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三島由紀夫の同名小説が原作で、2005年に公開された。原作は、三島の長編小説『豊饒の海』シリーズの第1部にあたる。過去には吉永小百合、12代目市川團十郎主演でドラマ化されたり、2代目松本白鸚と佐久間良子で舞台化されたりしたが、今作が初めての映画化となる。
主演は妻夫木聡と竹内結子で、第29回日本アカデミー賞優秀男優賞、優秀女優賞にそれぞれ選出された。またヒロインの大叔母・月修寺門跡を演じた若尾文子が、18年ぶりの映画出演ということでも話題になった作品だ。
侯爵家の1人息子・松枝清顕(妻夫木聡)は、幼いころ華族の優雅さを身につけさせたいという父の意向のもと、伯爵家の綾倉家に預けられていた。そこで清顕は綾倉家の1人娘・聡子(竹内結子)に出会う。2人は互いに好意を持って育つが、18歳になった清顕は聡子に素直に接することができない。
そんななか、聡子に宮家の子息との縁談話が持ち上がる。最初は気に留めない様子を見せていた清顕だが、聡子の結婚の勅許が下りると彼女への愛の深さに気づいてしまう。どうしても聡子を諦めきれない清顕は、綾倉家の侍女・蓼科(大楠道代)を利用して聡子と再会する。想いが通じあった2人は密会を重ねるが、それは許されない禁断の愛の始まりだった。
勲功華族である松枝家の1人息子。学習院高等学校の学生で18歳。幼いころに行儀見習いのため、綾倉家に預けられていた。聡子とは姉弟のようにして育ち、彼女に対して好意を持っているが、自尊心が高い性格ゆえ、素直に接することができない。
堂上華族の綾倉家の1人娘。清顕より2つ年上の20歳。清顕とは姉弟同然で育ち、成長してからは彼を恋慕っていた。しかし清顕の子どもじみた態度に失望し、宮家の子息との縁談を受け入れることを決意する。婚約後に清顕の思いを受け入れ、密会を重ねる。
清顕の友人で学習院高等学校の学生。清顕の高慢な態度をたしなめるほど、親しい関係。剣道を嗜んでいる。聡子の美しさに魅了されている。
松枝家で聡子を見初め、結婚を申し込む。洋楽のレコードを収集するなど、時代の先端を行くものに対しても理解がある。
清顕の父。父が明治維新の功臣であったため、爵位を授かった。優秀な2人の兄がいたが若くして亡くなったため、松枝家の当主になった。いわゆる成り上がりであるが、現在は綾倉家よりも財力がある。
清顕の母。20歳になった聡子にさまざまな結婚話を持っていくが、毎回断られるため、綾倉家や聡子のことをよく思っていない。
聡子の父親であり、堂上貴族・綾倉家の当主。経済的に困窮しているところを、松枝家から援助を受けるが、内心は成り上がりである松枝家のことを良く思っておらず、見下している。
聡子の母。汽車で大阪に旅立つ聡子に同行する。おとなしく目立たない存在。
綾倉家の侍女であり聡子と清顕の密会を手助けする。綾倉伯爵の愛人でもあり、聡子がまだ幼いころに伯爵から聡子に関してあることを命じられる。
聡子の大叔母。奈良の月修寺の門跡。松枝家に招かれた際に見つけた犬の死骸を弔う。
清顕の祖母。明治維新の功臣だった夫を誇りに思っており、清顕のことも可愛がっている。
『春の雪』は、三島由紀夫の同名小説が原作となっています。小説は4部構成の長編小説『豊饒の海』シリーズの、第1部にあたります。
三島由紀夫が古い上流階級を意識して書いたといわれている『春の雪』であり、映画でもその世界観はたっぷりと味わえます。劇中の雅で優雅な雰囲気は、現代の日本ではなかなか見られません。
三島由紀夫が描いた耽美な世界観を見事に映像化した作品で、生前の彼と交流があった美輪明宏も絶賛したほどです。
映画『春の雪』の見どころの1つとして忘れてはいけないのが、聡子役の竹内結子の美しさです。公開当時、竹内結子は25歳でした。女優としても、代表作に恵まれた時期でもあります。
そんな彼女は女優としての自信や充実感にあふれ、25歳とは思えないほどの貫禄さえも感じられます。
劇中の華やかなドレスや振袖を身にまとった、伯爵令嬢の姿も文句なしに美しいのですが、清顕と密会を重ねるごとに色気があふれてくる聡子の姿には、思わずドキッとさせられます。
『春の雪』には、モデルになった事件はありません。松枝家のモデルはありますが、物語は実際の事件を脚色したりしたものではなく三島由紀夫のオリジナルです。
また映画では清顕と聡子の重要なシーンで、タイトルにもある雪が演出で使われており、見る側に強い印象を残します。「春の雪」とは俳句などでもよく使われる言葉で、冬の雪と違って雪片が大きく溶けやすいため、降るそばから消えて積もることがないものといわれています。
そんな春の雪の意味を頭に入れて、映画を見ると清顕と聡子の関係につながるものがあり、また映画の世界が奥深いものに感じられます。
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