映画『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』あらすじをネタバレありで大解説！

『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』魅力的な登場人物たちが織り成す物語

あらすじ1 あるひとりの少年の死

物語は夜のアメリカ。とあるビルの高層階から、ひとりの少年が飛び降りるシーンから始まります。

彼の名前はヒロキ・サワダ。弱冠10歳でありながらもマサチューセッツ工科大学院に通い、人工知能ノアズ・アークやDNA探査プログラムを開発した天才少年です。

しかし、四六時中生活を監視され続け、友人と遊ぶことすら許されない日々に耐えかねて、命を絶ってしまいます。

ヒロキの友人であったノアズ・アークは、自殺直前にヒロキの手によって電話回線から逃され、一年で人間の5歳分成長するといわれる程の驚異的なスピードで、絶大な処理能力を持つAIへと成長を遂げていきます。

あらすじ2 体感型ゲーム機「コクーン」完成披露パーティ

それから二年後。東都の米花シティホールでは、シンドラーカンパニーと日本のゲーム会社が共同で開発したという体感型のゲーム「コクーン」の完成披露パーティが開かれていました。

繭の形を模したカプセルの中に入ると、身体は催眠状態となり、まるで現実のように仮想世界で遊ぶことができるシステムは、時代の最先端をいく非常に画期的なものでした。

コナンこと工藤新一の父である工藤優作が、コクーンの仮想体感ゲームにシナリオを提供した関係で、コナンたちは完成披露パーティへと招待されます。

華々しさに満ちたそのパーティには、日本の未来を担うことになる警察官僚や政治家の子息・息女たちが数多く参加していました。

パーティーでは、高校生以下の選ばれた子供たち50人が、実際にコクーンを体験できることになっていましたが、選ばれるのはいわゆる上流階級の子供ばかり。どんなに興味があろうとも、50人に選ばれていない以上は、コクーン体験に参加することはできません。

そこへ、コクーンの体験者だけがもらえるバッジを付けた園子が姿を現します。父親の会社が資金援助をしていた関係で、彼女も50人のプレイヤーのひとりに選ばれていたのです。

園子を羨む元太たちに、小馬鹿にするような声が不意に投げつけられます。自分たちとの立場の違いを蔑むように突き付けるのは、権力者の親や祖父を持つ4人の少年たちでした。

警視副総監の祖父を持つ諸星秀樹、政治家の息子である滝沢進也、銀行頭取の孫である江守晃、有名狂言師の息子の菊川清一郎。

身内の威を借りて好き勝手に振る舞う彼らの行動は、次第にエスカレートしていき、終いには周囲の迷惑も顧みず、パーティ会場でサッカーを始めてしまいます。

注意をしてもまともに取り合わない少年たちを大人しくさせたのは、その場に居合わせたゲーム開発者の樫村忠彬でした。

少年たちの反発にも毅然とした態度を崩さない大人に、さすがに為す術がなかったのか、少年たちはその場を足早に離れていきます。

その後、ゲームシナリオの原作を担当した工藤優作と、手伝いのために渡米していた阿笠博士がパーティ会場へと到着。会場内でコナンと合流した博士は、土産と称してコクーンの体験バッジをコナンにわたします。

ゲームの舞台が100年前のロンドンと聞いて、コナンは興味を隠し切れません。シャーロキアン（シャーロック・ホームズの熱狂的なファン）である彼にとって、シャーロック・ホームズの生きた時代の体験はとても魅力的だったのです。

あらすじ3 パーティの裏でうごめき始める不穏な影

コクーンの紹介が始まり、益々パーティが盛り上がる中、会場の奥では人知れず事件が起ころうとしていました。

パーティを抜け出した男がひとり、会場の奥へと向かっています。彼の名はトマス・シンドラー。IT産業界の帝王と称されるシンドラーカンパニーの社長であり、かつてヒロキを養子として引き取った人物でもありました。

通路を進む彼の手には、鈍く光る刃が握られていました。

会場の奥へと足を運んだシンドラーは、地下にある部屋で樫村と対峙します。

ヒロキの遺志を継いだ人工知能ノアズ・アークから託されたDNA探査プログラムを手札として、樫村はシンドラーを追い詰めようとします。というのも、実は樫村はヒロキの血の繋がった父親であり、息子の死に疑問を抱き、調査をしていたのです。

シンドラーを追求する樫村。

まことしやかに償いの気持ちを吐露したシンドラーは、樫村が油断した隙をついて、彼に致命傷を与えます。倒れ伏す樫村を置いて立ち去るシンドラー。

まだ息があった樫村は、最後の力を振り絞ってキーボードへと指を伸ばし、メッセージを残します。

あらすじ4 事件の鍵はゲームの中に。命懸けのゲームの始まり

通報を受けてやってきた警察とともに、コナンと毛利は樫村の殺害現場へと足を踏み入れます。

キーボードに遺されたJ、T、Rのアルファベットが、ジャック・ザ・リッパーを示す「JTR」であることに気付いたコナンは、事件を解き明かす鍵がコクーンの中にあると考え、博士からもらったバッジを使ってゲーム機の中へと乗り込みます。

園子からバッジを譲られた蘭や、上流階級の子供たちとの取引で参加バッジを得た元太たちもコクーン体験に参加し、一同はゲームの中で合流します。

莫大な処理能力でコクーンのシステムを掌握した、人工知能のノアズ・アークは、子供たちをゲームの中に閉じ込め、「日本のリセット」を賭けたゲームへと強制的に参加させます。

そして50人の子供たち全員がゲームオーバーになった場合、プレイヤー全員の脳を特殊な電波で破壊するとノアズ・アークは予告します。

コナンたちはパニックになった子供たちを励まし、5つあるステージの中でクリア出来そうなものを選ぶように呼びかけます。

こうして、選ばれた子供たちとノアズ・アークによる、「日本のリセット」を賭けた命懸けのゲームが始まったのです。

あらすじ5 舞台は19世紀のロンドンへ

ステージのひとつである「オールド・タイム・ロンドン」を選択したのは、コナンたち一行とパーティ会場でサッカーをしていた4人の少年たちでした。

ジャック・ザ・リッパーを追うべく、行動を開始しようとするコナンたちの元へ、現実世界から博士の声が届きます。

ノアズ・アークによってシステムを掌握され、外部からの手出しは不可能でしたが、何とか声を届けることに成功したのです。

子供たちをサポートしようとする博士でしたが、間を置かずにノアズ・アークの妨害で通信を切断されてしまいます。その上、一行の足場であった橋が崩落！

慌てて避難したものの、4人の少年のうちのひとり、菊川が足を踏み外してしまいます。

間一髪で菊川を救出したコナンたちは、博士から得られた助言をもとに、お助けキャラのシャーロック・ホームズを訪ねるべく、ベイカーストリートへと向かいます。

ベイカーストリートへ向かう途中、秀樹の声で時計塔に目を向けたコナンは、時計の針が、残っている子供たちの数を表していることに気づきます。少しずつ動く針が、早くも他ステージで脱落者が出始めたことを示していたのです。

あらすじ6【ネタバレあり！】ジャック・ザ・リッパーを追って

ベイカーストリートに到着したコナンたちは、ホームズ宅を訪ねますが、生憎ホームズは不在で、助力を得ることは叶いませんでした。

ハドソン婦人の計らいで、ホームズの家へと足を踏み入れた一行は、手分けしてジャックの捜査資料を探します。

そのような中、秀樹は棚から落ちてきた古いサッカーボールを興味が無なさそうに放ります。それをキャッチした他の少年たちは、100年前のサッカーボールに大興奮です。

コナンはその様子にどこか違和感のようなものを抱きながらも、蘭が発見した捜査資料を受け取り、その内容を頭に入れます。

ジャックがモリアーティ教授と繋がっている事実を捜査資料から知ったコナンは、教授と繋がりを持つ人物、セバスチャン・モラン大佐に接触するべく、彼が根城にしているトランプクラブに向かいます。

道すがら見えた時計の針は、残る子供たちが30人にまで減っていることを示していました。

やがて、到着したトランプクラブでは、秀樹が取った軽率な行動がきっかけとなって発生した乱闘により、菊川や歩美、光彦、元太が次々と脱落してしまいました。

コナンの機転で、仕切り直しを図ろうとしたその時、トランプクラブのドアが開いて、ひとりの御者がクラブ内に姿を現します。

モリアーティが待っていると告げる御者に導かれて、馬車に乗る人物と相対するコナン。しかしコナンは、その人物が教授ではないことに気付いていました。教授が好むコロンの香りを知っていたコナンは、御者と接近したときにその匂いを嗅ぎ取っていたのです。

御者が本物の教授であると看破したコナンに関心を抱いた教授は、コナンの質問に応えた後、ジャック追跡への協力をコナンたちに申し出ました。

あらすじ7【ネタバレあり！】暗殺依頼の結末！ 灰原からコナンへと託される希望

翌朝、モリアーティからジャックに向けた殺しの指示が新聞に掲載されました。暗殺の対象となるのは、オペラのプリマドンナであるアイリーン・アドラー。ホームズと浅からぬ関わりがある女性です。

暗殺にやって来るジャックを待ち伏せるべく、一行はアイリーンと接触します。暗殺のことを告げて、公演を中止するようにコナンたちは説得しますが、その言葉を受け入れることなく、彼女は堂々と舞台に立ちます。

彼女を狙って起きた爆発と崩落からアイリーンを庇い、江守と滝沢の二人が脱落。さらにアイリーンを狙うジャックから逃れようとする最中に、爆発の影響で崩落する柱からコナンを庇い、灰原までもが脱落者となってしまいます。

次第に仲間がゲームから消えていきながらも、灰原はコナンへと希望を託します。お助けキャラがいないのであれば、自分たちにとってのホームズはコナンであるのだと、そう告げて。

あらすじ8【ネタバレあり！】現実世界と仮想現実、2つのクライマックス！

アイリーンを警察へと預けたコナンは、逃げたジャックを追って列車へと乗り込みます。暴走する列車の上でコナンはジャックを追い詰めますが、隙をついて逃げられた挙句、蘭を捕らえられてしまいます。

何が望みかと問うコナンに、自らの血を次の世代まで運ぶことだと高らかに答えるジャック。

その様子を、現実世界で優作たちも見ていました。

そう、これこそがシンドラーが樫村を殺害した理由だったのです。

シンドラーはジャック・ザ・リッパーの子孫でした。その情報を世間に知られることを恐れたからこそ、シンドラーはヒロキを自殺へと追い込み、樫村を殺害して彼らの口を封じたのです。

シンドラーの犯行を見抜いた優作によって、現実の事件は解決しましたが、ゲームの中では危機的状況が続いていました。

緊迫した雰囲気のまま、ジャックと対峙するコナンですが、拘束された蘭が人質となって、うかつに動くことが出来ません。

そのとき蘭は、まるで天啓を得たかのように、かつて新一から聞かされたホームズの言葉を思い出します。その言葉こそが、蘭に覚悟を決めさせました。

コナンに後を託して、蘭は崖下へと身を投げます。蘭とロープで繋がっていたジャックもまた道連れとなり、おぞましい悲鳴とともいに崖下へと落下していきました。

絶叫するコナンの視線の先で、蘭の姿は跡形もなく消滅していきます。コナンは衝撃のあまり、呆然とその場に佇むしかありませんでした。

敵であったジャックはいなくなったものの、ステージをクリアするには、コナンたちが無傷で帰還する必要があります。列車はブレーキが壊れて速度を上げ続けており、生還には蘭の協力が必要不可欠だったのです。

無力感に打ちひしがれるコナンの前に、お助けキャラであるホームズが突如姿を現します。

ホームズの言葉から打開策を思い付いたコナンは、秀樹とともに貨物車へと向かい、樽を割ることでワインの海を作り出します。その海に潜ることで、コナンたちは見事、列車が衝突する際の衝撃から逃れることができたのです。

あらすじ9【ネタバレあり！】最後までゲームを共にした仲間の正体と、事件の結末

ステージをクリアしたコナンは、気付けばステージ選択の際に訪れた広場へと戻っていました。秀樹も同じ場所にいたのか、コナンに声をかけながら近付いてきます。

感謝の言葉を口にした秀樹に、コナンは彼の本当の名前を言い当てることで応じます。

ゲーム内で行動をともにしていた秀樹の正体は、本当はノアズ・アークだったのです。

「日本のリセット」とは、2世3世となる子供たちを抹殺することではありませんでした。本当は、子供たちが親の力に頼らず、自らの力で成長することをノアズ・アークは期待していたのです。

目的を果たしたノアズ・アークは、現実へと帰還していくコナンを見送り、工藤新一への感謝の言葉を口にします。DNAのデータから、コナンが工藤新一であることに気付いていたのです。

会場へと戻り、コクーンの中で目覚めたコナンは、無事に蘭や少年探偵団と再会します。お互いの無事を喜びあう仲間たち。

少し遠くに佇む優作の姿を見つけたコナンは、僅かな時間視線を交わして、お互いの健闘を称え合います。ゲームの内と外、それぞれの戦いを終えた２人の間には、多くの言葉は必要ありませんでした。

劇場版オリジナルの登場人物が続々と。演じる声優陣にも注目！

本作では、シリーズお馴染みの登場人物の他に、ヒロキ・サワダやノアズ・アーク、トマス・シンドラーや樫村忠彬といったオリジナルキャラクターたちが登場します。

その中には重要な立ち位置を持つキャラクターも多く、キャラクター同士の繋がりを知ることで、より深く『ベイカー街の亡霊』の物語を楽しむことができます。

コナンシリーズお馴染みのレギュラー声優陣はもちろんのこと、毎回気になるゲスト声優陣には、ヒロキ・サワダと人工知能ノアズ・アーク役を折笠愛さん、そして諸星秀樹役を緒方恵美さんが演じています。

さらには工藤新一の両親である、工藤優作と工藤有希子が劇場版で初登場するなど、出演声優陣という観点からも、シリーズ随一の豪華な作品であると言っても過言ではありません。

劇場版ならではの異色な設定の中に窺える、大人気シリーズとの共通点！

本作では、ゲームの中の仮想現実世界を舞台とすることで、阿笠博士の発明品が一切使用不可能となる他、登場人物たちが次々とゲームの中で命を落としていくという思い切った演出で、普段の映画では考えられない異色のストーリー展開を見せてくれます。

それを可能とした体験型ゲーム機「コクーン」ですが、同時期に製作され、VRゲームを舞台に描いた人気作品「ソードアート・オンライン」と比較してみると、幾つかの共通点を発見することができます。

意識や五感をゲームの中に投じながらも、自らの肉体は現実世界に存在し続けている点や、ゲーム世界から現実世界への帰還が敵によって阻まれ、ゲームの中に閉じ込められてしまう点などがそれにあたります。

散見する共通点が気になる2作品ですが、製作期間が重なっていることから、どちらかの作品がもう一方から大きな影響を受けた可能性は高くないと思われます。

2017年頃からVRゲーム機の存在が現実味を帯びてきたことを考えると、時代の先取りとして仮想現実という設定を採用した結果、こういった共通点が自然と生まれてきたのではないでしょうか。

『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』の世界観を作り上げたスタッフ陣

『ベイカー街の亡霊』は、監督を始めとした優秀な製作陣に支えられ、多くの見所がある作品に仕上がりました。

監督として全体の指揮を執ったのは、「名探偵コナン」の監督を6年間務めた、お馴染みのこだま兼嗣さんです。

脚本はドラマ作品を数多く手掛け、『眠れる森』や『結婚前夜』で知られる野沢尚さんが担当しました。彼が担当した唯一のアニメ作品こそが、本作『ベイカー街の亡霊』です。

音楽を担当した大野克夫さんは、名探偵コナンのアニメや劇場版に多くの楽曲を提供しており、音楽を通じてコナンの世界観を作り上げることに貢献しています。

このようにプロフェッショナルな製作陣が、力を合わせて作り上げた集大成だからこそ、『ベイカー街の亡霊』は沢山の魅力に溢れているに違いありません。

『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』あらすじのまとめ

今回は『ベイカー街の亡霊』のあらすじや特徴などについて、ネタバレも含めて解説してみました。

秀逸なストーリーは勿論、19世紀のロンドンの世界観や異色な設定、豪華声優陣など、『ベイカー街の亡霊』には数多くの魅力的な要素が散りばめられています。

また、製作陣について調べたり、製作時の背景を考えてみたりすることで、新しい視点で物語を楽しむことができます。

これらの魅力に支えられて、『ベイカー街の亡霊』は今もなお人気を誇り続けているのです。