孫悟空『ドラゴンボール』から学ぶ人間の成長とは？！

『ドラゴンボール』孫悟空って地球人？それとも宇宙人？

いきなりで恐縮ですが、先ほど「人間としての生き方を教えてくれる」と前振りしましたが、実は悟空は宇宙人なのです（笑）。

ドラゴンボールの世界では宇宙人もたくさん登場しますが、基本的に地球に住む人たちのことを地球人といい、悟空たちの人種をサイヤ人といいます。

ですので、これから紹介する人間としての生き方は、厳密には宇宙人の生き様となってしまいます。ですが、作中で悟空はこう言っています。

「おらは地球育ちのサイヤ人だ」と。

そうです。悟空は宇宙人であることは確かなのですが、自分が宇宙人だという自覚はどうやらまったくないようなのです。

後にその謎を解明していきますが、とにかく悟空は自分が地球人だと言っているので、今回の記事は悟空を人間、地球人として見てもらって、ひとつ「人間」とはなんたるかを学んでみてください（笑）。

『ドラゴンボール』孫悟空はサイヤ人と強さも戦闘力も超下級戦士だった…？！

悟空の生い立ちは、現在の明るいキャラからは想像できないほど壮絶です。悟空は後に悟空のライバルにもなるベジータの父、ベジータ王から名前をとった惑星ベジータで生まれます。

生まれたときの戦闘力（サイヤ人は相手の強さを戦闘力という指数で見極めます。地球上で武道の達人といわれた亀仙人が139です）は、わずか2であったのに対し、後に劇場版『ドラゴンボール』などで登場する伝説のサイヤ人と謳われたブロリーは、なんと1万です。

悟空の生い立ちは諸説あり、様々なストーリーが存在するので確実な情報はわかりませんが、初期のストーリーでは出生して間もなく、地球に侵略者として派遣されます。

それはサイヤ人が戦闘民族であることから、フリーザ一族の下で惑星売買を主な仕事としており、惑星に住む人類を全滅させ、その惑星をお金持ちの宇宙人に売るという残酷な人種でもあったためです。

出生時でわかるように、悟空はサイヤ人としては超下級戦士。それでも唯一滅ぼせそうなのが地球だったというわけです。そんな過程で、悟空は地球人を全滅させるために地球にやってきたのです。

地球に降り立ったときに、孫悟飯というひとりの老人に拾われることになります。そして、その老人と一緒に暮らしていくことになります。

悟空はある日、谷底に落ちて、記憶を失います。そこからサイヤ人としての自覚を失い、地球人として穏やかに暮らしていくのです。

『ドラゴンボール』孫悟空から学ぶ「強さ」と「愛」

悟空は正に神の子であるかのように、気が強く、まじめで、純粋な人間に育っていきます。それはそれでいいことではあるのですが、感情をすべて兼ね備えているわけではありませんでした。

感情とはいわゆる笑ったり、泣いたり、怒ったりのことです。

物語の序盤では、よく笑って明るい性格の持ち主ではあったのですが、泣いたり、怒ったりすることはありませんでした。やはり谷底から落ちた影響があったのではないでしょうか。

ですが、そんな悟空がとうとう泣きます。悟空の祖父的存在である孫悟飯との再会です。

孫悟飯はある日、事故で亡くなってしまいます。そのせいで悟空は、独りぼっちでした。両親もいなくて、唯一側にいてくれた人も亡くして「愛」を失いかけていました。

そんな中で、ブルマをはじめとした多くの仲間に出会うことで、その寂しさもなくなっていきました。たくさんの仲間に出会い、悟空自身もどんどん強くなっていき、師匠や親友といったかけがえのない人たちにも巡り会うことができました。

様々な苦難を乗り越えた後で、ひょんなことから孫悟飯と再会します。そこで悟空は思わず泣いてしまいます。孫悟飯と再会したときに、初めて「愛」の存在に気付いたからです。

そして悟空はまた一段と強くなって、孫悟飯とお別れをします。

仲間との間にも確かに「愛」は存在します。ですが、人間にはときに懐かしい、自分が安心できるような「愛」の温もりが必要なのです。そしてその「愛」こそが、自分自身を強くしてくれるのです。

おそらく、悟空が初めて感情的になって泣いた場面ではないでしょうか。初期の『ドラゴンボール』で最も感動的なシーンでもあります。

ここで悟空は人間としても大きく成長します。自分を原点に戻してくれる「愛」を思い出すことは、その人の強さをより強くしてくれることを悟空は教えてくれたのです。

『ドラゴンボール』孫悟空から学ぶ「怒り」

悟空は多少怒ることはありましたが、どんなに状況が劣勢になっても、激高するような怒れ狂う感情は出さず、比較的いつも冷静にいました。ですが、親友のクリリンを殺されたときの悟空は、感情が通常のそれとは大きく異なっていました。

親友のクリリンとは、一緒に修業してきたライバルであり、同じ辛さを一緒に乗り越えてきた最初の友達でした。悟空は、クリリンを殺した魔族のキャラクターに激高し、怒り狂います。とても普段の明るい悟空からは想像もできないほどです。

ここで悟空はまた、人間として大きく成長します。このように泣いたり、怒ったり、自分の感情を素直に出せるようになったのも、いろんな仲間と出会って、様々な場面に触れるようになったからでしょう。

おそらく最初にブルマと出会っていなかったら、こんな機会はなかったと思います。実際にブルマとの出会いにより、ドラゴンボールを探す長い旅が始まるのですから。

『ドラゴンボール』孫悟空から学ぶ「歓喜」【ネタバレあり】

悟空が人間として最大の変化を起こす場面があります。その瞬間がピッコロ大魔王を倒したときです。

ピッコロ大魔王はその昔、世界を恐怖に陥れた最恐の魔王でした。そのピッコロが復活し、世界征服をまた実行しようとしていました。悟空もそれを阻止しようと様々な技を駆使しましたが、まったく歯が立ちません。

世界中が絶望で覆われていたなかで、悟空は一大決心をし、超神水という力が何倍にもアップする水を飲むことになります。

しかし、それがかなりの猛毒であり、悟空は約6時間もの間、生死をさまようことになります。

悟空は驚異の生命力でそれに打ち勝ち、スーパーパワーを手に入れて、見事ピッコロ大魔王を死闘の末に倒します。

悟空は苦労をして勝ち得た勝利に歓喜します。立ちはだかった大きな壁を、自分の努力と周りの人たちの支えで乗り越えることができたのです。

このとき、悟空は完全に人間になります。自分の力で考え、判断し、修業し、助け、助け合い、様々な困難を乗り越えていくことは人間にしかできないからです。

そういった意味でも、このときに流した悟空の涙は、孫悟飯と再会したときの涙とはまた違った重みのある涙でした。

『ドラゴンボール』孫悟空のまとめ

今回は悟空の少年期を中心として、悟空の人間としての成長と変化をまとめてみました。

『ドラゴンボール』といえば、もとは少年ジャンプで連載されていたバトル漫画として有名で、アニメ、映画、グッズ、ゲームと幅広い人気を誇り、特に映画では超サイヤ人ゴット、ゴジータ、身勝手の極意と、形態も作品ごとに進化しています。

まじめで純粋な悟空が少年期から青年期、そして青年期から大人になっていく様を「人間」として見ていくと、また違った『ドラゴンボール』の面白さに出合えて、次第に悟空に感情移入していってしまいます。

『ドラゴンボール』を何回も観た人も、初めての方も、これを機に初期の作品を観ていただけると嬉しく思います。