1995年に公開された映画「セブン」(日本での公開は1996年)は、スタイリッシュな映像とショッキングな内容で当時かなりの話題作となりました。公開から20年以上が経過した現在でも、サイコサスペンスの名作に挙げられる「セブン」。今回はこの「セブン」の魅力について紹介します。
「セブン」の簡単なあらすじ
新人刑事のミルズとベテラン刑事のサマセットは、ある殺人事件の現場で異様な死体を発見します。
その現場で、犯人が残したと思われる「GLUTTONY(大食)」と書かれた文字を見つけます。
次の殺人事件でも同様に犯人が残した文字が見つかり、どうやら犯人はキリスト教の「7つの大罪」をなぞらえて犯行に及んでいることがわかりました。
残された手がかりから犯人の部屋を突き止めると、そこには被害者の写真と共になぜかミルズの写真がありました。
そんな中、突然犯人が自首して来るのですが・・・。
「セブン」の登場人物
「セブン」に登場する主なキャストをまとめてみました。
若き熱血刑事「デイヴィッド・ミルズ」
サマセットの後任として赴任してきた若き刑事で、本作の主人公。
演じるのは、ブラット・ピットです。
作中でミルズは犯人を追跡中に腕を骨折して三角巾姿となります。このシーンではスタントマンを使用していなかったので、ブラッド・ピットが本当に骨折してしまい、ストーリーに若干の変更が加えられたのは有名なエピソードです。
ブラッド・ピットは、「リバー・ランズ・スルー・イット」や「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」などに出演していて密かに人気がありましたが、「セブン」に出演してその人気を確固たる物にしています。
定年退職間近の老刑事「ウィリアム・サマセット」
1週間後に定年退職を控えた殺人課の老刑事「サマセット」を演じるのは、モーガン・フリーマン。
モーガン・フリーマンは、「セブン」出演時には既に有名でした。「許されざる者」、「ショーシャンクの空に」など多くの話題作に出演し、「ドライビングMissデイジー」ではゴールデングローブ賞男優賞を受賞しています。
また、2004年には「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー助演男優賞を受賞しています。
憂いを帯びつつも美しい「トレイシー・ミルズ」
ミルズの妻、トレイシーは元小学校の教師。出世のため舞台となる街にミルズと共にやって来るも、トレイシーは治安の良くないこの街が嫌いです。
サマセットを夕食に招いたことがきっかけとなり、ミルズには打ち明けていない悩みを相談します。
トレイシー役を演じるのは、グウィネス・パルトロー。
「セブン」での美しい妻役で注目され、1998年公開の「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー賞主演女優賞、ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞しています。
連続殺人鬼「ジョン・ドゥ」
「7つの大罪」になぞらえて、恐ろしい連続殺人をしていく犯人。
計画に緻密な殺人をするジョン・ドゥの目的とは・・・?
犯人の名前とされる「ジョン・ドゥ」とは、日本語で言うところの「名無しの権兵衛」という意味であり、アメリカでは身元不明の死体に名付けられます。
監督は鬼才・デヴィッド・フィンチャー
「セブン」の監督は、「若き鬼才」と称されるデヴィッド・フィンチャーです。映画好きな方でなくとも、この監督の名前を一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
監督作品はまだ多くないものの、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」や「ソーシャル・ネットワーク」などのヒット作を監督し、これらの映画ではいくつかの賞を受賞しています。
デヴィッド・フィンチャーの監督デビューは1992年のシガニー・ウィーバー主演「エイリアン3」になります。
デビュー作であった「エイリアン3」はトラブル続きの中で製作されますが、結果は惨憺たるもので駄作と酷評され、興行収入的にも失敗しています。
この苦い経験からデヴィッド・フィンチャーは「新たに映画を撮るくらいなら、大腸癌で死んだ方がマシだ」と述べたと伝えられています。
「エイリアン3」から3年後に公開された2作目の「セブン」で一躍脚光を浴び、デヴィッド・フィンチャーは人気監督の仲間入りを果たします。
「セブン」以降は、デヴィッド・フィンチャーの監督作品にはブラッド・ピットが起用されることが多く、これまでに「ファイト・クラブ」、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」でタッグを組んでいます。
また、2013年に公開された「ワールド・ウォー Z」に出演したブラッド・ピットは、続編の監督としてデヴィッド・フィンチャーを希望しているとのことなので、もしかしたら今後、またこのコンビでの作品を観ることが出来るかもしれません。
ブラッド・ピット扮する「タイラー・ダーデン」は、映画ファンのなかで未だにマイ・フェイバリット・キャラクターの上位に選ばれる根強い人気の悪役です。『ファイト・クラブ』は、映画作品として公開から18年が経とうとしている現在も、世界各地の映画専門雑誌において歴代映画ベストランキングで上位常連の名作です。今回はその作品の魅力に迫りたいと思います。
デヴィッド・フィンチャーとブラッド・ピットがタッグを組んだ映画「ファイト・クラブ」については、こちらの記事でも紹介されているので気になる方はぜひチェックをしてみてくださいね。
オープニング・クレジットも話題に!
「セブン」が公開されるとその本編はもちろんのこと、もう1つ話題になったものがありました。
それが、カイル・クーパーの製作したオープニング・クレジットです。
オープニング・クレジットとは、原作者や監督、主要な出演者だけが表示され、通常は映画の冒頭に流れるようになっています。日本のアニメのオープニングでも使用されていますね。
当時、オープニング・クレジットは既に廃れていましたが、「セブン」で見事なオープニング・クレジットが披露され、後に多くの映画でもこの手法は再び使用されるようになります。
2014年に公開された映画「GODZILLA ゴジラ」のオープニング・クレジットもカイル・クーパーが手がけています。
こちらのオープニング・クレジットでは、出演者の過去の作品名が隠しメッセージとして一瞬だけ表示されます。「セブン」とはまた違ったカイル・クーパーのセンスが光る作品で、ファンからは大絶賛されています。
カイル・クーパーは、近年では映画以外にも海外テレビドラマ、ゲームのタイトルデザイナーとしても活躍しています。カイル・クーパーが過去に携わった作品は、彼が設立した会社「Imaginary Forces」,「Prologue Fims」のサイトで見ることが出来ます。
「WORK」からImaginary Forces社の過去作品を見ることが出来ます。
「7つの大罪」とは?
「セブン」ではキリスト教の「7つの大罪」をなぞらえた殺人事件が起こります。
この「7つの大罪」とは、一体どういうものなのでしょうか?
元々はカトリック教会の用語
映画「セブン」のモチーフとなっているのは、キリスト教の「7つの大罪」です。
Wikipediaによると、「7つの大罪」は次のように説明されています。
七つの大罪(ななつのだいざい、ラテン語: Septem peccata mortalia、英: Seven deadly sins)は、キリスト教の西方教会、おもにカトリック教会における用語。ラテン語や英語での意味は「七つの死に至る罪」だが、「罪」そのものというよりは、人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指すもので、日本のカトリック教会では七つの罪源(ななつのざいげん)と訳している。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E3%81%A4%E3%81%AE%E5%A4%A7%E7%BD%AA
罪そのものではなく、そこに至る過程が重要視されます。
この「7つの大罪」は、高慢、物欲、ねたみ(嫉妬)、憤怒、色欲(肉欲)、貪食、怠惰です。
映画「セブン」では、「GLUTTONY(貪食)」、「GREED(物欲)」、「SLOTH(怠惰)」、「LUST(色欲)」、「PRIDE(高慢)」、「ENVY(ねたみ)」、「WRATH(憤怒)」の順で罪と関連する殺人事件が起こります。
現代における「7つの大罪」
2008年3月にバチカンにあるローマ教皇庁は新しい「7つの大罪」を定めました。以下が発表された内容になります。
◎Environmental pollution
◎Genetic manipulation
◎Accumulating excessive wealth
◎Inflicting poverty
◎Drug trafficking and consumption
◎Morally debatable experiments
◎Violation of fundamental rights of human nature
これらをそれぞれ翻訳すると、次のようになるそうです。
◎環境汚染
◎遺伝子操作・遺伝子改造
◎過度な裕福さ
◎貧困
◎麻薬中毒
◎道徳的に議論の余地がある実験(人体実験)
◎基本的な人権の侵害
他にもある「7つの大罪」を題材にした映画
「セブン」以外にも「7つの大罪」を題材にした映画を紹介します。
「七つの大罪」
1953年に公開された映画「七つの大罪」は、7人の監督がそれぞれ「7つの大罪」をテーマにして撮影したオムニバス映画です。
各エピソードのタイトルは順番に、「欲ばりと怒り」、「怠けもの」、「色好み」、「ねたみ」、「大喰らい」、「見えっぱり」、「第8の罪」となっています。
「無防備都市」でカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞したロベルト・ロッセリーニが第4話「ねたみ」を、映画「肉体の悪魔」で一躍有名になったクロード・オータン=ララが第6話「見えっぱり」を監督しています。
「新・七つの大罪」
1953年に公開された「七つの大罪」の続編として、1962年に「新・七つの大罪」が公開されました。こちらも前作同様にオムニバス映画となっています。
各エピソードのタイトルは順番に、「怒りの罪」、「羨みの罪」、「大食いの罪」、「淫乱の罪」、「怠けの罪」、「傲慢の罪」、「貪欲の罪」となっています。
こちらの作品でも著名な監督が各エピソードを担当し、それぞれ特色のあるストーリーを展開しています。
◎「妬みの罪」・・・監督は「Mr.レディMr.マダム」、「Mr.レディMr.マダム2」のエドゥアール・モリナロ。
◎「大食いの罪」・・・監督は映画ファンの間ではカルト映画として人気のある「まぼろしの市街戦」のフィリップ・ド・ブロカ。
◎「淫乱の罪」・・・監督はミュージカル「シェルブールの雨傘」でカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞したジャック・ドゥミ。
◎「怠けの罪」・・・監督はヌーヴェルヴァーグの巨匠であるジャン=リュック・ゴダール。
◎「傲慢の罪」・・・監督は「素直な悪女」や「バーバレラ」のロジェ・ヴァディム。
◎「貪欲の罪」・・・監督は「美しきセルジュ」、「主婦マリーがしたこと」のクロード・シャブロル。
「JUDGE/ジャッジ」
2013年に公開された映画「JUDGE/ジャッジ」。原作は「月刊少年ガンガン」に連載されていた外海良基さんの「JUDGE」で、コミックとしては全6巻が出版されています。
「JUDGE/ジャッジ」は、7人の登場人物が閉鎖された空間に閉じ込められたところからストーリーが始まります。
動物のきぐるみを被せられた7人にはそれぞれ「7つの大罪」にちなんだ罪があり、投票で処刑する罪人を選ぶことになるのですが・・・。
出演は瀬戸康史さん、有村架純さん、佐藤二朗さんなどです。
映画「セブン」にまつわるアレコレ
映画「セブン」にまつわる色々なエピソードを集めてみました。これを読むと、また違った見方が出来るかもしれません。
サマセット役はアル・パチーノが候補だった
「セブン」が製作される段階では、サマセット役としてアル・パチーノの名前が候補に挙がっていました。
また、ミルズ役にデンゼル・ワシントンの名前が挙がっていたそうですが、後にデンゼル・ワシントン本人がオファーを断ったことを後悔していると答えています。
「セブン」がきっかけで熱愛に!
「セブン」で夫婦役を演じたブラッド・ピットとグウィネス・パルトロー。この映画がきっかけとなり二人は恋に落ち、1996年に婚約しますが翌年に破局を迎えています。
破局に至った理由については、グウィネス・パルトローは次のように述べています。
私は子どもだった。出会った時はまだ22歳。40歳になってやっと周りがよく見えるようになったのに。22歳で(結婚の)決断なんてできない。私にはまだ早すぎた。彼は私にはもったいない人だった。
出典:http://dramanavi.net/news/2015/01/post-3386.php
その後、二人はそれぞれ別の人と結婚しています。
意外なカメオ出演
「セブン」の脚本家であるアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーは、死体役として本作に出演しています。ただし、ジョン・ドゥの被害者としてではなく、冒頭でモーガン・フリーマン演じるサマセットがブラッド・ピット演じるミルズと出会うシーンで登場する死体役です。
また、モーガン・フリーマンの息子で俳優となったアルフォンソ・フリーマンが指紋採取係としてカメオ出演しています。
ミルズとトレイシーが暮らす家では犬が登場しますが、実はこの犬、ブラッド・ピットの愛犬だそうです。
別のエンディングが用意されていた
「セブン」の脚本家であるアンドリュー・ケビン・ウォーカーは、実は複数のエンディングを用意していたそうです。
制作サイドは本作のエンディングではなく別のエンディングを希望していたのですが、監督であるデヴィッド・フィンチャーと、出演者であるモーガン・フリーマンがこの結末を敢えて選んでいます。
エンディングをどう受け取るかは観客次第!?
「セブン」のエンディングでは、現在もネット上では色々な意見が見られます。また、このエンディングについては考察サイトや、事件の詳細を細かく説明してあるサイトなども多数あります。
どのようなエンディングがベストだったのかは観客の好みによって変わってくるのでしょうが、それでも「セブン」が公開から20年以上の時間が経過しているにも関わらず、現在も名作として挙げられることに異存がある方はいないのではないでしょうか。
参考元
- ・参照リンク:セブン (映画) - Wikipedia
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