待望の最新作が公開間近のエイリアンシリーズ。そこでここではエイリアンVSリプリーの構図に注目し、劇場公開された1~4を復習していきましょう。エイリアンがなぜここまで世界中に受け入れられたのか、その理由を解明していきます!
最新作『エイリアン:コヴェナント』9月15日公開
世界中で大人気の映画シリーズ『エイリアン』。
70~90年代、エイリアンとリプリー(シガニー・ウィーバー)の死闘を描いた4作品が公開、そしてゼロ年代に入りリドリー・スコットが『エイリアン1』以来満を持して再びメガホンを執った『プロメテウス』。この作品は物語の時系列としては『エイリアン1』以前の話となっています。
『プロメテウス』では『エイリアン1』に登場した「スペースジョッキー(人間そっくりの宇宙人)」に焦点を当て、人類の起源、そしてエイリアンという生命体の秘密に迫る壮大なシリーズの序章となっています。
そしてその『プロメテウス』の待望の続編が今秋日本でも公開されます。
タイトルは『エイリアン:コヴェナント』。
予告編とレビューを見る限り”原点回帰”を思わせる、SFホラーとして極上の仕上がりとなっているようです!
映画『エイリアン:コヴェナント』オフィシャルサイト 9月15日Fri 全国ロードショー
新たなジャンルの創出とフェミニズム【エイリアンシリーズ総括】
【SFホラー】の確立
『プロメテウス』と『コヴェナント』はあくまで『エイリアン』の前日譚です。
そこでここでは本シリーズといえる1~4を振り返ってみたいと思います。
『エイリアン』が初めて世に出たのは1979年。ホラー映画というジャンルで公開されています。宇宙空間という舞台設定がそもそも斬新でした。
60年代後半から70年代、『2001年宇宙の旅』『猿の惑星』『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』など名だたるSF映画が次々と公開されるSF隆盛期に「密室ホラー」として『エイリアン』が登場し、そのキャラクターデザイン、演出方法は観る者全てを驚かせたのです。
性の象徴が襲ってくる!
そしてキャラクターとしてのエイリアンのフォルムですが、これは直に男性性のメタファーです。デザインを担当したのはH.R.ギーガーです。
ストーリーのなかで女性性の象徴的な形をしたフェイスハガ-(エイリアンの中間形態)は人間の口から卵を植え付けます。
登場人物の男性はフェイスハガ-によって無理やり妊娠させられ、子供のエイリアンは腹を食い破って出てきます。異種間、そして男性の妊娠・出産のイメージです。
そうして男性性の象徴であるエイリアンは、ヨダレを垂らしながらヒロイン・リプリーに襲い掛かるのです。
この作品から感じるセクシャリティの要因はここにあります。
男の妊娠やエイリアンのグロテスクな見た目、さらにリプリーを追い詰める凶暴な性質は、観客に生理的な恐怖を与えるとともに、社会的なインモラルを表現しているといえるでしょう。
70年代後半、一連のフェミニズム運動の文脈でこの映画を解釈する流れがあり、最後に勝利を手にするリプリーの果敢な姿には時代の気分が投影されています。
エイリアン1【宇宙生命体との恐怖の邂逅】
記念すべき第1作目。先にも触れましたが、リドリー・スコット監督は全く新しい画期的な作品を生み出しました。
”SFホラー”とは今ではジャンルとして確立されていますが、まだSF映画の黎明期といえる70年代ではその発想はエポック的だったのです。
そしてキャラクターとしてのエイリアンのビジュアルインパクトは強烈でした。
男性器を模したかのような頭部とドロドロとした液体を垂れ流す口。
あえて全身を見せずに”寄りの画”を多用し、観客の恐怖とはがゆさを増幅させる演出。
後の映画人に多大な影響を与えた、まさにSFホラーの金字塔といえる作品です。
そして同時に、この映画の登場は”闘うヒロイン”リプリーが誕生した瞬間でもあります。
この系譜は『バイオハザード』など、ハリウッド映画の女性像のひとつの完成形といえます。
下着姿のリプリーに襲い掛かるエイリアンのイメージが、とにかく鮮烈な第一作目でした。
エイリアン2【戦争映画の傑作】
『ターミネーター』で一躍ハリウッドのヒットメイカーの仲間入りをしたジェームズ・キャメロン監督。
完璧主義者であり、高度なテクニックを駆使した映像を撮る特撮の第一人者です。今作『エイリアン2』で名声を不動のものにし、ハリウッドで最も影響力のある監督のひとりとして現在も活躍しています。
その監督が手掛けた『エイリアン2』は『エイリアン1』の演出とは好対照を成す続編です。
スケールの大きなエンターテインメント作品としてアカデミー賞視覚効果賞、音響効果編集賞を受賞。興行的にも大ヒットとなります。
1のホラー的要素は影をひそめ、完全なアクション映画として独立しています。
そして、ミリタリーマニアとして知られる監督。『エイリアン2』も未来形の武器を身に着けた海兵隊員たちの戦争映画として娯楽要素が満載です。
この作品の前に『ランボー/怒りの脱出』の脚本を書いていたジェームズ・キャメロンは、『エイリアン2』でも明らかにベトナム戦争を想起させるストーリーとモチーフを持ち込んでいます。
シリーズでも最高傑作の呼び声高い『エイリアン2』。
主人公、敵キャラクターは同一でも監督の作家性によって大きくテイストが異なる続編として、エイリアンファンの記憶に残る傑作といえます。
エイリアン3【キリストと刑務所と新種エイリアン】
後に映像作家としてハリウッドに名を馳せるデビッド・フィンチャーの監督デビュー作が『エイリアン3』です。
シリーズ中、非常に厳しい評価を受けた作品としても有名です。
デビッド・フィンチャーの映像作家としての特徴である暗澹として同時に美しい映像は初監督作である今作でも健在。
しかし2の生き残りキャラクターが映画冒頭でいなくなるというストーリー設定にがっかりしたファンも多いはず。
今作はキリスト教に帰依する囚人が管理する流刑惑星でエイリアンと対決するという物語です。宗教的要素が強く、新種のエイリアンも発生します。
更にシガニー・ウィーバーは自身の坊主姿を披露しますが、映画的には批評家、ファンから辛辣な批評を浴びせられます。
しかし、もちろん評価というのは人それぞれ。
冒頭以上に驚くべき結末が用意された、シリーズ最大の問題作と言えます。
エイリアン4【異種婚姻の寓話】
特異な作家性の際立つジャン=ピエール・ジュネ監督。『デリカテッセン』『ロスト・チルドレン』で注目を集め本作に抜擢、その後の『アメリ』でのムーブメントを記憶している方も多いと思います。
『エイリアン4』は4作目に当たるエイリアンとリプリーの関係をシンボリックに突き詰めた作品といえます。同シリーズの他作品に比べて、かなり特異です。
グロテスクなシーンが満載ですが、なぜかそこにデフォルメされたユーモアさえ感じさせるのはこのフランス人監督の手腕でしょう。
人間の遺伝子の混じったエイリアンとエイリアンの遺伝子を得たリプリー(クローン)が登場し、エイリアンとリプリーの子ども?も登場します。
まさに異種婚姻譚です。昔話でよくある人間と別の生物(犬や鶴など)との結婚の寓話です。
すでに宿命の絆と化しているエイリアンとリプリーの関係性を定義し直しており、そこには愛さえ介在しています。
ブラックユーモアとSFの混同した異色作、シリーズ中で最もアイロニーに満ちたおすすめ作品です。
まとめ
同じ題材を扱った映画ですが、監督の違いでここまで大きく作品ごとのテイストが異なるシリーズもめずらしいでしょう。
単純な娯楽作として楽しむこともできますが、作品を深読みすれば、そのなかに各々の時代の社会意識が反映されていることに気づきます。
1からはフェミニズム、2では戦争、3では宗教と囚人、4ではクローン技術の問題系…。
シリーズに通底しているのが、男性器の頭を持った怪物が女性を襲うということ。
そして、その女性が強く自立しているということ。
また、エイリアンの軍事利用を目論む人間が、事態を最悪の方向に誘うということ。
警鐘的な部分は引き継がれ、それは最新作の『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』でも変わりません。
3までの黒幕だったウェイランド社は、前章でも物語の装置として役割を全うします。(ウェイランド・インダストリーズは現在ホームページもあります)
XXXThe Weyland Corporation is currently seeking investors for several classified projects. Visit https://www.WeylandIndustries.com and sign up to learn more about these opportunities today.
示唆に富んだエンターテインメント大作『エイリアン』。
画期的なビジュアルのエイリアンは様々な派生種も生まれ、そのセクシャリティはフェミニズムに結びつき、時代の求める女性像が提示されてきました。
最新作ではいよいよエイリアン生誕の秘密に近づけそうです。
9月15日が今から本当に楽しみですね!
参考元
- ・参照リンク:エイリアン (映画) - Wikipedia
- ・参照リンク:エイリアン2 - Wikipedia
- ・参照リンク:エイリアン3 - Wikipedia
- ・参照リンク:エイリアン4 - Wikipedia
- ・参照リンク:映画『エイリアン:コヴェナント』オフィシャルサイト
当社は、本記事に起因して利用者に生じたあらゆる行動・損害について一切の責任を負うものではありません。 本記事を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者本人の責任において行っていただきますようお願いいたします。
合わせて読みたい