バットマンシリーズでも映画ファンにダントツの人気を誇る『ダークナイト』。映画史的にも重要な位置づけの傑作として、批評家からも評価の高い作品です。その作品を”特別”にしている5つのワケに迫りたいと思います!
コミックヒーロー原作の映画のなかでも、そのシリアスな世界観で特筆に値する「ダークナイト・トリロジー」の第2作目が本作『ダークナイト』。
アメコミ原作映画のみならず、その評価は映画史的な重要作品と位置づけられています。
数ある映画のなかで特別な光を放つこの映画、その傑作たる5つのワケを探っていきたいと思います。
映画『ダークナイト』傑作の理由①ジョーカーの悪の裏にある思想
出典:amazonずばり、『ダークナイト』の最大の魅力は悪役のジョーカーです。
「主役ってバットマンじゃないの?」「ジョーカーってヴィランでしょ?」 と思う方も多いことでしょう。
いやいや、この映画の哲学は悪役ジョーカーにつまっているんです。
商業映画にありがちな生ぬるい悪役とは一線を画する本作のジョーカーは、これまでの映画にはない悪役像を提示しています。
まさに純粋悪と呼ぶにふさわしい完全な“悪”です。
ジョーカーは金や政治的権力、あるいは復讐が目的ではありません。単純に悪を行うことそのものが彼の目的です。
人々の恐怖を煽り、大衆の悪の目を開かせようとギリギリの選択を迫るジョーカーには狂気を覚えます。ところが、ジョーカーは何か特別な能力があるというわけでもなく、突飛して強いわけではないのです。
バットマンがなぜ彼を恐れるのか。なぜ太刀打ちできない状況にまで追い込まれるのか。ジョーカーの怖さはその“思想”と“饒舌さ”にあるんです。
「ジョーカーってやることは大胆だけど言ってることはわかる…。」
むしろバットマンが“偽善者”に思えてくるという不思議な感覚に陥ることでしょう。本作を観た後、観客はジョーカーを通して自分の中の“悪”に気づくのです。
そして、これって“悪”なの?という疑問からジョーカーへの共感は生まれます。本作のジョーカーは、“悪”という抽象概念のメタファーとして存在しているのです。
映画『ダークナイト』傑作の理由②故ヒース・レジャーの怪演
今はなき実力派俳優ヒース・レジャー。
『Dr.パルナサスの鏡』が代役で撮影を撮り終えたので、そちらが遺作となりましたが、実質的な参加作品では『ダークナイト』が遺作とも言えるでしょう。
甘いルックスから、初期はアイドル路線で売り出されましたが、それを本人が拒絶し、本作においてその本領を発揮します。
これまでのイメージを完全に覆し、実力派俳優としての地位を固めます。
そして『ダークナイト』のジョーカー役にヒース・レジャーは圧倒的な役作りで臨み、鬼気迫る演技を見せます。
映画公開前に急死したヒース・レジャーでしたが、これまでジョーカーを演じてきたジャック・ニコルソンとはまた違うジョーカー像を演じ、アカデミー賞助演男優賞を受賞します。
故人での受賞は2人目です。
この役ではほかにもゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞など主要映画賞を総なめにしました。
ジョーカーをスクリーンに完全に具現化した、故ヒース・レジャーの才能無くして、この作品の完成はあり得ませんでした。
ちなみに、彼がジョーカーとして演出した表情や台詞にはアドリブが混じっているそうです。
監督が求めた以上役をこなしてみせたヒース・レジャー。
今年は、監督やキャスト、制作会社を一新したジョーカー単独映『Joker』(日本公開時期未定)がアメリカで公開予定ですが、彼のつくりあげたジョーカー像がどのようなかたちであらわれるのかも見ものですね。
映画『ダークナイト』傑作の理由③哲学的なテーマ
『ダークナイト』のストーリーは、アメコミヒーローでありがちな勧善懲悪のドラマとは大きく異なっています。
根本的な善悪二元論の闘いが描かれることは間違いありませんが、そもそもの善悪の問い直しが成されています。
正義ってなに? 悪ってなに?
映画のメッセージとしてはありがちですが、台詞で魅せてくるのが本作の特徴です。
ゴッサムシティという架空の街も舞台として象徴化されています。
悪のはびこる大型都市として描かれますが、バットマン、それに物語のメインキャストである検事ハービー・デントはこの街に異様に執着しています。
「世界」そのもの、あるいは「アメリカ」そのものの暗喩ととることも出来るでしょう。
そしてジョーカーの台詞にもありますが、バットマンもジョーカーも互いを殺すことはありません。
互いが必要であり、2人の関係はそれぞれの鏡像に過ぎないからです。
少し敷衍して考えると、とかくアメリカという国は世界の警察として(あるいは西に進む十字軍的な正義として)批判されることがあります。
”正義を振りかざす国”としての立場から、正義と悪を再設定するこの映画のテーマは重なるものがあると言えるでしょう。
映画『ダークナイト』傑作の理由④豪華なキャスト陣
本作を語るうえで外せないのはもちろん、そのキャスト陣です。
主演のバットマン/ブルース・ウェインを演じるクリスチャン・ベールを筆頭に、先にもふれたヒース・レジャー、ジム・ゴードン警部補役のゲイリー・オールドマン、正義漢の検事ハービー・デントにアーロン・エッカート、検事補で恋人のレイチェルにマギー・ギレンホールと、実力派の役者陣を揃えています。
さらにはウェイン・エンタープライズCEOのルーシャス役にはなんとモーガン・フリーマン。
大御所俳優が脇役とはそれだけで本作のスケールの大きさがはかれます。
また、クリストファー・ノーラン作品ではおなじみのマイケル・ケインも、主人公ウェインの執事役として出演しています。
原作でも圧倒的な人気を誇る役どころを難なく演じてみせたクリスチャン・ベールですが、彼がバットマンの代名詞となってしまったほどの反響だったのです。
その後に公開された『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』でバットマン役を演じたベン・アフレックのもとにはクリスチャン版バットマンのファンから苦情が殺到したんだとか…。
DCのユニバース映画『ジャスティス・リーグ』等で演じてきたベン・アフレックですが、2021年公開予定のバットマン単独映画では降板を発表しています。
後役の俳優にプレッシャーを与えてしまうほど、クリスチャン・ベールが作り上げたバットマン像には目を見張るものがあるのです。
さすがカメレオン俳優と謳われるだけありますよね。
見ているだけで胸の騒ぐ俳優たちが一堂に会する『ダークナイト』。
彼らの演技対決を観るだけでも本作は十分に観賞の価値ありです!
映画『ダークナイト』傑作の理由⑤演出と脚本を手がけたクリストファー・ノーラン
『メメント』で注目され本シリーズに大抜擢されたクリストファー・ノーラン。アメコミ原作と聞いて思い浮かべるのはド派手なアクションではありませんか?
しかし、本作はその他アメコミ映画に比べ、圧倒的にアクションが少ない作品でもあります。その理由こそが、本作の監督クリストファー・ノーランの作風にあるのです。
まず彼の信条として、極度の「機械嫌い」があります。
なんと爆破シーンではCGではなく、本物のビルを丸ごと爆破するほどの徹底ぶり。しかもこの監督、SF作品でさえCGを使わないそうなんです。
視覚的なリアリティさが、台詞や音楽など別の表現演出に現実味を与えているのかもしれませんね。
まさに、本作は“見せる”映画ではなく“魅せる”映画と言っていいでしょう。
「ダークナイト」の公式サイトはこちら!
参考元
- ・参照リンク:ヒース・レジャー - Wikipedia
- ・参照リンク:ダークナイト - Wikipedia
- ・参照リンク:【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|ダークナイト
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