ユーチューブで削除される動画の基準とは?処罰はあるの?
目次
1.投稿しても動画が削除されるってホント!?
ネット環境さえあれば、世界中の誰もが動画を投稿できるサイト「YouTube」のユーザー数は現時点(2016年10月25日)の時点で10億人以上いるとされ、もはや我々の生活に欠かせない存在と言えるようになってきた。
ゲーム実況やレビュー動画、「歌ってみた」や「踊ってみた」など、一般人によって投稿されたさまざまなジャンルの動画を楽しんでいると、自分でも投稿をしようと考えたくなってしまうのが人間の性というものだ。
だが、ちょっと待ってほしい。
投稿した動画のすべてがそのまま公開され続けるとは限らない。中にはユーチューブが設けた基準に抵触し、削除されてしまうケースもあるのだ。
一体どのような内容の動画が削除されてしまうのか、また、削除要因となりうる動画は他にどのような不利益を発生させるのだろうか、解説を行っていく。
2.ユーチューブの動画はなぜ削除されるのか?
ユーチューブへの投稿動画はどのような基準を以て違反とされ、削除へと至るのだろうか。
ユーチューブ運営は「コミュニティガイドライン」という、「トラブル回避の一般的ルール」を定めており、それを遵守することをユーザーに求めている。
動画のチェックは、主に第三者からの通報によって行われる。
対象となった動画にどのような要素が含まれているかを調べ、ガイドラインに違反していると判断した場合、動画削除などの措置が取られる。
3.投稿動画削除の基準となる「コミュニティガイドライン」とは?
動画投稿者にとって重要なのは、このガイドラインの内容である。
作品を制作、アップロードするにあたってどのような内容が違反となってしまうのか、事前に把握しておかなければならない。
実は、動画投稿プラットフォームごとに、運営にあたってのガイドラインを設けている。
ユーチューブではいったいどんなガイドラインを設けているのだろうか。
ここではユーチューブ運営によって定められている7つのガイドライン項目について解説していく。
▼ガイドラインその1:「著作権センター」
ユーチューブでの説明によれば「必要な許可を受けずに自作ではない動画をアップロードしたり、他者が著作権を所有したりしているコンテンツ」とされている。
たとえば、権利者に無許可でアニメや映画、テレビ番組の動画を投稿することがこれに該当する。またそれ以外でも、他人のホームビデオや音楽、ミュージシャンのライブ映像などもこれに当てはまる。
一方、他人の著作物を自作品における説明補足のために一部だけ使用する「引用」は良いという意見も一部には見られる。
確かに著作権法第三十二条においても「公表された著作物は、引用して利用することができる」と定められており、実際にそれを実施している投稿動画も見受けられる。
ただ、コミュニティガイドラインには引用に関する記述がないため、それがユーチューブ内でも認められているかは曖昧なところだ。
引用を行う際は、「自作を補足説明する上で引用が必ず必要であったか」「引用元がしっかりと明記されているか」などといった点に注意すべきだろう。
▼ガイドラインその2「ヌード、または性的コンテンツ」
男性あるいは女性の裸体(ヌード)、その他性的興奮を目的とした過激なフェティッシュ、ポルノ映像などの露骨な性的コンテンツはこの項目に違反している。
だが、ヌードを含んだコンテンツにおいては「教育、ドキュメンタリー、科学、芸術を主な目的とし、なおかつ過激でない映像」であれば、未成年の視聴を不可とする年齢制限が設けられる場合はあっても、削除理由には当たらないとされている。
その場合はタイトルや説明文などに内容の説明を記載し、誤解による削除を防止できるようにしておこう。
▼ガイドラインその3「有害で危険なコンテンツ」
覚せい剤や大麻の使用、大怪我や死亡事故につながる行動、爆弾などの作成方法が含まれ、それらの行為を視聴者に誘発させることを目的とした動画などについて、ユーチューブは許可していない。
削除までは至らずとも、未成年視聴防止のために年齢制限がかけられる可能性はある。
ただし、危険行為の助長を目的とせず、注意喚起及び禁止を促す内容であれば、違反とはみなされない。
▼ガイドラインその4「暴力的で生々しいコンテンツ」
他者への暴力や殺傷行為、その他残虐な映像など、視聴者に大きな不快感や衝撃を与えることを目的としたコンテンツも、削除の対象となり得る。
ただし、ガイドライン説明文の中でも触れられているような「デモ隊への暴力を撮影した動画」など、報道性や教育性、ニュース性が高いものについては、タイトルや説明文に日付、場所状況などを記載していれば妥当だと判断される。
だが、テロ攻撃を称賛したり、テロ組織への勧誘を誘ったりするようなコンテンツについては一切許可されていない。そもそもテロ組織がユーチューブを使用すること自体を禁止としている。
▼ガイドラインその5「不快なコンテンツ」
特定の民族、集団、及び性別や年齢の対象者に対する、差別的な内容を含んだ動画をさす。
たとえば、アフリカ系アメリカ人の根絶や殺害を訴えるヘイトスピーチや、女性への性的発言、軍隊経験者への人格的な攻撃を主とする内容の動画はこの項目に違反している。
だが、民族国家の体制や軍事的政策に関する純粋な批判についてはその限りでない。
▼ガイドラインその6「脅迫的」
特定の個人、あるいは集団に対して危害を加える予告。その他脅迫やストーカー行為、プライバシーの侵害などをさす。
たとえば、ある人物への殺害予告や企業ビルの爆破予告、その他個人の住所や家族構成の公開などである。
また、他のユーザーに対して犯罪行為を強要、あるいは扇動する内容も削除の対象となる。
▼ガイドラインその7「スパム、誤解を招くメタデータ、詐欺」
「スパム」とは、再生回数増加のため、ほぼ同一内容の動画を連続して投稿することであり、古くは「スパムメール」などといった同様の手法が知られる迷惑行為の一つである。
「メタデータ」とは動画の内容を表す補足情報のことを意味し、ユーチューブにおいてはタイトルや動画説明文、タグなどがそれにあたる。
違反の対象となるのは、動画内容とは無関係なメタデータが大量に追加されている場合だ。
たとえば、ただ真っ黒な映像が無音で流れるだけの動画のタイトルを「大人気アイドルのすっぴん公開!」としたり、タグにそのアイドルの名前や所属グループを追加したりするなどして、視聴者を誘導するといった行為が削除の対象になりうる。
4.ユーチューブの動画削除だけでは済まない場合も・・・
違反動画の投稿は、単に対象の削除に止まらず、投稿者に何かしらのペナルティが与えられる可能性がある。
▼機能の制限
ペナルティとして、機能に何かしらの制限が加えられるといったものがある。
具体的な内容としては「制限時間以上の動画が投稿できなくなる」「視聴者から資金を受け取る『視聴者ファンディング機能』が使えなくなる」「ファン向けに動画を宣伝する『注目コンテンツ機能』が使用不可となる」などだ。
特に後者二つは視聴回数の増加に大きく関わる要素であり、ユーチューブによって広告収入を得ている場合は、痛手となる恐れがある。
▼動画の投稿停止
前述した機能の制限を受けてもなお、ガイドラインに違反した動画を投稿し続けていると、動画が一切投稿できなくなるペナルティを受けてしまう。
期間は2週間で、それを過ぎれば再び投稿が可能となる。
▼ユーチューブアカウント停止
それでも尚違反を改める姿勢が見られない場合は、ユーチューブアカウントそのものが停止となる。
アカウントが停止された場合、違反した動画のみならず、これまでに投稿した動画すべてが削除されてしまうので、その損失は大きい。
もし投稿した動画が重大なガイドライン違反と判断された場合は、機能の制限や動画の投稿停止を経ることなく即刻アカウント停止処分となることもある。
▼ペナルティを解除するには
何かしらのペナルティを受けてから6ヶ月の間、一切違反行為を犯さなければペナルティはクリアとなり、制限は解除される。
アカウント停止の場合、異議申し立てを行えば復活させられる可能性がある。
5.ユーチューブへの投稿動画が原因で罪に問われる可能性が?
投稿した動画の内容によっては動画の削除やアカウント停止にとどまらず、法的な処罰が与えられる恐れもある。それぞれの状況ごとに、想定される内容を解説していく。
▼「著作権センター」の場合
映画やドラマなどを違法にアップロードし続けていると、権利者の告訴によって「公衆送信権の侵害」に問われることとなる。その場合、最大で10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金が課せられる。
それに加え、違法アップロードによって生じた損失の賠償請求に問われる場合もあるため、大幅な損失を被る可能性もある。
▼「ヌード、または性的コンテンツ」の場合
ユーチューブに性的な動画をアップロードした場合、「わいせつ電磁的記録媒体公然陳列罪」にあたり、2年以下の懲役あるいは250万以下の罰金処分となる可能性がある。
また、投稿した動画が児童ポルノの要素を含んでいた場合、「児童ポルノ法違反」となり即刻アカウント停止、それに加え5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金刑に処せられる。
▼「有害で危険なコンテンツ」の場合
もし投稿者が動画内で大麻を使用していた場合は、「覚せい剤取締法違反」により10年以下の懲役となる。
また、銃剣類や爆弾などを動画で使用し危険行為に及んだならば、「銃砲刀剣類所持等取締法違反」あるいは「爆発物取締罰則違反」で最大10年以下の懲役に処される可能性がある。
▼「暴力的で生々しいコンテンツ」の場合
自身が他者へ行った暴力行為を動画として投稿すると、「暴行罪」となり懲役2年以下又は30万円以下の罰金が課せられる場合がある。
映像内で万一暴行した相手が傷害を負った場合は「傷害罪」となり15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性が高い。
また、動画内で建造物に無断で入り込んでいれば「住居侵入罪」(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)、他人の所有物を破壊した場合は「器物損壊罪」(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)、それに加えて損害賠償請求に問われることもある。
▼「不快なコンテンツ」の場合
特定の人物あるいは集団に対する差別的な動画は、「名誉棄損」あるいは「信用毀損罪・業務妨害罪」として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。
それに加え、差別的行為の対象となった人物や集団から損害賠償請求がなされる可能性もあるだろう。
その相場について、これまでは100万円前後が一般的であったが、近年の高度情報社会化による損害の拡大や名誉の価値向上を考慮し、400万~500万円に引き上げるべきだという提案が東京地方裁判所損害賠償訴訟研究会から出されている。
国内で5000万人のユーザーがいるとされるユーチューブにおける名誉棄損行為の被害は甚大であり、これに該当する金額が請求されてもおかしくはないだろう。
▼「脅迫」の場合
個人あるいはグループに対して危害を加える予告を行った場合、「脅迫罪」によって2年以下の懲役あるいは30万円以下の罰金に処されることとなる。
また、尾行などのストーカー行為を働いていたならば「ストーカー規制法」により6ヶ月以下の懲役か50万の罰金になりうる。
住所や出身地、恋人や病気の有無をネット上に無断で公開した場合、刑事罰にはあたらないが、当事者によって損害賠償請求される可能性がある。
▼「スパム、誤解を招くメタデータ、詐欺」の場合
度を超えた迷惑行為でユーチューブの運営に何らかの損害を与えた場合、高額な損害賠償請求を起こされる可能性がある。
詐欺行為については「詐欺罪」が適用され、10年以下の懲役となる。
6.違法動画の削除は社会にとって重要
以上、ユーチューブにおける動画の削除基準と、それによって起こりうるペナルティについて解説した。ユーチューブのみならず、サイト運営による投稿動画削除は一部ユーザーの反感を買っているようで、批判的な意見も少なからずある。
だが、ネットの普及とそれに伴う違法動画の増加によって、動画の削除はますます重要なものとなってきているのだ。
特に、著作権違反による動画削除は後を絶たない。
たとえばゲーム実況動画などはユーチューブでも人気のジャンルだが、その大半はメーカーに無許可でアップロードされたものであり、ひとたび通報があれば即座に削除されてしまう恐れがある。
アニメや映画に関しても同様だ。
特定の一場面を切り取ってつなぎ合わせる、いわゆる「MAD」と呼ばれるジャンルに関しては、多数の動画が削除されながら、今なお多くの動画が投稿され続けている。
また、作品本編をひそかに投稿するといった行為も平然と行われ続けている。
それに加え、犯罪や迷惑行為を堂々と投稿するユーザーも現れはじめた。
2015年1月には、スーパーに陳列されているスナック菓子につまようじを刺す、万引きを働くなどといった様子を動画としてアップロードしていた19歳の少年が逮捕されている。
こうした動画を削除せずに放置していれば、ユーチューブはやがて無法地帯となってしまう。それを防ぐためにも、不適切な動画の削除は必要なのだ。
動画の削除には、それなりの理由がある。動画を制作、そして投稿する際は、その作品が常識や倫理、そしてユーチューブのガイドラインと照らし合わせて見るべきだろう。
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