米林宏昌監督は、スタジオジブリ時代に『借りぐらしのアリエッティ』や『思い出のマーニー』などの作品を送り出してきました。そんな米林監督がジブリ退社後、新たに設立したスタジオポノック第1回長編作品として送り出したのが『メアリと魔女の花』です。本作は美術面などで素晴らしい作品となっていますので、紹介していきます!
『メアリと魔女の花』のあらすじ
かつて魔女の国から「夜間飛行」という不思議な力を持つ花の種が、赤毛の魔法使いの少女によって盗み出されるという事件が起こります。
少女は追っ手から逃げることに成功しますが、力尽きて森の中へ落下して、「夜間飛行」の種をもその場所に落としてしまいます。
この事件から時は流れて、田舎の古い屋敷「赤い館」に住むシャーロット大おばさまの元に赤毛の少女メアリが引っ越してきます。
メアリはある日、黒猫のティブに導かれるように、森の奥へ奥へと進んでゆくと、そこで7年に1度花を咲かす「夜間飛行」を発見します。
青く輝く「夜間飛行」の魅力に惹きつけられたメアリは「夜間飛行」を持ち帰り、一夜限りの魔法の力を手に入れるのでした。
魔法の力を手に入れたメアリは箒に乗って、ティブともども空を飛んで行くうちに、雲海の中にそびえ立つ魔法世界の最高学府・エンドア大学へやってきます。
メアリはエンドア大学の校長のマダム・マンブルチュークに魔法の力を認められ、エンドア大学への入学を許可されるのでしたが…。
主人公メアリの声を担当するのは若手人気女優の杉咲花!
赤い館村に引っ越してくる物語の主人公メアリの声を担当するのは杉咲花です。
好奇心旺盛なメアリは屋敷の人たちのお手伝いをしようと試みますが、その気持ちが空回りする失敗の連続で落ち込んでしまいます。
また、メアリは赤毛のくせ毛にもコンプレックスを持っています。
杉咲花は、失敗して自信をなくしてしまうメアリの心情を声のトーンを上手く変えながら表現して芸達者なところを見せています。
一方で、勇気を持って前に進むメアリの冒険心がピーターのピンチを救うのですが、そうしたメアリの芯の強さを力強く声で演じているところも素晴らしいです。
メアリの相手役ピーター役は神木隆之介!
映画のヒロイン・メアリの相手役として登場するピーターの声を、米林監督の『借りぐらしのアリエッティ』などジブリ作品と縁のある神木隆之介が担当します。
ピーターは、最初はメアリのくせ毛をバカにするなど嫌味なところもあるキャラとして登場します。
しかし、お互いに相手の人間性を知るようになると二人の仲は縮まっていき、ピーターは追っ手からメアリを助けるために自分の身を犠牲にする勇気を見せます。
ピーターの少年らしい初々しさと男らしさの両方を、神木隆之介の声で上手く表現しています。
『魔女の宅急便』を彷彿させる魔法の箒と黒猫の登場!
出典:amazon作品では、ツインテールで髪の毛を結ぶメアリの姿が『となりのトトロ』のメイを彷彿とさせたりするなど、ジブリの過去の作品をイメージさせるものが随所に登場します。
その中でも、メアリの相棒となる黒猫ティブと魔法の力を得て箒に乗るメアリの姿は『魔女の宅急便』を彷彿させます。
ただし、『魔女の宅急便』のキキが物語の登場から魔法の箒を自在に操ったのに対して、魔法に慣れてないメアリは最初は苦労します。
魔法の箒は、最初はメアリの言うことを聞かずに暴れたりして、メアリが箒の動きを制御するのに悪戦苦闘する姿が描かれます。
そうした一筋縄ではいかない、魔法の箒にメアリは生き物ように接するところが映画のユニークな部分となっています。
また、魔法の箒で飛ぶ時の空に浮かんでゆく浮遊感や、雲の中を駆け抜けるスピード感も素晴らしい映像で表現されています。
特にメアリを乗せた箒が垂直に地面に落下していく場面では、カメラアングルが見事でスリリングな映像に仕上がっています。
そして、メアリのパートナーとなる黒猫ティブは愛想がないところもありますが、メアリを「夜間飛行」に導いたり危機を知らせるなど重要な役割を物語の中で担います。
「でほぎゃらりー」も参加する美術!
『メアリと魔女の花』には、スタジオジブリの手描き美術の技術を次世代に引き継ぐために設立された「でほぎゃらりー」が背景美術として参加しています。
「でほぎゃらりー」が担当した背景美術は、青々と茂る緑の表現など、スタジオジブリ仕込みの技術の高さは印象的です。
また、映画冒頭に魔女によって「夜間飛行」が盗み出される場面は赤々と燃える炎と「夜間飛行」の放つ青の光との色彩の対比が見事です。
そして、メアリが入学することになる、魔法世界の最高学府・エンドア大学ですが、ヨーロッパの古い建物をイメージさせる石造りの重厚な外観をしています。
しかし、建物の中に入ってみるとエレベーターがあったり、ドクター・デイが移動に使うクモ型の乗り物など、文明化された世界が広がります。
古い伝統的な文化と機械文明が融合された独特の美術様式で、エンドア大学は表現されています。
その他にも空中の生き物たちのデザインは『崖の上のポニョ』に登場する魚を彷彿させたり、まるで本物のような水の表現など作品の中で素晴らしい美術の表現が多数登場します。
SEKAI NO OWARIのテーマ曲とハンマー・ダルシマーの不思議な音色!
「森と炎のカーニバル」や「RPG」などファンタジックな世界観の歌を送り出してきたSEKAI NO OWARIが、『メアリと魔女の花』の主題歌「RAIN」を歌います。
この歌は誰もが口ずさみやすいメロディと歌詞が印象的な楽曲で、映画の終わりの爽やかな印象にもピッタリで鑑賞後の余韻を高めてくれます。
また、ハンマー・ダルシマーという打楽器が劇中の音楽として使用されています。
ハンマー・ダルシマーの不思議な音色はファンタジーの世界に観客を誘うのに効果的な役割を果たしています。
前作『思い出のマーニー』を超える好調な出足を切った『メアリと魔女の花』
出典:amazon『メアリと魔女の花』では、繊細に作られた背景美術の素晴らしさや「夜間飛行」の青色など色彩の表現の見事さが光る作品です。
また、劇中の楽曲で使用されるハンマー・ダルシマーの神秘的な音色も印象的です。
「スタジオポノック」にとって長編第1作となる『メアリと魔女の花』は、公開初週の興行成績で米林宏昌監督の前作『思い出のマーニー』を超えるスタートを切りました。
映画が好調なスタートを切ったこともあり、最終的に興行収入は32.9億を記録しました。「スタジオポノック」の今後の作品に期待が集まります。
参考元
- ・参照リンク:『メアリと魔女の花』メッセージ
- ・参照リンク:メアリと魔女の花 - Wikipedia
当社は、本記事に起因して利用者に生じたあらゆる行動・損害について一切の責任を負うものではありません。 本記事を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者本人の責任において行っていただきますようお願いいたします。
合わせて読みたい
このニュースに関連する作品と動画配信サービス
動画が配信されているサービス一覧