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出典:amazon

2017/04/12
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あつめているもの、ありますか? 【異形コレクション 蒐集家】

集める行為は楽しいけれど、行き過ぎにはご注意を。 コレクション、あるいはコレクターをテーマに書かれた、短編ホラーの”コレクション”です。

目次

まさに珠玉のコレクション

蒐集家と書いて、コレクターと読みます。
趣味として何かを集めている方は少なくないでしょう。今は興味ない、という方も、子供のころにさかのぼれば、何かしら集めた思い出がありませんか?

切手やきれいな石、お菓子のオマケ。フィギュアに、キャラクターグッズ。好きな本や漫画、ドラマなんかが大長編だった場合、それを全巻揃えれば、他人から見たら充分コレクションです。

本書はコレクション、あるいはコレクターそのものを主軸に語られる、ホラー小説の”コレクション”。宝箱ならぬ表紙を開けば、目も眩むようなコレクションの数々が出迎えてくれます。

そのコレクションは、うらやましいでしょうか。
それとも、おぞましいでしょうか。

愛書家倶楽部

せっかく「本」の紹介をするわけですから、まずは「本」のコレクターから紹介いたしましょう。
 
彼は大の古書マニアで、同行の士である伯父とは大変仲が良く、遊びに行っては珍しい本を見せ合う良好な関係でした。

しかし、その叔父はある日、本棚の下敷きになって死んでしまいます。彼らしい最期と言えるでしょう。親族であり友人でもある彼の死を主人公は深く悲しみましたが、同時に期待してしまう部分もありました。

伯父以外の彼の家族は、本に全く興味がなかったのです。伯父の遺品となった大量の蔵書を、家族が持てあますのは火を見るよりも明らかです。

ならばその本は、同じ本好きである自分が相続できると踏んだのでした。彼よりずっと長い年月、古書収集に情熱を燃やしていた伯父の本棚は、彼のそれよりはるかに充実していましたから。

その目論見は、予想だにしないところから崩れてしまいます。伯父の死後、「愛書家倶楽部」という聞いたことも団体からの通達が来て、伯父の蔵書すべて、果ては伯父の遺体までそこが引き取るとのことなのです。

あまりに納得がいかない主人公。彼はぞっとするような方法を使って、「愛書家倶楽部」への潜入を試みます。

こちらも、死者から受け継いだコレクションの物語。
しかしその様相は、大きく異なります。

蔵前、という男が自殺をしました。
彼は非常に優秀で、会社では常に一目置かれ、期待と羨望と激しい嫉妬にさらされていました。重たいプレッシャーに耐えきれなくなったのか、彼の素行はだんだんとおかしくなり、ついには自ら命を絶ってしまいました。

彼の遺品は、大量の箱。
手のひらサイズの小さなものから、お中元に使うような大きなものまで、大量の箱がコレクションされていたのです。素晴らしい細工のものや、からくり仕掛けの変わったものなどもたくさんありましたが、箱は箱。中身も何もない、空箱です。

蔵前の親友だった主人公、恋人だった容子、そしてかつての同僚涌井はその遺品を……なんと、売ることにしました。

主人公は親友の振りをつづけながらも、蔵前に激しい嫉妬心を抱いてきました。そして、蔵前の恋人だった容子は、いまや主人公の恋人。この2人は蔵前を貶めんとして、そして涌井は金欲しさに、ネットオークションで箱を売り払うことにしました。

蔵前以外にも箱のコレクターは案外いるのか、箱の価格は順調に吊り上がっていきます。無数の箱に囲まれてモニタをのぞき込む3人。やがてそれぞれの「箱」に異変が起きだして……。

DECO-CHIN

中島らも氏の遺作となった一篇です。
そういう意味では、このコレクションも遺品なのかもしれません。遺品にしては、大きすぎる「コレクション」です。

若者向けサブカルチャー誌の編集者である主人公。彼の今回の仕事はインディーズバンドの紹介記事です。しかし彼はヨイショが苦手。面白くないものを面白いとは書きたくない性分なのです。よって「辛口すぎ」と原稿が返ってくることもしばしば。

インディーズバンドが嫌いなわけではないのです。大好きゆえに、中途半端にやっているバンドが嫌で嫌で、つい「辛口すぎ」な記事になってしまうのです。

今夜もうんざりするほどヘタクソなバンドのライブを聞き、ぐったりしていた矢先のこと。フライヤーにはヘタクソバンドの名前しかなかったにもかかわらず、もう1組のバンドが演奏するというアナウンスがかかります。

バンド名は「ザ・コレクテッド・フリークス」。そう、このバンドのメンバーこそが、この作品における「コレクション」なのです。

バンドがどうしてコレクションなのかは、ぜひ作品のいきいきした描写でお確かめください。最後まで読んでいただけば、一見意味不明なタイトルの、本当の意味も明らかにされます。

もっと、コレクションを!

図らずも遺品ばかりのコレクションになってしまいましたが、本書にはコレクションをいきいきと楽しむ生者(あるいは人でないもの)がわんさか登場します。コレクションそのものより、蒐集家本人が個性的……なんてことも。

コレクション自体も種類はよりどりみどり。形のあるもの、無いもの。すぐ始められるもの、手に入れるべくもないもの。

ぞくぞくするようなコレクションに、あなたが出会えますように。

参考元

  • ・異形コレクション 蒐集家光文社

当社は、本記事に起因して利用者に生じたあらゆる行動・損害について一切の責任を負うものではありません。 本記事を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者本人の責任において行っていただきますようお願いいたします。

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