努力で天才を打ち負かすのは、ポピュラーな題材の一つです。しかし努力をしたからといって、必ず勝てるわけではないという事は、大人になるにつれ理解してしまうことですね。アイシールド21は、そんな大人にこそ読んでほしい、努力論について描かれています。
凡人の努力は、果たして天才を超えることができるのか
努力をすれば必ず天才を超えることができるか、それはこの漫画における答えは「NO」です。
そして残念ながら、私たちも大人になっていくと、努力だけではどうにもならないことがあるのを実感してしまうものです。
だからこそ、努力が才能を打ち負かす漫画に惹かれますしね。
この作品ではまさにそのシビアさが描かれており、努力だけではどうにもならないことをよく示してくれています。
そして同時に、才能だけではどうにもならないことも示してくれています。
その代表的なシーンが、ヒル魔が阿含とランをする時に放つ「0.1秒縮めるのに1年かかった」というセリフです。
誰も敵わない天才の阿含は努力を怠っており、それでもなお才能だけで戦い抜けるほどの強さを持っています。
一方ヒル魔はどう足掻いても阿含に勝つ才能を持っていないにも関わらず、奇策を用いた最後のランで、その「1年かけて縮めたたったの0.1秒」で勝利することができます。
勿論だからと言って、ヒル魔が阿含に勝ってるというわけではありません。同じ状況、奇策なしでは、身体的に平凡なヒル魔は阿含にどう足掻いても勝つことはできないのです。
それが才能の差です。
だからこそ、このシーンに胸を打たれるんですね。
どう足掻いても勝てない相手に、努力でたった一度の勝利を掴む。
自分の平凡さを理解し、使える手があるのであればどんな手を使ってでも勝利する。
その勝利のためにする努力の貪欲さが、とてもかっこいいんです。
努力をする意味とはなんなのか。悔いのない努力とは
そしてこの作品には、天才でありながら貪欲に努力をするキャラクターも存在します。
努力する天才に勝てるわけがないと腐るキャラクターも無論います。そして同じ考えを持っている人もいることでしょう。
しかし、その努力は何のためにしているのか。ただ天才に勝つためだけにしているのか。
どんなに努力しても自分より上の相手がいるからと、努力を無意味にしているのではないかという事に気づかせてくれます。
登場人物の一人である桜庭は、作中にて「勤勉な天才に凡人はどうやったら敵う」という発言をしています。
相手のキャラクターは天才である上に努力をし、積み立て、それに見合った成果を出しています。
そして自分はいつもその下にいるのです。
けれど最後に「夢だった世界にはたどり着けないかもしれない」という事を受け入れながら、それでも「もう二度と心折れたりはしない」と努力をしてきたことに関して清々しいまでに前向きな気持ちを吐露しています。
それは、自分なりに努力をしてきた意味を見つけたからなのです。
そしてその意味を見つけたからこそ、桜庭は努力をし、努力してきたことを悔いたりはしません。
大切なのはいかに努力していかに勝つかではなく、いかに努力する意味を見出すかなのではないでしょうか。
桜庭はこのチームで、このスポーツで、このポジションで、この仲間たちと努力してきたことを、これから先も誇り続けるのでしょう。
それはたとえ相手に勝てなかったとしても、これからの人生において輝かしいものである事が、キャラクターの表情やセリフからにじみ出ています。
努力をしてきたからこそ得た気持ちは、ただ勝利を得るよりかけがえのないものになるはずです。
挫折して嘆き諦めたキャラクターだからこそ、それが染みるのです。
努力を報わせてくれる、アイシールド21の努力論
努力をすれば天才に勝てるわけではない。
報われない努力だってある。
けれどたった少しでも勝つこともできるし、足掻くこともできる。
そして努力をしたから気づけることもあるでしょう。
努力をただ人と自分を比べ競うためだけの材料にしていないか。
自分が納得できる努力とは何か。
努力をする意味は人ぞれぞれ違う、けれど自分の努力を認めてくれるのは、自分なのです。
そんな大切なことを、この漫画は教えてくれます。
参考元
- ・アイシールド21 1~37巻集英社
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