観終わった後”欝になる”として知られているSFホラー映画『ミスト』。主人公の思わぬ行動で衝撃のラストを迎える。物語は中だるみなしで展開されているので、最後まで飽きずに楽しめるのは魅力的だ。後味の悪さには監督のメッセージが込められている。あなたはそのメッセージも読み取ることができるのか。
『ミスト』とは
2008年に公開された『ミスト』は、スティーブン・キング原作の小説『霧』を、『ショーシャンクの空に』のフランク・ダラボンが映画化したSFホラー映画である。
評論家からは73%と高評価され、同年最も輝いた作品として映画大賞にも輝いている。
突如現れた濃霧によって、巻き起こる怪奇現象に翻弄される人々の姿を描いた作品である。
映画史上かつてない”欝”になるほど後味の悪い映画として注目された。
突如現れた濃霧に行き場をなくし、次第に秩序と理性を失っていく住民たち。
一体何が起こっているのか?霧の中に潜む怪物は一体どこから現れたのだろうか。
監督を務めたダラボン監督によると、『ミスト』には最後まで決して諦めるなというメッセージが込められているという。
果たして貴方は、ラストの展開でその意味を感じることができるのだろうか…。
突如現れた深い霧
激しい嵐が通り過ぎた翌日、主人公のデヴィッドは息子と隣人ノートンとスーパーマーケットにショッピングに行った。
マーケットは思いのほか混んでおり、デヴィッドは妻に連絡を取ろうとしたが、携帯どころか公衆電話さえ使えない状態になっていた。
そんなとき鼻から血を流した男が、霧のなかに何かがいるとスーパーに駆け込んできたのである。
外では緊急車両が走りまわり、明らかに非常事態だと分かる。
すると次第に、店の外が深い霧に覆われ始めたのである。
失望という名の地獄に落ちた登場人物
デヴィッド・ドレイトン役/トーマス・ジェーン
デヴィッドは激しい嵐の翌日、息子と隣人のノートンと、買い物に出かけた先で悲劇に遭うことになる。
衝撃のラストを演じたデヴィッドだが、あとほんの少し諦めなければ、彼もこんなに悲痛な思いをしなくても良かったのだろう。
主人公デヴィッド役を演じているのは、2010年に全米映画俳優組合賞を受賞したトーマス・ジェーン。
『パニッシャー』や『ディープ・ブルー』など、主に映画作品に出演しているアメリカの俳優である。
ミセス・カーモディ役/マーシャ・ゲイ・ハーデン
熱心なキリスト信者のミセス・カーモディ。この怪奇事件が起こる中、全ては人間への罰だという持論を唱えた。
ミセス・カーモディ役を演じているのは2000年『ポロック2人だけのアトリエ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したマーシャ・ゲイ・ハーディ。
カリスマ性を発揮した見事な演技に圧倒される。
霧の中に現れた化け物の正体とは?
スーパ-に立てこもった人々に次々と襲い掛かるのは、見たこともない巨大な昆虫のようなもの。
蝶のような蚊のようなものが何種類か登場する。しかし、巨大になればなるほど危険な存在となっていく。
口針で分厚いガラスを簡単に割って侵入することはできないので、彼らは何としてもそれらの侵入を阻止しなければならない。
また、濃霧のなかには得体のしれない化け物が潜んでいるので、外に出たものは命を落としてしまうのだ。
一体それらはどこからやってきたのだろうか。その化け物の正体も濃い霧に覆われてハッキリと登場しない。
果たしてこの世界にいる化け物なのか、異世界からきたものなのか。
見えないからこその怖さがあり、外に出ることを躊躇せずにはいられない。
自分なら大丈夫だと思った者が腰にロープを巻きつけて外に出た。
しかし戻ってきたのは、彼の下半身だけだったのである。
怪物より怖い!? 次第に失われていく秩序と理性
いつ襲ってくるかも分からない恐怖と、いつまでここにいればいいのかという恐怖に、心理状態が崩壊されていく。
外に出れば殺されてしまう、しかしここにいても助かる保障はない。
こんな極限状態が続くと、人は誰かを標的にすることを考えてしまうのだろう。
そんなとき、スーパーにいた軍人から「アローヘッド作戦」という発言を耳にする。
作戦についての詳細は語られていないが、人々はこの作戦が原因ではないかと疑い始めた。
すると標的は、軍人に向けられるようになった。彼らが起こしたことではなくとも、人々の目は彼らに向けられた。
同じ人間で同じ状況にいるにも関わらず、人々は軍人たちを攻め立てることで、自身の身を守ろうとしていたのだ。
軍人といえども武器も何も持っていなければ、人々と何ら変わりはないはずなのに、理性も秩序も崩壊してしまった。
外からの恐怖を利用した洗脳も!
怪物の恐怖と戦う一方で、神にすがる人々も現れ始めた。初めに口火を切ったのは、ミセス・カーモディである。
外には死の世界があり、それは人間への罰だという。初めは誰もが信じなかったが、次第に洗脳されていくように信じ始めてしまう。
そういった人が次々と増えていったのは、閉鎖された空間に長い時間居ると、何かに頼りたくなる本能だったのだろう。
しかしそれが集団ともなると、何とも分からない怪物を相手にするよりよほど驚異に感じてしまう。
人々は神にすがる行為により、安心感を得ていたのである。
ミセス・カーモディは神の裁きと叫び続け、人々を洗脳して思考停止状態にもっていった。
外からの恐怖を利用した、宗教への洗脳は人間をも変えてしまう恐ろしい”武器”ともなりうるのである。
観た人は欝になる!?衝撃のラストの展開はいかに!
”観ると欝になる”といわれれているのは、ラストのシーンにあるのだ。
この物語のほとんどは、彼らが集まっているスーパーマーケットが舞台になっている。
外に出ると正体不明の化け物に殺されてしまう、しかしそこに何がいるのかもわからない。
でもこのままずっとここに居ても命が保障されるわけではない。
主人公デヴィッドは意を決して、息子と他の3人の老人と女性を連れて車に乗り込むことに成功した。
霧の無いところに行けば、きっと助かるはずと思い込んで…。
でも霧が晴れることは無く、ガソリンも尽きてしまう。この状況で彼らが考えたことは何なのだろう。
諦めて化け物の餌食になることなのか、歩いてでも霧から遠ざかるのか。
しかし、彼らが出した答えは意外なものであった。彼らがその道さえ選ばなかったら、きっと今ごろは…。
何とも言えない展開に”欝”になってしまう。思い出すだけでも暗い気持ちになってしまう。
それがこの『ミスト』なのである。
参考元
- ・参照リンク:ひかりTV-光がテレビをかえてゆく
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