほたか」の艦内警備担当。海上自衛隊三等海尉。
衛星電波が探知された場所を調査するため、拳銃を手に渡辺三尉と一緒に、コナンが平次と電話していた艦内区画に現れます。

渡辺隼人

イージス艦「ほたか」の艦内警備担当。海上自衛隊三等海尉。
我孫子三尉とともに拳銃を携帯して衛星電波の調査に当たり、コナンがいた区画に現れますが、コナンが早々に電話を切って隠れたので発見しそこねています。

沢村啓太

イージス艦「ほたか」機関士。海上自衛隊三等海尉。
機関整備担当の乗員。艦の注排水口から異物を吸い込んでしまったという報告を最初に乗員から受けた幹部自衛官です。乗員が「沢村さん」と声をかけてから「大変なものを吸い込んでしまって」と述べています。

関口誠

海上自衛隊若狭地方隊所属の警務官。階級は一等海尉。
警務官とは自衛隊内で秩序維持の職務に専従する、いわば警察官のようなものです。左腕につけている腕章に書かれている「MP」はMilitary Policeの頭文字。

立石艦長を介して小五郎と対面し、ともに事件の捜査をはじめますが、もともと事件の被害者をスパイ容疑で調査していました。

笹浦洋介

海上自衛隊若狭地方隊情報官。階級は一等海尉。
自衛官でありながら「ある国」の工作員にイージス艦のデータを売り渡そうとしていました。京都府警の捜査で笹浦が陸上から海に向かって旗を振って何かを伝えていたことがわかります。イージス艦「ほたか」の注排水口に吸い込まれた左腕は笹浦のものです。

藤井七海

防衛省直属の自衛隊情報保全隊所属。階級は一等海佐。
本作『名探偵コナン 絶海の探偵』に登場する唯一の女性自衛官です。イージス艦に女性自衛官が乗り組んだ前例がないため、「ほたか」甲板上に藤井がいるのを見たコナンが怪しんで声をかけました。

自らの職域を隠したりという行動が不審なため怪しまれていましたが、笹浦一尉による機密漏洩と「ある国」の工作員の捜査のために乗艦していることが後に明らかになります。コナンの推理力を見抜き、ただの子供ではないと怪しむだけの鋭さを持ち合わせています。

海上自衛官ではないがイージス艦上にいた人物

倉田正明

海上保安庁若狭海上保安部警備課所属の海上保安官。拳銃と警棒を常に装備していて、動くとそれらがぶつかり合って独特の音が鳴ります。

舞鶴港近辺の警備を担当していて、港に停泊している不審船を発見しました。捜査に熱心な様子で、当初は機密漏洩という不祥事を外部に漏らしたくない海上自衛隊が共同での捜査を拒んでいたことに強く抗議しました。

宗川勉

海上保安庁若狭海上保安部刑事課所属の海上保安官。倉田の上官に当たります。
倉田とともに「ほたか」に乗艦、事件の捜査に加わります。

雨宮勇気

イージス艦「ほたか」体験航海に参加した小学生。コナンや少年探偵団らと同じくらいの年令ですが、常に何かに怯えているような様子の少年です。父親に連れられての参加のようですが、父親は勇気のそばにいたりいなかったり。その様子が何かおかしいとコナンは感じます。

「X」

イージス艦「ほたか」に潜入した「あの国」のスパイ。名前や年令、性別など何もかも不明で、イージス艦の機密データを狙っています。隠れているのではなく、何者かを装って乗艦しているのかもしれません。日本国内に協力者がいるようです。

警視庁

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』は出港したイージス艦上が舞台のため、『名探偵コナン』作中でいつも事件現場に来る警視庁の面々はパトカーで駆けつけることができません。海上自衛隊のヘリコプターで艦上に運ばれてきます。

目暮十三

警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係所属。階級は警部。ジョルジュ・シムノンの小説に登場するジュール・メグレ警視を思わせる大きな体格にソフト帽の中年男性。小五郎のもと上司でもあります。

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では佐藤、高木の2名を連れてイージス艦「ほたか」に乗艦。笹浦一尉殺害の犯人を追います。ストーリー終盤に訪れる蘭の危機には涙こそ見せませんでしたが、鼻をすすり上げる様子を見せました。

佐藤美和子

警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係所属の警部補。目暮、高木とともに警視庁からイージス艦「ほたか」に派遣された女性刑事です。

きびきびとして洞察力も鋭く、本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では重要人物捜索に当たり、写真があるかを藤井一佐に確認し、「警察のNシステム、オービス、街頭監視カメラで追います」と捜査方法を提示しました。

Nシステムとは自動車ナンバー自動読取装置、オービスとは速度違反自動取締装置のことで、街頭監視カメラと同じように国内の至るところに設置されています。

佐藤の捜査方針提示に伴い、海上保安庁、海上自衛隊ともにそれぞれの捜査データをイージス艦「ほたか」に集め、イージスの情報処理システムを用いて解析するという捜査方針が立ち上がりました。

高木渉

警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係所属。階級は巡査部長。
本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では警視庁からイージス艦「ほたか」艦上に目暮、佐藤とともに派遣され、甲板上で笹浦の携帯電話を発見します。しかしそれは、実は藤井一佐がSDカードを抜いた後のものでした。

ストーリー最終盤のクライマックスでは、危機に陥った蘭の無事を知ってよろこんだ佐藤刑事に抱きつかれ、顔を真っ赤にする一幕もあります。

京都府警

イージス艦「ほたか」の母港は舞鶴港。「ほたか」艦上の事件は京都府警の管轄になります。「ほたか」艦内に警察官を派遣し、京都市内の捜査も行っています。

綾小路文麿

京都府警察刑事部捜査一課所属の警部。舞鶴総監部所属の艦艇上での事件捜査のため、京都府警から派遣されています。劇場版第7作『迷宮の十字路』で初登場、同じく第13作『漆黒の追跡者』にも登場しましたが、先の2作のように本作『名探偵コナン 絶海の探偵』ではシマリスを連れていません。

大阪府警

事件の重要人物が大阪に向かっているとの情報を受けて、本部長直々の指揮によって捜査に乗り出します。

服部平蔵

大阪府警本部長。平次の父親でもあります。竹川が京都から「淀屋橋(大阪)行き」の電車に乗ったという情報を受けて自ら捜査の指示を出します。また、平次が大滝警部を通じて、竹川が関西国際空港に向かったと知らせたときには空港に緊急配備を行うよう命じました。

遠山銀司郎

大阪府警刑事部長。本部長の平蔵とは幼なじみで、和葉の父親。本部長の頼れる右腕としてそばにいます。竹川の情報を受けたときも平蔵と一緒にいて、捜査について話し合っていました。

大滝悟郎

大阪府警捜査一課強行犯捜査係所属。階級は警部。でっぷりとした体格の、丸坊主で左眉に傷あとがある刑事です。本部長の息子である平次を幼い頃から知っていて「平ちゃん」と呼んで親しんでいます。

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では、平次らとともに空港の捜査に当たり、優れた拳銃の腕で平次と和葉の危機を救います。

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』は究極のスパイミステリー　見どころは？

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』はコナン映画史上はじめてスパイを扱ったストーリー。国家を揺るがす重要機密を狙ってハイテク機器の塊とも言えるイージス艦を舞台にサスペンスを繰り広げます。

ここでは「究極のスパイミステリー」というキャッチコピーがついた映画『名探偵コナン 絶海の探偵』の見どころを2つ、ご紹介します。

見どころ①：キーアイテムは衛星電話と電波時計

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』の舞台はイージス艦。鋭いレーダーと高度な情報処理システムを搭載したハイテク艦艇ということで、アイテムにもハイテク機器が登場します。

ひとつは電波時計。腕時計が故障して修理中の蘭は携帯電話で時間を確認していましたが、携帯電話はイージス艦「ほたか」艦内には持ち込み禁止で時間がわからなくなっていたため、光彦が自分がつけている腕時計を蘭に貸したのです。この腕時計が電波時計でした。

電波時計とは標準時刻を知らせる電波を受信して、それによって精密な時刻合わせを自動で行う時計です。1日に2回、午前と午後の5時に時刻合わせの電波を受信すると『絶海の探偵』劇中で光彦が説明しています。この時刻合わせがストーリー最終盤のクライマックスを支えます。

もうひとつはコナンの腕時計。麻酔銃がついているというほかに2つとない腕時計をつけているコナンですが、本作『名探偵コナン 絶海の探偵』ではさらに機能が増えて、衛星電話で通話できます。人工衛星を介して通話する衛星電話なら、携帯電話の電波が届かない海の上でも通話することができます。

阿笠博士がこの機能をつけたおかげで、コナンは阿笠博士がいない場所でもダジャレクイズを出す手伝いをさせられた訳ですが、それ以上にイージス艦「ほたか」艦内で起きた事件の捜査のため、陸上にいる平次や灰原との情報をやり取りでき、かなり役立ちました。

見どころ②：コナンくんはトイレ近い子？

前項で述べた通り、本作『名探偵コナン 絶海の探偵』は、イージス艦や電波時計、衛星電話というハイテクノロジーがある空間で、スパイという非日常の存在との対峙があるストーリーですが、コナンも正体を隠しているという点ではスパイと似ているかもしれません。ときどき新一として活動するために「場を離れるときの常套手段」を使います。

「ぼく、ちょっとトイレ」。こういってコナンは衛星電話で話したり、捜査のためにひとりで行動するときに、同行している蘭や少年探偵団がいる場所から離れていくのです。あまりに古典的な上に、コナンは姿を消す理由を都度変えることなく、毎回「トイレ」と言うのです。

その回数、実に4回。2回目などは光彦にデジタルカメラを貸してほしいと言った直後に「トイレ」と言い出したものですから、元太が「あいつ、トイレで何撮るんだ？」と疑われてしまいます。

こんなにしょっちゅうトイレに行っていてはかえって怪しまれそうですが、さいわい本作では取り敢えずみんな納得してくれているようです。

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』の注目ポイント

謎の女性自衛官・藤井七海役はスペシャルゲスト声優が担当

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』のスペシャルゲストは、学生時代から『名探偵コナン』の読者だという柴咲コウ。ストーリーのキーパーソンである藤井七海一等海佐を演じました。

柴咲のアニメ声優としての仕事は2007年の『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』でのヒロイン・レイナ役以来6年振りのこと。しかし、そのようなブランクを感じさせないナチュラルな演技でミステリアスな女性自衛官を表現。作品を盛り上げました。

コナン愛が溢れて1作に収まりきらなかったのか、柴崎は次作の劇場版『名探偵コナン 異次元の狙撃手』では主題歌を担当します。

主題歌「ワンモアタイム」は斉藤和義書き下ろし

斉藤和義のデビューは1993年。デビュー曲は「僕の見たビートルズはTVの中」でした。それから20年。本作『名探偵コナン絶海の探偵』のために斉藤は曲を書き下ろしました。

それが本作の主題歌「ワンモアタイム」です。『名探偵コナン 絶海の探偵』という作品のための1曲であると同時に、斉藤のデビュー20周年第1弾シングルでもあります。

「強い思いは叶う」がテーマのこの曲が、最後のピンチを切り抜けてよろこびにあふれるコナンたちに重なって流れるエンディングは、見る者の胸を熱くするでしょう。

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』は海上自衛隊全面協力

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』は映画『名探偵コナン』第17作目にしてはじめてかつ唯一の海上自衛隊が登場する作品です。海上自衛隊の全面的な協力によって、自衛官の制服や艦艇等の装備が忠実に再現されています。ここではそれらについて解説します。

『名探偵コナン 絶海の探偵』の舞台は海上自衛隊イージス艦

イージス艦はイージスシステムという防空戦闘に重きを置いてつくられた武器システムを搭載しています。本作『名探偵コナン 絶海の探偵』作中で、イージス艦「ほたか」体験航海の参加者を案内していた井上航海長が言っているように、レーダーの感知距離は450km超、いっぺんに200以上の目標に対応できるという高性能システムです。

作中に搭乗したイージス艦「ほたか」は実在しない艦艇ですが、モデルが海上自衛隊にいます。それは第3護衛隊群第3護衛隊所属のあたご型護衛艦「あたご」。あたご型護衛艦はすべてイージス艦ですが、その1番艦です。全長165m、最大幅21m、基準排水量7700トン、ガスタービンで推進します。乗員は300人。

毎作、実写が挿入される劇場版『名探偵コナン』のエンディングですが、本作『名探偵コナン 絶海の探偵』ではここにも海上自衛隊は協力しています。エンディングに登場する、艦首に「177」と書いてある艦艇がイージス艦「ほたか」のモデルになった護衛艦「あたご」です。

そのほか、護衛艦「あたご」と同じく第3護衛隊群第3護衛隊所属のこんごう型護衛艦「みょうこう」、第4護衛隊群第8護衛隊所属(映画公開当時。2019年現在は第2護衛隊群第6護衛隊に編入されています)のこんごう型護衛艦「きりしま」、劇中にも登場した哨戒ヘリコプターSH-60K、機雷処理などを行う水中処分隊などが登場します。艦艇ファン、海上自衛隊ファンには一層楽しめるエンディングでしょう。

海上自衛官の階級はどこを見ればわかる？

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』では、コナンや平次が訊ねてもいないのに自衛官の階級に言及する場面がいくつかあります。なぜ、階級がわかったのでしょう。

みなさんもご存じの通り、海上自衛隊の制服には階級章がついています。劇中に登場する海上自衛官には二通りいます。黒い制服を着た自衛官と、作業服を着た自衛官です。劇中に登場した黒い制服を着た自衛官はすべて幹部自衛官で、階級は上着の袖を見ればわかります。

幹部自衛官の制服は袖口に金色の線が入っています。この太さと本数で階級が表されています。劇中でイージス艦「ほたか」の注排水口に吸い込まれた腕を包んでいた袖には、金色の細い線が1本、太い線が1本入っていました。これを見てコナンは「二等海尉」と判断したのです。二等海尉は外国の軍隊でいう中尉に相当し、短縮して「二尉」とも呼ばれます。

作業服の場合は、幹部は肩に、幹部よりも低い階級は袖の上腕部分に階級章がついています。

『名探偵コナン 絶海の探偵』のストーリーのキーは信号旗

本作『名探偵コナン 絶海の探偵』のストーリーの舞台は海上自衛隊の艦艇、事件に関わる人物たちも海上自衛官が多いです。その中のある人物が「舞鶴港の崖の上で日の丸の旗を振っていた」という目撃証言を得る場面があります。

実はこれは日の丸の旗、つまり国旗ではなかったということが、コナンが実物の旗を振ることによって明かされるのですが、コナンがイージス艦「ほたか」CICでおもむろに振り出した旗は国際信号旗でした。

国際信号旗とは、海上の船舶同士での通信に使用される旗で、文字旗と数字旗、ほかに代表旗、回答旗などがあります。劇中で使用された日の丸に似た旗は文字旗の「I」。この旗1枚だけで、劇中で立石艦長が言っていた通り「本船は左に針路変更中」という意味になります。

日の丸に似ていますが、中心の丸は黒色、周囲は黄色です。暗いところで見ると、白地に赤い丸の旗ととても似て見えます。信号旗を知らない人なら日の丸の旗だと思ってしまうかもしれません。

この旗によって、ある人物は何者かにイージス艦「ほたか」が予定していた進路を変更したことを伝え、その後、不慮の事故に遭ってしまうのです。

映画『名探偵コナン 絶海の探偵』まとめ

映画『名探偵コナン』第17作『絶海の探偵』について解説して参りました。作品についておおまかなところはおわかりいただけたことと思います。

ストーリーの核心の部分、重要な部分にはできるだけふれないようにして参りましたので、ぜひご自身でごらんになって、その部分をご確認ください。きっと「究極のスパイミステリー」をお楽しみ頂けることでしょう。