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2016/11/29
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【悪夢制御装置】ホラー短編集に収録されたひたひたと迫る4つの恐怖をご紹介

『悪夢制御装置』の内容をそのタイトルのままにとらえてしまうと痛い目を見ること間違いなしです。なぜなら悪夢だなんて、我々に制御できるものではないのですよね。今回はホラー短編小説『悪夢制御装置』をご紹介します。

目次

『悪夢制御装置』とは? ホラー短編集の面白さ

『悪夢制御装置』はホラー短編集です。長編小説のように本一冊や何巻かに分かれているのではなく、さまざまな小話が収録されています。短編集でありながらただのB級ホラー小説ではなく、それぞれに深い物語が込められています。

今回はそのなかからおすすめの短編を4つご紹介します。

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『悪夢制御装置』に収録されている4つの素敵な悪夢

この本「悪夢制御装置」には、まるきりテイストの異なる4つの恐怖短編が収録されています。

恐怖の種類はばらばらですが、ホラー小説が好きであれば、1本くらいは琴線に触れるものがあるのではないかと思います。タイトルこそ「制御装置」ですが、繰り出される恐怖は予想のつかない悪夢そのもの。それを制御することが、あなたにはできるでしょうか。

そんな素敵で不気味な物語を紹介していきます

『悪夢制御装置』収録短編①ふたり遊び

「ふたり遊び」は、とても悲しい物語です

語るのは11歳の女の子。ジェルソミーナはブロンドに青い瞳の美少女で、そのうえ「お城」の女主です。ほかにもおとぎ話のような肩書をつらつらと並べたてる彼女が、はじめのうちは身の程知らずで高慢ちきな少女に見えるかもしれません。

けれどそれは彼女の一面であってすべてではありません。彼女の口からあっけらかんと語られる、両親の悲惨な現在。それが彼女の境遇を教えてくれます。

さらに謎めいた、弟の存在にも注目してみてください。ちょっとおかしな、壊れかけの弟。彼は刃物に異常な興味を示し、取り上げても取り上げてもズボンのポケットに毒入りの瓶を忍ばせているような少し困った男の子です。

しかしジェルソミーナは彼を可愛がって、よく一緒に遊んでいました。弟に女の子の服を着せて女中の役をやらせたり、逆に騎士に任じて女王たる自分に忠誠を誓わせたり…

その遊びの際に「守りの護符」として騎士である弟に贈ったガラスの香水瓶が、思いもよらない結末を呼び込むとは、ジェルソミーナ女王も思っていなかったことでしょう。

童話の世界のような物語はやがて破綻をきたし、女王ジェルソミーナは普通の女性として成長していきます。その後、再び訪れたかつての家――「お城」で起こることが、この物語の本当の恐怖の始まりです。

続きが気になった方はぜひ物語を読んでみてください。

『悪夢制御装置』収録短編②闇の羽音

「闇の羽音」は行方不明になった友達を探す、少年少女の冒険譚です。けれどただの冒険譚というには本作は陰惨でグロテスクに過ぎるかもしれません。

中学生の仲良し三人組、ナオトとユリカ、そしてアカネ。突然アカネが姿を消した場面から、この物語は始まります。

ナオトは近所の老朽化した工場にアカネが閉じ込められていると考え、救出に行こうとします。全面的に肯定はできないまでも、ほかに手立ての思いつかないユリナと二人で、アカネを探しに向かいます。

工場付近で何度か見かけた、ホームレスが犯人ではないかと推理するナオトでしたが、真相は全く違うところにありました。

少年探偵団よろしく、廃工場に入ってきた二人を隙なく観察するのは件のホームレスではなく、「彼女」と呼ばれる存在でした。きっと読み進めるごとに「彼女」の本当の姿が見えてきて、余計に戦慄してしまうこと、請け合いです。

救いは果たしてあるのでしょうか。よくわからないラストシーンも、考察の余地があり、ぜひ最後まで一読していただきたい作品のひとつです。

『悪夢制御装置』収録短編③ラベンダー・サマー

「ラベンダー・サマー」は景色の綺麗な田舎で映研のメンバーが映画を撮る話です。ところが、やっとのことで確保した女優が「田舎過ぎる」と逃げてしまいます。物語は、そこから始まります。
 
手持ちの浴衣と化粧道具を駆使して、映研メンバーの誰かが女装するしかないところまで追いつめられていた映研の前に、偶然現れたかわいらしい地元の少女。自分たちが映研であること、女優が必要なこと、簡単な演技しかしなくてもいいこと…しどろもどろの説明の末に、彼女は可憐に微笑みながら撮影の許可をくれたのでした。

しかし、カメラを通して観た彼女の顔は、肉眼で見るものとは似ても似つかぬ容貌でした。動揺する撮影班とそれを伝え聞いて、おびえ震える役者たち。

彼女のほうはいたって普通に、この後の撮影にも協力してくれるとふたつ返事をします。正体がばれていると知ってか知らずか、平静な彼女と、その正体について喧々諤々の議論を交わす映研のメンバーたち。

ギクシャクしたまま続く撮影の結果やいかに? ぜひ読んで確かめてみてください。

『悪夢制御装置』収録短編④階段

「階段」は実に痛々しい、歪んだ家族の物語です

家の中では暴君として君臨する父。それを止められない母。脅えながらも、それに従うことしかできない姉妹。読者に恐怖を与えるという意味ではホラーに違いないのですが、幽霊も怪物も、超自然的なものは一切現れません

いるのはただ、威圧的な父親だけ。ひょっとしたらご自分の育った家庭にその影を重ねて、不愉快な気分になる方もいらっしゃるかもしれません。それくらい嫌な父親なのです。

まだ幼い妹に、ストップウォッチまで用意して階段を早く降りさせようと強制する父親。せかされるせいなのか、それとも父親が怖いのか、なぜか妹は自宅の階段だけうまく降りられません。何とかしてやりたいと思うものの、妹を救う手立てを何一つ実行できない姉と、父の前ではどこまでも無関心な母。

毎日繰り返される父親の意地悪に、姉妹はだんだんと疲弊していきます。そして表には見えないけれど、それは母親にも同様に現れるようになります。

ラストシーンはとても残酷ですが情景が綺麗ですので、ぜひ読んでみてください。

『悪夢制御装置』のまとめ

『悪夢制御装置』のおすすめの4作品について紹介してきました。気になる作品はありましたでしょうか。もしあったらぜひ手に取ってほしいところですが、少し古い本なので古本屋さんで探すのも大変かもしれません。

乙一など、執筆陣はなかなか名のある方ばかりですので、名作であることは間違いないでしょう。そのなかからひとつでも気に入った作品があれば、次はそれを書いた著者の本を追いかけるのも、短編集の楽しみのひとつです。
  
ぜひ『悪夢制御装置』を読んでみてください。

参考元

  • ・悪夢制御装置角川書店

当社は、本記事に起因して利用者に生じたあらゆる行動・損害について一切の責任を負うものではありません。 本記事を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者本人の責任において行っていただきますようお願いいたします。

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