枢やな原作の『黒執事』は、張りめぐらされた伏線が多くあることでも知られている。そしてこの伏線を巡ってファンも様々な考察を上げている。ここでは、特に注目されているシエルの双子説から、アンダーテイカーの謎、そして使用人の考察までを追う。
華麗に散りばめられた『黒執事』の伏線と考察
枢やな原作による『黒執事』は、女性たちから絶大な支持を得ているダークファンタジーである。
また作者が華麗に散りばめた伏線により、ファンの間で様々な考察が上がっている。
なかでもファントムハイヴ家に纏わるもの、そしてアンダーテイカー(葬儀屋)、死者蘇生の謎、シエルの双子説などの多くが注目されている謎となっているのだ。
ここでは注目されている伏線について考察していく。
シエルが双子と考察されている理由とは
シエルともうひとりのシエルの違い(その1)
シエルの双子説はファンの間でも大きな盛り上がりをみせている。当初は、髪の分け目が違う描写ということもあり、双子説が浮上した。
より分かりやすいように、ここでは本物のシエルと思われる人物をシエル、現ファントムハイヴ伯爵を坊ちゃんと呼ぶ。
坊ちゃんの回想シーンで度々現れるのが、ヴィンセント・ファントムハイヴ伯爵が殺害された後、坊ちゃんが何者かに捕らえられたときのこと。
4巻ではちょうど襲撃されたときの描写があり、ある貴族が檻を覗いて二人分以上の価値があると言っている。しかし、ひとりであれば一人分の価値がある、という言い方にならないだろうか。また”ぼくたち”や”子供たち”のような言葉の不自然さも多々みられるのだ。
またシエルとリジーは許婚という関係だが、回想シーンでは外で遊びよく笑う、シエルの元気な姿が確認されている。
だがケルヴィン男爵と初めて会った夜会では、この子は身体が弱いからほとんど外には出ない、とヴィンセントが話していることと矛盾する。
シエルともうひとりのシエルの違い(その2)
サーカス編に出てきた回想シーンでは、ヴィンセントの左側に坊ちゃんが居るのに、ケルヴィン男爵にご挨拶をしなさいと言われて出した手は右手だった。
そしてサーカス団に入団したときには、大きなストレスがかかったせいか、セバスチャンすらもみたことが無いほどの喘息症状も発症している。
身体が弱いのは、ヴィンセントがいう”あの子”のはず。
また3巻の「切り裂きジャック編」では、セバスチャンがグレルと戦うシーンがある。
このとき、セバスチャンのシネマティックレコードには、指輪は私が取り出しましょうかと言っているシーンがある。
その指輪というのは、坊ちゃんがつけているファントムハイヴ当主の証である。シエルは自分を証明するものを奪われないように、飲み込んだのではないだろうか。
そして飲み込んだまま殺害され、坊ちゃんがセバスチャンと契約したときに取り出させた。だから血まみれになっていたと推測される。
ここにある伏線はほんの一部で、あまりにもスマートに描かれているため、どこに張られているかすべてを見つけ出すのは難しいだろう。
もしかしてリジーは感づいてる!?
ねぇシエル、あたし達何度も一緒に復活祭をお祝いしてきたよね。でもあたしがイースター・エッグを作ったのは 今年が初めてよ。
出典:『黒執事』14巻66話
by エリザベス(リジー)
リジーといえばシエルの許婚だが、彼女はもしかしたらシエルはシエルではないと感づいているのかもしれない。
知っているというより、違和感のようなものを感じていることは間違いないだろう。まず、坊ちゃんが咳をしているシーンには、少々驚いた顔を見せている。
初めは、シエルがなぜ喘息のような咳をしているの?という程度だったのだろう。ただ、その違和感は次第に大きくなっていく。
違和感に確実性を感じたのが、14巻のイースター辺りではないだろうか。このときリジーは坊ちゃんにイースターエッグを見せて、花柄が懐かしくないかと問う。
しかし、坊ちゃんの反応を見たリジーは呆然となっている。その花柄には、何かしらの思い出があったのかもしれない。
そこで坊ちゃんを試したかのような行動を起こしている。昔リジーが作ったというイースターエッグを、シエルが一番に見つけてくれた。だから今年も一番に見つけて欲しいという。
坊ちゃんはリジーの言葉に流されてしまったようだが、リジーがイースターエッグを作ったのは今回が初めてだったのだ。
だから昔と同じということはないのである。このあたりから、リジーは坊ちゃんはシエルではないと感じたのではないだろうか。
双子説を有力にした決定的な証拠!?
これまで様々な伏線からシエルの双子説を考察してきたが、双子説を裏付けるかのような描写も見られた。
先ほど紹介した坊ちゃんが何者かに捕らえられたシーンでは、檻に入れられてる”二人”に注目して欲しい。
髪の分け目や洋服、足枷から一見まったく同じように見えるが、血だらけになっている子供の腕をみると、焼印が見えるのは知っているだろうか。
捕らえられたときに貴族から、身体の一部に「崇高なる獣の印」を押された。坊ちゃんに押された焼印は背中だが、この子は右腕に確認されている。
あまりにも小さく描かれているが、それが坊ちゃんの背中にある焼印と同じ模様だと、わかっていただけるのではないだろうか。
そして、普段腕まくりしない坊ちゃんの右腕に焼印がないことは、6巻でのアンダーテイカーを笑わせた場面でハッキリしているのだ。
ヴィンセント殺害に女王関与か?
ヴィンセント殺害事件では、裏で糸を引いているのがヴィクトリア女王なのではないかと、まことしやかにささやかれている。
女王の若かりし頃から側近として仕えているジョンは、常にゴーグルのようなものをつけており、素顔は明かされていない。
その身体能力の高さから、彼は人間ではなくアンダーテイカー同様に、死神の離脱組ではないかとも考えられる。
ジョンほどの者であれば、ヴィンセントを殺害したり、タナカを刺すことくらい、簡単なことだろう。
ヴィクトリアは女王でありながらもどこか腹黒さを感じる。坊ちゃんにも、すべてを知った上で番犬を務めさせているのではないだろうか。
ヴィンセントが女王に殺害されたと考えるならば、知ってはいけない秘密を知ったとか、女王の気にそぐわないことをしたとも考えられる。
また緑の魔女のストーリーで、セバスチャンがサリンを海中に沈めたが、裏でジョンがしっかり回収していたということもあるかもしれない。
いずれにしろ、この先の女王の行動や言動にも、目が離せない。
タナカは柔術に優れているのになぜ刺された?
こちらに来てはいけません お逃げくださいシエル様はもう…あなた様には酷すぎ…ッ
出典:『黒執事』4巻19話
by タナカ
これまで多くの考察が上がっている中で、タナカの不自然さにも目を向けてみてはいかがだろうか。
気になるのは、ヴィンセントを殺害した犯人がジョンだとすると、なぜタナカにはトドメを刺さなかったのだろうか。
生き証人となれば不利になるのではないか。また、タナカは出刃包丁のようなもので刺された描写が見られる。
ジョンが犯人ならば、そんな武器は使わないだろう。だとすれば、ヴィンセントとタナカを刺した犯人は、別人とも考えられる。
坊ちゃんがタナカに助けを求めたとき、お逃げくださいと言っている。こちらに来てはならないと…。その言葉にも違和感を感じる。
そのすぐ後に、坊ちゃんは何者かにさらわれている。ファントムハイヴ家の事件を利用して、何者かが入り込んだということだろうか。
しかし、それではファントムハイヴ家に事件があることが露見しているということになる。そして、このときまだ火事は起こっていない。
悪の貴族であれば、そのくらい事前にわかりそうなものだが、誰一人としてそういう気配は感じられなかったのだろうか。
だが、タナカは柔術の達人であることも分かっている。それなのに、全く抵抗している素振りが見られないことにも違和感を感じずにはいられない。
柔術に優れたタナカの抵抗もなしに、刺すことができるとすれば、タナカが逆らえないほどの高貴な人物。そう考えることもできるのではないだろうか。
アンダーテイカーについての考察
アンダーテイカーの正体は何者か?
伯爵 それはしばらく君に預けよう 大事に持っていておくれ 小生の宝物なんだ
出典:『黒執事』14巻64話
by アンダーテイカー
登場人物の中でも多くの謎を秘めているのがアンダーテイカーだ。元は死神だったが、半世紀前に死神を離脱しているという。
坊ちゃんの誕生日が1875年で登場当初は12歳ということは、物語の舞台は1887年頃、そこから半世紀前というと1837年頃となる。
豪華客船編では「小生の大切なもの」として、メモリアルジュエリーが登場しているが、そこに彫られていたうちのひとつには、13july1866cloudia・P alexとある。
cloudiaはクローディア、Pというのはおそらくファントムハイヴ(Phantomhive)の略で、坊ちゃんの祖母くらいだろう。
そのメモリアルジュエリーはなぜ、アンダーテイカーの宝物なのか。歴代のファントムハイヴ家を見守ってきたということなのか。
アンダーテイカーが死神をやめた理由は、このクローディアという女性に何らかの関係があるのではないだろうか。
「魂はひとつしかない」に秘められたもの
アンダーテイカーは坊ちゃんに、魂はひとつしかないから大事にしろと何度も言っている。確かに本当のことだが、かなり深い意味があるようだ。
長い間ファントムハイヴ家を見てきて、歴代の伯爵の死を知っているからだともいえるが、一概にそれだけだとは考えにくい。
歴代の伯爵の死とは、一体どういったものだったのだろうか。坊ちゃんの父ヴィンセントは何者かに殺害されている。
では、坊ちゃんの祖父や曽祖父はどうだろうか。古くから女王の番犬として裏家業をしてきたファントムハイヴ家だが、死因は明かされていない。
だとすると、歴代の伯爵はすべて何者かに殺害されているとは考えられられないだろうか。ある一定の裏家業を越えると殺される、など。
女王のいいなりになって、裏家業に精を出すといつか消される?そういったことも、この先分かってくるのだろう。
アンダーテイカーが死者蘇生にこだわる理由とは
アンダーテイカーが死者蘇生の親元となっていることは、「豪華客船編」で明らかになったわけだが、次の「寄宿学校編」でも同様のことが見られた。
テイカーはなぜそこまで、死者蘇生にこだわっているのだろう。それはヴィンセントの死に関係があるのかもしれない。
ヴィンセントの遺体は火事で消失しているが、魂が死神に回収されたとはどこにも描かれていない。元死神だったテイカーなら、魂を保管することも可能だろう。
死神派遣教会をやめたということは、本来死神が行う業務をしないだけである。しかし、魂をかすめとることは不可能ではないだろう。
テイカーは死者蘇生の研究を成功させて、誰かしらを生き返らせようとしているのだろうか。そしてそれを一番必要としているのは…。
「ファントムハイヴ伯爵はまだいる」を考えてみる
かわいそうに骨の髄まで焼けてしまって あんな死に方じゃもう… ああでもファントムハイヴ伯爵はまだいるからね…
出典:『黒執事』22巻105話
by アンダーテイカー
アンダーテイカーは22巻で、ヴィンセントの写真を見て涙を流しながら、かわいそうに…と語っている。しかしその後、ファントムハイヴ伯爵はまだいると言う。
これは一体どういうことなのか。確かに坊ちゃんはファントムハイブ伯爵である。しかし、テイカーのいう伯爵とは別人ではないのだろうか。
そう考察できるシーンが、同じく22巻108話に見られる。
いいや まだだよ もう少し眠っておいで まだ目覚めるには早いからね
出典:『黒執事』22巻108話
by アンダーテイカー
アンダーテイカーはシエルに似た人物に何かを飲ませ、このように語った。そしてその人物の髪の毛は右分けである。
次のシーンでは坊ちゃんが慌てて起きる様子が描かれているが、同一人物とは考えにくい。ベッドや着ているものは同じに見えるが、窓や壁が違っている。
この場所はアンダーテイカー個人の家なのか、それともまた違う場所なのかは定かではない。
ただ、これが本物のシエルだとすれば違和感がある。坊ちゃんが悪魔と契約したときの駄賃として、シエルの魂を食らっているはず。
ということはこんな考察はどうだろうか。ヴィンセントの身体は骨になってしまったが、魂が死神に回収されたとは書かれていない。
そして、魂は悪魔に食われてしまったものの、身体は残っているシエル。つまりヴィンセントの魂をシエルの体に移して蘇生した。
そうだとしたらアンダーテイカーの「伯爵はまだいる」ということの意味が通じるのではないだろうか。
飲ませた液体は死者蘇生と繋がりがあるのか?
アンダーテイカーがシエルに似た人物に飲ませた液体、あれが本当に死者蘇生に関するものであれば、「豪華客船編」での実験はダミーとも考えられる。
本当はもう既に、死者蘇生の実験は成功していて、魂さえあれば蘇生できるのではないだろうか。それがあの液体に隠されているのかもしれない。
それとも、蘇生を維持させるためのものなのか、それが原液なのかすべてが謎に包まれているのだ。
アンダーテイカーの目的は、誰かを蘇えらせることだと考えられる。その人物はシエルなのかヴィンセントなのか、それともクローディアなのだろうか。
参考元
- ・『黒執事』コミック本1~24巻スクウェアエニックス
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